俺は強くなりたいんだ。


そう言うと、その人は困ったように顔を笑った。
大きな体をした人。
どんな敵でも追い払って、すべてを守れそうな大きな人。

……どうして?
妹を、守る。みんな守る。
守りたいから、強くなるの?

大きな体をもって怖い顔をしたその人は、でもとても優しい声でそう聞いた。

うん、俺は母さんを守れなかった。
もう、君は強いと思うよ?

優しく笑って大きな手で俺の頭をくしゃくしゃと撫でる。
その手はとても温かくて、頼りになる。
でも、それは嘘だ。

ううん、強くない。全然強くないんだ。いつも妹に助けてもらってる。

俺は胸にかけた小さな石をぎゅっと握る。
それを握っているだけで、少しだけ強くなれる気がした。

………それは?
お守り。妹にもらったんだ。これは王様の石なんだ。強い強い石なんだ。だから俺も強くなるんだ。

俺は必死にその人に願う。
その大きな手を、俺も手に入れたかった。
大きな人は、大きな手で拳を作ると俺の前に差し出した。

そうか。じゃあ、俺と一緒に頑張れるか。

俺はだから、その人に誓った。
その手に、俺の小さな頼りない拳をぶつける。

うん。俺は絶対に、強くなる。



もう、何も失わないように。
俺の手から、こぼれおちていかないように。



better bitter half 2 -End-



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