なんとなく、微妙な雰囲気を抱えたまま時は過ぎる。 相変わらずだらだらとして空気のまま、2人は変わらない関係を続けていた。 いや、続けようと努力していた。 それでも時折流れる、なんともいえない雰囲気が2人を戸惑わせる。 それでも一緒にいるのが心地よくて、なんとなく一緒にいてしまう。 時々はキスしたり、ふざけて触りあったり。 それがおかしいと分からなくなってしまっているぐらい、2人は微妙な関係にいた。 「なあ、きくちきくちー」 菊池の部屋でゴロゴロと転がりながらエロ本を漁っていた橋本が、突然口を開いた。 そのどこか甘えるような口調に、ネットを見ていた菊池は嫌な予感を覚えた。 こんな風に話しかけてくる橋本が、ろくなことを言ったことがない。 「却下」 「だ、てめえ!せめて聞けよ!話を!」 「やかましい!お前の言うことで、事態が悪化しなかったことがねえ!」 「なんだそれ!お前友達がいねーぞ!友人の悩みを聞こうって気がないのか!」 「この場合はとりあえず、ない!」 菊池に言い切られた橋本は、思いっきり顔をしかめるが、すぐに気を取り直して笑顔になる。 この程度の攻防はいつものことなので、菊池の都合は考えないことにする。 「それで聞きたいことがあるんだけどさ」 「何もなかったように進めるな。そして話を聞く気はない」 「話聞くぐらいいいじゃねえか!てめえの友情はその程度か!」 そのにべもない菊池の態度に、さすがに腹が立った橋本が菊池の襟元を掴んで揺さぶる。 その思いがけない距離の近さに、菊池は焦って手を払いのけ、ため息をつく。 「…分かった。聞いてやる。3秒で話せ」 「お前さ、フェラチオってされたこと……」 「却下」 予想通りろくでもないことを言い出した橋本に最後まで言わせず、菊池は言い切った。 2人の間でのエロ話が、とんでもない方向にいってしまうのは、すでに今までの経験から分かってる。 微妙な空気を作らないよう努力していた菊池の苦労などものともせず、なにも考えていない橋本はすべてを乗り越えてくる。 空気を読まず、後先考えない橋本は、どこから何がくるか分からない。 あれか、エロ本を読ませたのがよくなかったのか。 それとも部屋にいれちまったのがよくないのか。 何が悪かったのかも分からず、後悔に苛まれる。 「だから最後まで聞けよ!お前は!」 「聞くまでもねえだろ!」 「なんでだよ!お年頃の青少年のかわいらしい疑問だろ!」 「じゃあ答えるよ、あるよ!何回も!気持ちよかったよ!これでいいか!」 なげやりに言い放つ菊池は、不満そうに帰ってくるであろう言葉を待った。 しかし、いつまでも橋本からの返答はない。 不審に思い目を向けると、そこには夢見る乙女の目をした橋本がいた。 椅子に座った菊池の足元に座りこみ、両手を胸の前で組んでいる。 「ねえ、菊池君」 例えようもなく嫌な予感がした菊池は、聞かなかったふりをして椅子を机に向けた。 すぐに橋本によって1回転させられ、もう一度向き合うことになる。 「いやだからな」 「そう言わずに」 「ふざけんな」 「まあまあ」 「失せろ」 「ガタガタ言わずに話ぐらい聞けよ!」 「いやだ聞きたくない!」 両手で耳を塞いでそれ以上聞かないようにする。 しかし橋本はめげずに手を耳から引き剥がす。 そうして菊池の膝元で手を握って向かい合うという奇妙な格好のまま、目を合わせる。 「フェラチオして?」 渾身の力で頭を殴られ、橋本は床に転がった。 「いってえ、何すんだよ!」 「それはこっちの台詞だ、このボケ!」 「なんだよ、それぐらいいいじゃねえか!」 「いいわけあるか、このドアホ!」 「えー、だってされてみてーんだよー」 「うるせえ、何が楽しくて男のアレなんて咥えなきゃいけねえんだよ」 「だって俺、彼女いねーし」 「やかましい、そうやって手近ですませようとするな。彼女作れ」 「キスはしたんだし、いいじゃんー!」 どんなに冷たい目線ですげなく切り捨てようと、気持ち悪くねだるように橋本は食い下がる。 橋本は再度体制を整えると、もう一度菊池の前に座りこむ。 菊池を拝むように両手を合わせて、頭を下げる。 「お願い菊池!菊池様!」 「ぜってえごめんだ!キスとフェラには量産型とシャア製のザクぐらいの差があるわ!」 「え、それって三倍気持ちいってこと?」 「そうじゃねえ!お前、男のアレ咥えられるのか!?」 そこで橋本の動きが止まった。 顔を上げて、腕を組んで首を傾げる。 その視線は、ちょうど目の前にある菊池の股間に向かっていた。 菊池は、最大限に嫌な予感がした。 もしかして、俺は、地雷を踏んだのか。 「はし……」 「よしやってみよう!」 菊池が次に橋本から出るであろう言葉を阻止する前に、橋本が勢い込んで手を打った。 「はあ!?」 少しは想像がついていたものの、やはりろくでもなく突拍子もない橋本の言葉に菊池は間抜けな声を上げる。 「そうだよな、自分ができねえもんは人にやらせちゃいけねえよな」 「いやそれは人間として正しいが、大前提で何も正しくない」 「でも、俺が出来たらお前もやれよ!」 「だからてめえは人の話を聞けー!!!」 菊池のツッコミをものともせず、橋本は勝手に菊池のファスナーを下ろす。 「おい、この変態!痴漢!……っ」 「じゃじゃーん!御開帳ー」 こんな時だけ手際よく、トランクスをずり下げて萎えたままの菊池のモノを取り出す橋本。 楽しげな声すら上げて、茂みに覆われたそのモノをマジマジと見る。 急所を握られた菊池は、頭痛をおさえるようにコメカミを押さえる。 「…………」 「…………」 トイレや風呂なんかで、見たことはある。 一回だけ触ったこともある。 しかしいざ明るい陽の光の下で見ると自分と同じ(皮は剥けているが)それは随分グロテスクに見え、橋本の動きは止まった。 「…………」 「………で、どうするんだよ」 いつでも突っ走って、その後で後悔する橋本。 それを良く知っている菊池は、呆れた目で橋本を促す。 「え!?」 「できねーんなら、さっさと俺の大事なものをしまってエロ本でも漁れ。想像しろ。右手を使え。やるんだったらさっさとしろ」 「え、え、え!?」 「だからできねえんなら最初からやるな」 「で、できなくねえよ!」 そう言われて、どうでもいいところで負けず嫌いな橋本はもう一度菊池のモノと向かいあう。 思い切って口をつけようとして、しかしやはり寸前で動きが止まる。 「今なら引き返せるぞ」 助けを求めるように菊池を見上げると、相変わらず冷たい目で菊池は見下ろしていた。 その、どうせできないんだろ、と言っているような目が腹立たしく、橋本は目をつぶって目の前のモノの先端を舐めた。 それはしょっぱく男臭かったが、そこまでの嫌悪感は沸かなかった。 「………っ」 菊池の体がびくりを揺れる。 いっぱいいっぱいの橋本は気付かなかったが、手の中のモノはすでに少しだけ固くなっていた。 橋本は思ったほど気持ち悪くないそれを、両手で握るとペロペロとアイスキャンディーのように舐める。 「…はっ。おい」 「…ん?」 息をつめた菊池に呼ばれ、橋本は握ったまま目線をあげる。 その瞬間、手の中のモノがふるりと揺れた。 「お前、エロビデとかで、よく見てんだろ?工夫しろよ工夫」 「偉っそうだな、お前!」 「お前ならできるって、先生信じてる」 偉そうな態度の菊池に見下ろされ、橋本は不満そうに口を引き結ぶ。 しかしもう一度顔を菊池の足の間に埋める。 再度猫のようにペロペロと舐めるが、菊池が腰を揺らして催促することに促され、思い切って先端を咥えた。 「った!歯立てんな!へたくそ!」 「下手とか言うな!」 「いてえんだよ!マジで!」 「ちっくしょう、見てろよ!メロメロのドロドロにして、勘弁してえ!とか言わせてやる!」 勢いこんで、橋本は今度は歯を立てないように先ほどより深くくわえ込んだ。 一瞬喉をついて、えづきそうになる。 涙が目尻に滲むが、徐々に硬さを増す菊池のモノに少しだけ気分がよくなる。 余裕ぶっているくせに、咥えられれば感じているのが分かるのが小気味いい。 咥えて、恐る恐る舐める。 今度は喉を突かないように、舌を使いながら浅く深くゆったりと出し入れをする。 「くっ……は、あ……あ」 先端から苦味のある粘液が溢れてきて、その慣れない味に顔をしかめる。 しかし、どんどん立ち上がっていく菊池と、その掠れた声が橋本のやる気を掻きたてる。 「……はっ」 「ん、んん、はあ、んっ」 口の中で容量を増していくそれに、息苦しくなって鼻から甘えたような声がもれる。 時折菊池の様子を見上げると、早くなった呼吸と、真剣な目を感じた。 その隠せない興奮の色が、心地いい。 今、この男をコントロールしているのが自分だということに、支配欲が刺激される。 無心に口の中のものを舐めて、唇でしごく。 「ぷはっ」 どうにも息苦しくて、一度口を離した。 すっかり立ち上がったそれと、橋本の唇を粘液が伝うのがいやらしかった。 酸欠からか、頭の芯がぼんやりして自分の体も熱くなっていることを感じる。 橋本は菊池を上目遣いに見上げながら、挑戦的ににやりと笑う。 その様子を不覚にもかわいいとか思ってしまった菊池は、それをごまかすためにも、そっけない様子を装う。 「な、どーよ?」 「60点」 「はあ?てめえ、俺のスーパーテクにいちゃもんつける気か!」 「何言ってんだこのドーテー。手も使えよ手も」 「だー、注文多いな、この腐れチ○コ!」 むきになって、再度深くくわえ込む橋本。 根元を手で擦り、袋をいじる。 ぬめりを帯びて動きのよくなるそれを、最初は恐る恐る、興が乗ってきたのか徐々に激しい動きになっていく。 舌を使うと共に、たまに歯を軽く立ててみたりもする。 菊池の下腹部が早く波打って、呼吸が上がっているのが分かる。腰が自然と揺れている。 橋本も、自分のズボンの下が、湿りを帯びているのを感じた。 「はっ……あ、あ、橋本……」 「んっ………うん、ん」 菊池の荒い呼吸と、橋本の鼻から抜ける甘い息。 そしていやらしい水音が菊池の部屋に響き渡る。 すでに橋本の口の中は、いっぱいで手の中のものはびくびくと震えている。 「う、あっ、だめだ!」 「ん!ううん!?」 突然菊池が声を上げたかと思うと、橋本の髪を掴む。 驚いて顔を離そうとする橋本を許さず、自分の方に押さえ込むと、そのまま腰をゆすりあげる。 「ん、んんん!んー!!!!」 橋本の喉を犯すように、腰を突き上げる。。 突然の動きに対応できず、苦しさに生理的な涙をこぼす橋本。 その苦しそうな様子に、菊池の背筋にぞくりとした快感が走る。 橋本の頭をつかんだまま、1,2度腰をゆする。 「うあっ」 「う、んー!」 一瞬の後、橋本の喉の奥に生温かいものがぶちまけられてた。 「げほっ!げほっけほ、かはっ!」 手を放されると同時に、激しく咳き込む橋本。 菊池は強烈な快感の後の、心地よい倦怠感に身を任せている。 お互い息を整えるのに、しばらくの時間を要した。 しばらくして、橋本が菊池の精液で顔を汚したままうらみがましい目で顔を上げる。 「お前何してくれてんだよ!」 「あー………」 「あー、じゃねえよ、めっちゃ苦しいつーの!しかも生臭い!青臭い!イカ臭い!」 「てへ」 「てへじゃねえよ!初心者に何イラ○チオってんだよ!この外道!」 「ごっめーん、気持ちよくって」 「ごめんじゃねえ!」 コトが始まる前とは打って変わって、激する橋本に、笑ってごまかす菊池。 そののらくらと交わす菊池が憎たらしくて、橋本は身を乗り出して菊池の襟を掴んで引き寄せると、無理矢理口付ける。 椅子から半ば転げ落ちるようにして、橋本にのしかかる菊池。 口の中で、生臭い粘液を舌で絡まされる。 「うえ、まず。自分のって舐めたくねえ」 「だから言ってんだろ」 そう言いながら、キスはどんどん深くなる。 完全に椅子から降りた菊池と橋本は、床で重なる。 決しておいしくはないその味が、2人の興奮を煽る。 舌を絡ませ、唇をついばみ、互いの口を犯しあう。 足を絡ませあうと、いまだ快感の残る菊池の剥き出しのモノに固いものがあたった。 「ん…、あ、お前の立ってる」 「ん」 「あー、俺の番か、仕方ねえなあ」 「仕方ねえじゃねえよ。俺の口をバージンを奪った責任はとれ」 「お前が自分から言い出したんじゃねえか!」 ぶつぶつ言いながらも、体をずらして橋本の足元に顔を寄せる。 すでにそれは少しズボンを押し上げていた。 「橋本君たら咥えて勃っちゃうなんてエロエロー」 「菊池君があんあん喘いでエロいからです」 軽口を叩いてる間に、菊池は手際よく橋本のカーゴパンツとトランクスを膝まで下ろしてしまう。 「え、そんなモロ出し!?」 「こっちのほうがやりやすいだろ」 肘をたてて身を起こし、菊池の動向を見守っている橋本。 それを確認すると、菊池は半ば立ち上がった橋本のものむき出しにすると、ふーっと息を吹きかける。 たったそれだけで、橋本はびくりと体を震わせた。 そのまま、触れるか触れないかで、キスを落としていく。 その度に、橋本は体をはねさせる。 むき出しにされたものには、軽い刺激でさえ腰に甘く響く。 「橋本びんかーん」 「ちょ、マジやめて、それ」 余裕のない橋本の声を聞かなかったことにして、菊池は軽く触ったり、見せ付けるように大げさな仕草で舐めたり、焦らすような軽い愛撫を繰り返す。 そうしている間にも、橋本のものは完璧に勃ちあがった。 最初は身を起こして見ていた橋本は、頭を床に置き、ぴくぴくと体を震わせる。 「ん、あ……な、き、きくち」 「ん?」 「なあ、もっと!」 「もっと何?」 「強くしろって!」 本当は恥らってほしかったりもしたが、初めての経験にいっぱいいっぱいな橋本はそれどこではなく、恥じらいも何もない。腰をゆすり上げて、更なる快感を求める。 軽く失望もしたが、それ以上に切羽詰った橋本の声に、菊池は自分の腰も重くなったことを感じた。 「しゃーねーなー」 「ああっ、うあ!」 とりあえずはそれで満足して、橋本のモノを深く咥えこむ。 待っていた以上の快感に、橋本はあられもなく声をあげた。 自分でする時とはまるで違う、前に菊池とやった扱き合いとも違う。 むき出しの神経を直接なぞられるような刺激に、腰が大きく揺れる。 「あっああああ!やめっ、きくちっ、きくちっ」 「んっんん、はっ」 菊池はもう焦らす気もなく、少々強すぎるぐらいに快感をあたえ追い詰める。 先ほど橋本にされた時に、橋本がしつこく刺激するところがあった。 先端や、裏筋。おそらく、そこが橋本の弱い場所。 思ったとおり重点的にそこを責めると、面白いように橋本は腰を揺らして先走りを零す。 「やめっ、菊池、もうやだっ!やっぁ」 「んっ、橋本、いい感じ。いっちまえよ」 一度顔をあげてそう告げると、菊池は一際強く吸い上げて、擦りあげる。 「あ、あぁぁぁ!」 声をあげ、腰を大きく突き出して背をそらし、橋本は達した。 「大丈夫か?」 「あー……うわー……」 「気持ちよかった?」 「さいこー……」 「まあ俺のスーパーテクにかかればこんなもんだな」 「ふざけんな、俺のミラクルスペシャルテクのがすごい」 「見得はんなドーテー」 そんな馬鹿馬鹿しい会話をしながら、2人は床に寝転んだままキスをする。 軽くついばみ、重なりあうと、お互いのむき出しのままのものが触れあった。 「……菊池君、萎えてないんだけど」 「あー、若いから」 「若いねえ」 「そういう橋本君ももっかいぐらいいけそうな感じだけど」 「若いから」 「若いね、俺達」 「………もっかいいっとく?」 「このまま69も初体験といこうか」 そうして2人は、もう一度唇を重ねあった。 快感に溶けていく頭の隅で、しかし菊池は強く誓っていた。 流されるのは、今回限り、と。 |