玄関の扉を閉めた瞬間に腕をとられた。 何事かと思う前に噛みつくように口づけられ、橋本は小さくうめく。 「ぅんっ」 いきなり突進され、支えるものがない体はよろめいて、そのまま上がりかまちに座り込む。 菊池はそれでも体を離す様子がなく、橋本をまたぐように自分も玄関にあがった。 その間にも舌が入り込み橋本は呼吸がうまく出来ず、抗議するように菊池の体を拳で叩く。 菊池は気にせず、ぴりぴりと痛むぐらいに強く舌を吸う。 「んー!!」 キスをやめないまま、菊池は器用に靴を脱ぐ。 そして土足で玄関に入ってしまっていた橋本の靴にも手をかける。 そこでようやく隙ができて、橋本は急いで口を離した。 なるべく自分から遠ざけるように、菊池の胸に手を置いてつっぱねる。 「ストップ!!ストップ、菊池!とまれ!待て!ウェイト!!」 「止まれない」 橋本の言うことなど耳に入らないように、靴を脱がしてしまう菊池。 流れるような動きで、そのまま橋本の体に手を這わしはじめる。 シャツがたくしあげられ、汗ばんだ肌を舌がなぞる感触に体が震える。 「ちょ、ま!いや、馬鹿!早まるな!そんな交通標語みたいなこと言ってるんじゃない!」 「黙れよ」 「黙れるか!おまえ、さっきの殊勝さはどこへ行った!落ち着け」 「我慢できない」 「おーいー。な、ちょっと落ち着いてくれ、頼む。ほら、深呼吸、ひっひっふー」 「それはラマーズ法呼吸」 「つっこみだけは冷静だな!」 そんなこと言ってる間にも橋本は剥かれつづけ、カチャカチャとベルトを外す音が響く。 その音に、橋本の赤くなっていた顔が面白いように青ざめる。 ジッパーを下ろす音までして、すぐに手がその中に入り込んでくる。 「…待てつってんだろーが、このばかちん○がー!!!!」 「いだ!」 そこまで来て、橋本は仕方なく実力行使にいたった。 上に乗っていた菊池の顔を思いきり拳で殴りつけ、痛みに怯んだところですかざす体を抜き出した。 この短時間で上に羽織っていたシャツは脱がされ、Tシャツは半ばまでたくしあげられていた。 ベルトも取り外され、ジッパーは下まで降りている。 涙目で息が上がり顔が赤くなっているその姿は、どう見ても犯されかけた被害者だ。 橋本は隙を見せないよう菊池から目を離さないまま、尻でじりじりと後ずさって距離をとる。 「………お前、なんだこの手際のよさは……」 「経験値」 「……俺はお前がたまに本気で憎い」 息を整えようと胸を押さえながら肩を上下する橋本に、菊池はさらっと返す。 その言葉に橋本は睨みつけ、忌々しそうに言う。 そんなことはどうでもよさそうに、菊池は真顔のまま一歩距離をつめた。 「……で、なんだよ。まだ抵抗するのかよ」 「するわぼけ!目が据わっててこえーよ!怖いんだよ、お前!とりあえず落ち着いてくれ」 「俺は冷静だ」 「はい、嘘!3秒でばれる嘘をつくな!」 一歩、橋本があとずさる。 また一歩、菊池が距離をつめる。 橋本がちらりと後ろを見る。 割と広いとはいっても中流家庭のマンション。 もうそろそろ後がない。 一瞬目を閉じて溜息をつく。 目を開いて、深呼吸一つ。 覚悟を決めて、菊池を説得にかかることにした。 引き攣った笑顔を浮かべながら、菊池に優しく語りかける。 「あのね、菊池君。俺、汗臭いでしょ。でもってここ玄関でしょ」 「気にならない」 「俺が気にすんだよ!シャワーぐらい浴びさせろ、というか心の準備をさせろ!あと、せめてベッドにしろ!」 「お前に心の準備をさせたら夜が明けるだろ」 「………そんなことはない」 「その間はなんだ」 「そんなことはない!ね、綺麗にしてくるから、お前のために磨いてくるから」 「キモイ」 「キモイとか言うな!」 そこで、二人とも言葉を切る。 しばし、黙ったまま睨み合う。 橋本は涙目で。 菊池は怖いほどの据わった目で。 そのままどれくらい睨みあっただろうか。 「………わかったよ」 「わかってくれたか!」 先に目を逸らして溜息をついたのは菊池だった。 後ろに下がると、顎で橋本を促す。 「シャワー浴びてこい」 「じゃ、じゃあ」 その言葉で、ひとまず窮地を脱した橋本は喜色を示す。 あからさまに嬉しそうな表情に、菊池は口を歪めた。 「30分で出てこなかったら突入する」 「………え」 「その場で犯す」 「どんだけ余裕ねーんだよ!」 「最初から言ってるだろ、余裕ない」 菊池に取りつく島はない。 いつものように冗談で応じる余裕もないらしい。 本当に、いっぱいいっぱいなのが橋本にもよく感じ取れた。 仕方なく再度、妥協案を提示する。 「1時間」 「長い」 「50分」 「30分」 「よ、45分」 「35分」 「40分!」 「わかった」 菊池は条件を飲んだ。 冷静になってみればあんまり変わってない上になんの解決にもなっていないが、橋本はひとまず喜んだ。 覚悟は決めている。 が、できればその時は遠いほうがいい。 「タオル用意しておく」 「………サンキュ」 どうしたものか。 橋本は温めのシャワーに身をひたしながらため息をつく。 何度も迷って、何度もそのたびに選択して、ようやくここにきた。 やっぱり菊池が、その、なんというか、まあ、たとえて言うなら、ちょっと詩的な表現をしてみたりすると、好きだったりしたりするようなしないような気がしないでもない。 菊池とやりたい。 それは、確かだ。 もう、触りっこやフェラだと、我慢できないところまで来ているのは橋本も一緒だ。 やるやらないで、もう迷う気はない。 やる。 たとえ突っ込まれようとも、やりたい。 そう、決めた。 ただ。 正直、菊池の余裕のなさが怖い。 ていうか怖すぎる。 誰だ、あれ。 キャラ違い過ぎだろ。 一見冷静そうなのがまた怖い。 覚悟は決めたが、そこまでがっつかれると恐怖心が先に立つ。 菊池のテンパり具合は、もう少し納まってくれたらもう少しは違うと思われる。 橋本はもう一度、大きなため息をついた。 「橋本」 そんなことを考えているところに、突然磨りガラスの向こうから名前を呼ばれた。 座り込んでいた橋本は慌てて立ち上がる。 「うはあああああい!」 「何語だ」 「お、オレ語」 「タオルと着替え、ここにおいておく」 「さ、サンキュ」 橋本の心臓が激しく存在を主張している。 礼を言ったものの、ドアの向こうの気配は立ち去る様子がない。 橋本は警戒をとかないまま、ドアから距離をとる。 「………なんだよ」 「……一緒に入ろうかな」 「はい、馬鹿言っちゃってるんじゃないよー!」 「………冗談」 そう言い残すと、菊池はようやく去って行った。 しばらく帰ってこないのを確かめて、大きく息をついて体の力を抜く。 体が、強張っていた。 絶対嘘だ。 本気だ。 夏で、シャワーを浴びていて熱いはずなのに、寒気が走り身震いをする。 橋本は黙ってバスルームの鍵を閉めた。 あ、もしかしてこのままここにこもれるんじゃ。 一瞬そんなことを思ったが、タイムリミットが過ぎたら容赦なく踏み込まれる気がした。 ドアを蹴破る菊池の姿が鮮やかに脳裏に浮かぶ。 それくらいはやる。 絶対やる。 それは確信だった。 浮かんだ想像をなかったことにして、橋本はため息をついた。 大人しく体を洗って覚悟を決めるしかないということに、改めて気づく。 もう一度大きくため息をつくと、ボディソープを手にとる。 そしてそこで、再び動きを止めた。 「…………どこまで洗えばいいんだろう」 菊池とたっぷり予習をしたせいで、男同士でどんな感じでコトに及ぶのかはわかっている。 アソコでソレをナニするわけだ。 どう考えても、アレだ。 となると、念入りに洗わなきゃいけない気がしてくる。 しかしそれもまた、とてつもなく羞恥を感じる行為だ。 でも、洗わないとますますアレな感じでソレだ。 「…………く、プレイはすでに始まっているのか」 屈辱感に襲われながら、橋本はスポンジにボディソープをつける。 それをする自分を想像して、とんでもなく悲しいような情けないような気分になった。 でも、洗わない訳にもいかない。 なんだか、両親に謝りたいような気分にもなった。 いっそ、あのまま押し倒されたほうがよかったかもしれない。 そんなことも思った。 「ふ、ふふ……」 何かをあきらめたように不気味に笑いながら、橋本は自分の体にスポンジを滑らせた。 菊池は自室の電気もつけないまま、ベッドに座りこんで何かを考えていた。 タイムリミットぎりぎりになってから、橋本はバスルームから出てきた。 正直、自分の中の色々な葛藤と闘っていたため、恐怖とかを考える余裕がなくなっていた。 というかもう、どうでもよくなっていた。 やるならやれ、そんな気分になっていた。 自分の体の隅々まで洗いきった橋本は、色々な意味で一皮剥けた男になっていた。 ある意味、シャワーを浴びたのは意味があることだった。 「お前んち、バスローブなんてあるのな……」 「まあな」 「………パンツなかったんだけど」 「汗臭い下着なんて着たくないだろ」 「……お前のとか」 「新しいのなかったんだ」 絶対嘘だ、と思いつつも、何も言わなかった。 確かに、今さら着るのも無駄だ。 これからやることを考えれば、二度手間だろう。 一つ大きくなった橋本は、荒んだ眼をして笑った。 ベッドに座っていた菊池は、軽く伸びをしてから立ち上がった。 ついに来るか、と身構える橋本の横を、菊池は通り抜ける。 「じゃあ、俺もシャワー浴びてくる」 「え、あ、浴びるの?」 「俺も汗かいてるし」 菊池はさっきまでの余裕のなさはどこへ行ったのか、涼しい顔をしている。 いつものように時間をおいたら冷静になれたのかもしれない。 せっかく覚悟を決めたところでお預けされるのに、橋本は正直困った。 今のどうでもいい気分のまま、やられてしまいたかった。 でも、シャワーを浴びるという菊池を、止めることもしたくない。 そこまで張り切っている訳でもない。 「すぐ出てくる」 「あ、ああ」 そんな橋本の心情を知ってか知らずか、菊池はさっさと出ていってしまった。 橋本は菊池の部屋に一人取り残される。 何をしていたらいいのか、分からなくなってしまう。 バスローブの下は素っ裸なので、すかすかとして落ち着かない。 テレビをつけるという気分でもない。 ベッドに座って待つというのも、やる気溢れすぎていて激しく嫌だった。 仕方なく、なんとなく窓ガラスの傍による。 室内の電気を落としてあるせいか、ずいぶんと外の明かりが眩しく感じる。 高い位置にある菊池の部屋は、視界を遮る建物もなく見通しがいい。 ベッドタウンの住宅街、それほどネオンなどは多くない。 けれどお祭りということもあってか、今日はいつもよりも明かりを多く感じた。 お祭りは、楽しかった。 射的は面白かったし、安っぽい屋台メシはおいしかった。 みんなで久々にはしゃいだ。 花火は綺麗だった。 菊池が横にいて、一緒に見た。 つないだ手が、汗ばんでいて温かかった。 やっぱり、一緒にいると楽しい、と感じた。 改めて、やりたい、と思った。 余裕なさすぎて少しひいたが。 やりたいオーラ出しすぎだった。 いつものモテキャラはどこへ行ったのか。 あんなギリギリな菊池はあまり見ることはなかった。 最近は切羽詰まりすぎな菊池の姿を見ることも多くなったが。 その余裕のなさを思い出して少し笑う。 余裕のないのは自分のせいだ、ということも可笑しい。 可笑しくて、なんだか、かわいい。 そんなことを考えていたら、後ろから抱きすくめられた。 「うおう!!」 「何笑ってんの」 「お前気配消して近づくなよ!こえーよ!!」 「そんな技術ねーよ」 ほぼ同じ背丈なので、橋本の肩に菊池が顎を載せる。 お互いの血の流れる音が聞こえるような、距離。 少しだけ沈黙が落ちる。 菊池が後ろから橋本の顎をとると、自分の方に向けさせる。 視線が絡む。 そのまま静かに距離を縮めて、唇が重なった。 「ん」 「は…」 長い間、触れるだけのキスをする。 湿った吐息を、交換する。 逸る気持ちとは裏腹に、なぜか少しだけ落ち着くのを橋本は感じた。 唇を離して、改めて向き合う。 気恥ずかしさからか、興奮からかお互い顔は赤く上気している。 今度は向かい合ったまま、菊池が橋本の肩に顎を載せた。 体は離してあり、頭だけしか触れていない。 顔を見られないようにして、橋本の耳元で小さく問う。 「………大丈夫か?」 「………」 「今度こそ、我慢できないからな」 お互い、表情は見ることができない。 少しだけ間を空けて、橋本は眼を閉じた。 「…………おけ。どんとこい」 「……………」 菊池が息を飲んだ音が、耳元に響いた。 少しして、ありがとう、と吐息と一緒にかすれた声が橋本の耳に吹き込まれる。 橋本の背筋に寒気に似た何かがぞわぞわと這った。 心に何か言いようのない、もどかしいような温かいものが広がっていく。 なぜか、涙がじわりと眼尻に浮かぶ。 「……菊池、キモイ」 自分の感情が自分でも理解できなくて、橋本は照れ隠しに毒づいてみせる。 菊池は黙ったまま、体を離す。 そして橋本を見つめると、手をつないで目尻を舌でなぞった。 顔をあげた菊池は、欲情の色が浮かんでいるものの、とても穏やかな顔をしていた。 かすかに微笑んで、とても嬉しそうな、優しげな表情だった。 触れている菊池の手が、熱い。 胸が、熱くなる。 自分の心臓の音が、うるさい。 「…………」 「…………」 もう一回茶化したかったが、真面目な顔で顔を寄せてくる菊池に、橋本は口を閉じる。 同時に目も閉じて、柔らかな感触の茶色の髪に手をまわした。 もうすでに馴染んでしまった唇の感触が、再度柔らかさを伝えてくる。 菊池も、かすかに震えていた。 朝日が目を焼いて、橋本はゆっくりと覚醒を促される。 いつもと違うシーツの色に、ここが自分の部屋ではないことを思い出した。 すっきりと目覚められるタイプの橋本は、早々と昨夜の出来事が鮮明に脳裏に浮かび上がった。 輝く朝日の中でもはっきりとわかるぐらい、顔が瞬時に赤くなる。 恥ずかしさに叫びだしたくなり、いてもたってもいられず寝返りを打とうとすると、それができないことに気づいた。 自分を抑えつけるものは何かと、違和感を感じるところに目を向ける。 胸のあたりに、自分の肌の色よりも白い腕が巻きついていた。 「う、があああああ」 耐えきれず、思わず小さく叫んでしまう。 背中に感じるぬくもりの持ち主が誰かなんてことは、今更言うまでもない。 まずい、これは恥ずかしい。 恥ずかしくて死ぬ。 なんだこの絵に描いたようなラブラブカップル☆な朝は。 やばい、本気で死ぬ。 なんの羞恥プレイだ、これは。 どうしても耐えられず、腕をそっと外す。 今起きられてもどんな顔をしたらいいかもわからないので、起こさないように静かに。 寝起きの悪い菊池は、起きる様子はない。 長い時間かかってようやく外し終えると、橋本はしばし考える。 とりあえずベッドから出るべきか。 シャワーを浴びるべきか。 ていうかぶっちゃけ逃げるべきか。 色々と考えた後に、規則正しい寝息が後ろから聞こえてくることに気づく。 その穏やかな呼吸をしばらく聞いてから、ゆっくりと寝返りをうった。 もう、誰よりも見慣れてしまった、色素の薄い髪の色、自分より白い肌、女にモテそうな甘い顔立ち。 いつもはすましている男が、気持ち良さそうに口をあけて寝ている。 それが思わぬ至近距離で、目に入ってきた。 あまりにも近すぎるその唇と、裸の胸を見てもう一度橋本の体は熱くなった。 昨日のアレコレをより鮮明に思い出してしまったせいだ。 「う、おおおおおおお」 再度小さく叫ぶ。 その声に反応したのか、かすかにうめいて菊池が身じろぐ。 慌てて橋本は自分の口元を押さえた。 起きたのかと息をひそめて目の前の男の様子をうかがう。 けれど菊池はむずがるようにもごもごと何かを言うと、また静かに規則正しい寝息をたてはじめた。 橋本はほっとして、起き上がりかけた体をシーツに沈める。 ものすごい勢いで波打っている心臓を落ち着けるように、深呼吸をする。 昨日のあれやこれやは今も脳裏を駆け巡っている。 とてつもなくこっ恥ずかしい。 恥ずかしさとともに思い出すそれは、けれど悪い記憶ではなかった。 いつもと違う、菊池の姿を知った。 その姿を、好ましく思った。 思い出すのはとてつもなく恥ずかしいけれど、その時、好きだと、思ったのだ。 素直に、その菊池を、好きだと思ったのだ。 そっと、茶色の髪に手を伸ばす。 自分の硬い髪とは違う、柔らかな感触。 ふわふわな髪は寝ぐせになりやすいのか、あちらこちらへと飛んでいる。 少し笑って、それを撫でつけるようにいじる。 そして流れるように顔に指をうつす。 髪と同じように色素の薄い眉、まつげ。 眠っていてもはっきりわかる、二重のまぶた。 自分よりも厚めの唇。 恐る恐る撫でているせいか、菊池が目をあける様子はない。 温かい、体。 すぐそばにある吐息。 指で撫でているうちに、不思議な気持ちが橋本の胸に湧いてくる。 穏やかで、けれど温かい気持ち。 とても優しい。 でも、胸が締め付けられるような、苦しさを伴っている。 菊池に優しくしたくなる。 菊池を、抱きしめたくなる。 ずっと、こうしていたい。 はじめての、感情。 なぜだか涙が出そうになって、橋本はぎゅっと目をつぶった。 気をそらすように、この感情の名前にふさわしい名称をボキャブラリの少ない脳内辞書で探る。 嬉しいよりも苦しさを伴って。 好きというよりは穏やかで。 切ないというほど苦味はない。 「……愛しい、かな………」 ああ、なるほど。 自分の中でしっくりいく言葉が見つかって、小さく笑う。 なんだかとても、愉快だった。 再度菊池の顔をそっとなぞる。 胸が、締め付けられる感情。 愛しい。 「…………」 またうとうととしてきて、橋本は菊池の頬に手を置いたまま目を閉じる。 お互いの、穏やかな心臓の音を感じる。 温かい。 気持ちがいい。 愛しい。 そして呼吸が重なって、もう一度橋本の意識は穏やかな眠りの中に落ちていった。 |