行きたいところ。


日課




「どこへ行きたい?」
「えっとね、どこがいいかな、遊園地でしょ、映画もいいな。海もいいな、山もいいよね」
「今回は一個な」

指折り数えて、みのりはうんうん唸りながら悩む。
俺はそんな風に困るみのりをみて、楽しむ。

「ほら、決めろ。さん、に」
「あああ、待って!」

このままだといつまでたっても悩み続けるだろうから、期限を付ける。
すると慌てて、みのりは勢いよく顔をあげた。

「じゃあビーズ屋さん!」
「なんでだよ。ていうか何度か行ってんだろ」
「なんかもう、悩み過ぎて一周して、そこに戻ってきた」
「戻り過ぎだ」

情けない顔をするみのりに、つい吹き出す。
おかしさと愛しさが、くすぐったくてむずむずする。

なんか、俺も浮かれている。
初めての休日デート。
今までの彼女と行った時は、ここまで楽しみだったっけ。

「ほら、どこ行きたい?」
「えっと、友ちゃんはどこに行きたい?」
「俺はいい。お前の行きたいところに、行くんだ」
「うーん」

お前の行きたいところに、行くんだ。
はじめての我儘。

それが、嬉しいから。