明日も早いと言うのに、今日もネットサーフィンをしている。
まとめサイトとかを見ていると、次々リンクを押してしまって止まらない。
ああ、明日も仕事あるんだけどなあ。
でもやっぱりクリックが止まらない。

しかし、黒背景ってのは目が疲れるなあ。
ずっと見てるとチカチカしてくる。
別のページ移って白だと、一瞬目がくらんで、余計に疲れる。
でもこのサイト面白くて止まらない。
くっそ、みんなレスがうますぎる。

ああ、もう明日早いのに。
目が痛いのに。
黒背景だと後ろの景色も映り込むから目移りするんだよなあ。
でももう止まらねー!!!

部屋の奥のカーテンレールにかけてある洋服がちらちら画面に映る。
もう、見づらいなあ。

あれ。
洋服?
あんな白い洋服なんてかけてあったっけ。

気になって振り返る。
カーテンレールには、薄いピンクの春コートがかけてあった。
ああ、画面に映ったから白く見えたのか。
ちょっとビビったw

さて、続き続き。
私もこれくらいうまくレス出来ればいいんだけどな。
特に現実世界。
色々考えているうちに、話が進んでるんだよなあ。
頭の回転早い人ってうらやましい。

「………」

文字列が並ぶ黒い画面の端に、ちらちらと何かが見える。
あれ、やっぱり、白い服に見える。
あれ、ていうか。さっきのコートより、手前にない?
あれ?
あれ?

「………」

もう一度振り返る。
やっぱり、そこには、ピンクのコートがかかっているだけ。

「………気のせい、だよね」

もう一度、PC画面に目を戻す。
でも、文字列に目がいかない。
画面の端に映る、白い服が、目に入る。
気のせい、だよね?
あれ。

さっきより、近づいている?

「わけ、ないよね」

慌てて振り返る。
やっぱり、そこには、部屋の奥にあるピンクのコートが見えるだけ。

「なん、で?」

もう一度、パソコン画面に目を移す。

「………っ」

叫びそうになるのを、必死にでこらえる。
明らかに、ピンクのコートとは違う場所にある。
もっと手前にある。
さっきは、もっと後ろにあったはずだ。

なんで、なんで、なんでなんでなんでなんで。

何、あれ。
あれ、コートじゃない。
なに、あれ。
白くて、背の高い。
何、あれ。
シーツをかぶった、背の高い人、みたいな、シルエット。

全身に鳥肌が立つ。

後ろを振り返りたくない。
でもこのまま、黒い画面を見てたくない。
後ろを振り向くわけにはいかない。

「あ、そうだ!」

さっさと電源を切ればよかったんだ!
馬鹿じゃん私。
気のせい、これは気のせい。
だって、今までこんなのなかったし。
私疲れてるんだわ。
うん、そうそう。

「えっと、電源は、えっと」

簡単な操作すら馬鹿みたいにおぼつかなくなって、もう面倒だから電プチしてしまう。
一回白くなってから、ブチって音がして、PC画面が切れる。

「はあ」

ため息をついて、顔を上げて気づく。
電源を切った後の画面は、黒い。

「………っ」

白いシーツは、すぐ、そこにいる。
振り返って手を伸ばせば、すぐ届きそうな、そこに。

声も出ない。
何あれ何あれ何あれ。

「い、や」

そいつは、動かない。
ただ、そこにいるだけだ。
なに、あれ。
見間違い?
見間違いだよ。
そう、見間違い。
黒画面で目が疲れちゃったんだよ。
気のせい。
ああ、そうだ、パソコン画面が壊れてるんだ。
そうだ、早くディスプレイ買い換えよう。
うん、そうしよう。

早く、この画面から目を逸らそう。
ああ、でも逸らしたら、その間に、近づきそうで怖い。
怖い?
違う、こんなの見間違い。
ディスプレイの故障。
そうに違いない。
そうだ。
もうパソコンも切ったし、さっさとここから離れよう。
そうしよう。

「そんなわけ、ない!!!」

思い切って振り返る。

「………」

何も、いない。

「………なーんだ」

気のせい、そう、気のせい気のせい。
このまま、画面を見ないでいよう。
ていうかもう、外に行こう。
コンビニでも行こう。
友達の家に行ってもいい。
そんで、明日は友達を呼ぼう。

疲れてるんだ、疲れてるんだ、うん疲れてるんだ。

「このまま、外に、行こう」

パソコンを見ないようにして、出来るだけ早く立ち上がる。
気のせい気のせい気のせい。
後ろを見ないようにして、その場にあった財布を入れっぱなしのバッグを持って玄関に急ぐ。
玄関に座って、靴を履く。

「鍵、いいや、鍵なんて。後でいい。後でいい。早く行こう」

そしてふと振り向いた玄関横にある鏡に、白いシーツが、私を飲みこもうとしてるのが見えた。






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