「お前のそのウォレットチェーンいいよなあ」

橋本が菊池の腰にぶら下がっていたチェーンを物欲しそうに見ながら言う
菊池はポケットから出ていたそれを掴み、差し出してみせる。

「ああ、まだ色違いとかあったぜ。残り少なかった」
「マジ!?」
「店行く?」
「行く!」

菊池の提案に、二つ返事で橋本は答えた。
そしてちょうど外に出ていた二人は、その足でバスに乗って近くの街に出た。
店に入ると、値段も手ごろなこともあり橋本はほぼ即決でチェーンを手に入れた。

「やっぱいいよなあ、これ」
「よかったな」

さっそく財布につけてちゃらちゃらと弄びながら満足げに息をつく。
それを見て、菊池は小さく笑って相槌を打った。

「やっぱちょっと形が違うな」
「ああ、お前の方が新しいからな」
「まあ、全く同じ型とか嫌だけどさ」

ふーんと返事をしながら、橋本は菊池と自分のチェーンを見比べる。
細部と色の違うチェーンは、一見違うようで、けれどよく見ると同じ型だと分かる。

「………なんかこれ、あれだな」
「あ?」
「これ、こいび………」

橋本は言いかけて、そして真っ赤になった。
大げさにばたばたと手をふって暴れる。

「なんでもない!無理だ!俺には無理だ!」

少しだけ形が違うところがまたそれっぽいなあ、と思いながらも口にすることはできなかった。
俺らは昭和のばかっぷるか、とセルフつっこみをいれながら頭を抱える。

「ペアグッズか」

けれど菊池は自分のチェーンをいじってそして照れることなく笑う。
並んで歩きながら、そっと誰にも見られない位置で橋本に指を絡める。

「こういうのも、悪くないな」

その自然な仕草とか、言葉とかに経験値の違いを思い知らされて、少しだけ悔しい。
けれど、自分の思っていたことが独りよがりじゃなかったことに安心して橋本は一瞬だけ指をぎゅっと握る。

「………うん」

そして二人はまた距離をとって歩きだす。
お揃いのチェーンを鳴らしながら。





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