それはまだ、私の恋が叶う日がくるなんて、信じてもいなかった時。 ただ、言い続けることだけに満足していた日。 「そういえば、お前と俺ってどれくらいの付き合いになるんだ?」 「えっとね、幼稚園のさくら組の時でしょ。あれは5月23日だったから、9年と3か月と21日だよ!」 「だからやめろ、そのストーカー的詳細な記録」 だって、忘れられないんだもん。 記憶力のない私だけど、友ちゃんといた日々はビーズのようにキラキラと光って心に残っている。 数学の公式なんてひとつも覚えられないのに、友ちゃんのことなら何もかもを覚えている。 「なんつーか、人生の半分以上お前がいるんだな」 「すごいねえ」 「いい加減諦めて、普通に幸せになれよ」 「友ちゃんのいない幸せなんて考えられないよ」 後ね、少しなんだ。 後少しだけだから、我慢して。 ごめんね。 勝手言ってごめんね。 ウザくてごめんね。 ストーカーでごめんね。 「バーカ」 こつんと頭を叩かれる。 友ちゃんに触れられる貴重な機会。 だからね、友ちゃんに殴られるの、私好き。 「好きだよ、友ちゃん」 大好き。 大好きだよ。 「ずっとずっと、いっしょだよ。これからもいっしょ。私の人生ずーっと友ちゃんでいっぱいなの」 「普通に怖い」 だよねえ。 でもね、きっとずっと、私の中は友ちゃんでいっぱい。 ずっとずっと、いっしょだよ。 私の心の中ではいっしょなの。 いつか、あなたを諦めたとしてもね。 それはまだ、私の恋が叶う日がくるなんて、信じてもいなかった時。 ただ、言い続けることだけに満足していた日。 ずっとずっと、いっしょにいられると、思っていた。 心だけはいっしょにいられると、思っていたの。 |