それはまだ、私の恋が叶う日がくるなんて、信じてもいなかった時。
ただ、言い続けることだけに満足していた日。



***




「そういえば、お前と俺ってどれくらいの付き合いになるんだ?」
「えっとね、幼稚園のさくら組の時でしょ。あれは5月23日だったから、9年と3か月と21日だよ!」
「だからやめろ、そのストーカー的詳細な記録」

だって、忘れられないんだもん。
記憶力のない私だけど、友ちゃんといた日々はビーズのようにキラキラと光って心に残っている。
数学の公式なんてひとつも覚えられないのに、友ちゃんのことなら何もかもを覚えている。

「なんつーか、人生の半分以上お前がいるんだな」
「すごいねえ」
「いい加減諦めて、普通に幸せになれよ」
「友ちゃんのいない幸せなんて考えられないよ」

後ね、少しなんだ。
後少しだけだから、我慢して。
ごめんね。
勝手言ってごめんね。
ウザくてごめんね。
ストーカーでごめんね。

「バーカ」

こつんと頭を叩かれる。
友ちゃんに触れられる貴重な機会。
だからね、友ちゃんに殴られるの、私好き。

「好きだよ、友ちゃん」

大好き。
大好きだよ。

「ずっとずっと、いっしょだよ。これからもいっしょ。私の人生ずーっと友ちゃんでいっぱいなの」
「普通に怖い」

だよねえ。
でもね、きっとずっと、私の中は友ちゃんでいっぱい。
ずっとずっと、いっしょだよ。
私の心の中ではいっしょなの。

いつか、あなたを諦めたとしてもね。



***




それはまだ、私の恋が叶う日がくるなんて、信じてもいなかった時。
ただ、言い続けることだけに満足していた日。

ずっとずっと、いっしょにいられると、思っていた。
心だけはいっしょにいられると、思っていたの。





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