「大丈夫かルイージ」 「兄さん」 「お前は、俺の後ろにいればいい」 小さい頃から、俺の前にいた兄さん。 いつだって守ってくれて、いつだって俺を導いてくれた。 強くて、真っ直ぐで、なんでも持っている兄さん。 かっこよくて、眩しくて、あんたは俺のヒーローだった。 そんなあんたを、誰よりも愛している。 そして、誰よりも憎んでいるよ。 誰からも好かれる兄さん。 周りの尊敬も、愛情も、視線も、すべて兄さんに集まった。 俺はいつだって兄さんの影にいた。 いつも中心にいる兄さんが、誇らしくて、うらやましくて。 そして、妬ましくて、大嫌いだった。 兄さんがいるせいで、俺はいつだって影だった。 兄さんがいるせいで、俺の出番はいつだってなかった。 兄さんがいるせいで、初めて好きになった女性も、去っていった。 兄さんがいるせいで。 兄さんがいるせいで。 兄さんがいるせいで。 兄さんに庇われるたび、兄さんに守られるたび、兄さんの弟として見られるたび。 あんたが憎くて憎くて憎くて。 あんたが笑っているのが憎くて。 彼女の隣にいるあんたが憎くて。 眩しいあんたが、憎くて。 それでも、不思議なんだ。 俺があんたがに笑いかけてくれると、嬉しいんだ。 あんたが俺の手をとると、嬉しいんだ。 あんたが俺を守ってくれるたび、嬉しいんだ。 あんたが他の人間に笑いかけるのはいやだ。 あんたが他の人間を見るのはいやだ。 俺以外の人間を、見るのがいやだ。 あんたが愛しくて、憎くて、もう気が狂いそうだ。 あんたがいなくなればいいのに。 それでもあんたに傍にいてほしい。 どうしたらいい、兄さん。 愛してる。そして、憎んでる。 どうしたら、いいんだろう。 あんたを、殺してしまいたい。 その首を静かにしめて、あんたの苦しむ姿が見たい。 あんたの命の輝きを、この手に。 俺の腕の中で息絶える兄さん。 それは、どれだけの悦びだろう。 そうすれば俺はきっと自由になれる。 もう兄さんの影に隠れることはない。 もう、兄さんが他の人間に笑いかけることをみることもない。 兄さん、あんたのすべてを、俺のものにしてしまいたいよ。 「大丈夫かルイージ」 「兄さん」 「お前は、俺の後ろにいればいい」 小さい頃から、俺の前にいた兄さん。 いつだって守ってくれて、いつだって俺を導いてくれた。 強くて、真っ直ぐで、なんでも持っている兄さん。 かっこよくて、眩しくて、あんたは俺のヒーローだった。 そんなあんたを、誰よりも憎んでいるよ。 そして、誰よりも愛している |