「じゃあ俺、これからデートだから」 いつもの帰り道、隣にいるのはいつもの女。 いつものように言い放ち、別れる。 隣の女が顔をゆがめたのが分かった。 背の高い女は好きじゃない。 薄い胸も短い髪も低い声も、俺の好みからは遠くはなれている。 そのすべてを兼ねそろえた隣の女は、だからむかつくぐらいに好みじゃない。 けれどこうやってこの女が顔をゆがめるのが好き。 この完璧な優等生の幼馴染が、俺のために嫉妬してゆがめるこの顔にゾクゾクくる。 他のどんな女でも感じることのできない快感。 俺に惚れてるのは分かってる。 だから早く、俺の足にすがり付いて泣き叫べ。 その顔見たら、俺イっちまうかもな。 想像しただけ勃っちまいそうだ。 早く、早く壊れちまえ。 この完璧な女を叩き潰すために、俺は今日もこいつを嬲る。 他の女の元に行く。 その言葉を聞いて自分の顔がゆがんだのが分かった。 慣れてはいるのに、ポーカーフェイスに徹することは出来ない。 そのたびに、どす黒い感情が胸を占める。 なんて醜い、嫉妬。 そしてその顔を見て、目の前の男が笑うのが分かった。 獲物を嬲る時の、猫科の肉食獣の顔。 目の前の幼馴染は、私を痛めつけて楽しんでいる。 その表情に安心する。 それは、彼がまだ私に興味を持っている証拠だ。 この最低な猫科の男は、熱くなりやすく冷めやすい。 手に入れたものなど、あっという間に飽きるだろう。 だから。 だから私がこうしている間は私に興味を持っているだろう。 いつまでか分からないけど。 私はこの軽率で愚かな、けれど自由で奔放な男に完全に捕まっている。 この男をつなぎとめることが出来るなら、私は喜んでこの痛みを抱え続ける。 |