小話1



「じゃあ俺、これからデートだから」
いつもの帰り道、隣にいるのはいつもの女。
いつものように言い放ち、別れる。

隣の女が顔をゆがめたのが分かった。


背の高い女は好きじゃない。
薄い胸も短い髪も低い声も、俺の好みからは遠くはなれている。
そのすべてを兼ねそろえた隣の女は、だからむかつくぐらいに好みじゃない。

けれどこうやってこの女が顔をゆがめるのが好き。
この完璧な優等生の幼馴染が、俺のために嫉妬してゆがめるこの顔にゾクゾクくる。
他のどんな女でも感じることのできない快感。

俺に惚れてるのは分かってる。

だから早く、俺の足にすがり付いて泣き叫べ。
その顔見たら、俺イっちまうかもな。
想像しただけ勃っちまいそうだ。

早く、早く壊れちまえ。


この完璧な女を叩き潰すために、俺は今日もこいつを嬲る。



***




他の女の元に行く。
その言葉を聞いて自分の顔がゆがんだのが分かった。
慣れてはいるのに、ポーカーフェイスに徹することは出来ない。
そのたびに、どす黒い感情が胸を占める。
なんて醜い、嫉妬。

そしてその顔を見て、目の前の男が笑うのが分かった。
獲物を嬲る時の、猫科の肉食獣の顔。
目の前の幼馴染は、私を痛めつけて楽しんでいる。

その表情に安心する。
それは、彼がまだ私に興味を持っている証拠だ。

この最低な猫科の男は、熱くなりやすく冷めやすい。
手に入れたものなど、あっという間に飽きるだろう。

だから。
だから私がこうしている間は私に興味を持っているだろう。
いつまでか分からないけど。

私はこの軽率で愚かな、けれど自由で奔放な男に完全に捕まっている。


この男をつなぎとめることが出来るなら、私は喜んでこの痛みを抱え続ける。