落ちていく私に見えたのは、誰よりも近しい2人の男。 そして、細く白い腕をした加害者。 そこに浮かぶのは驚きと後悔と嫉妬心。 そして、哀しみ。 それはとても、愛おしく親しみのあるものだった。 あれは私。 醜く、けれど真っ直ぐな心。 あれは、私。 私に害を及ぼした腕は、けれどすぐに私を救うものへと変わる。 私はその細く近しい腕に、手を伸ばした。 「ご、めん……なさいっ……」 小作りな整った顔を涙で濡らしゆがめている。 泣いてる顔なんて、誰がしてもそんなにかわいくないものだけれど、彼女のその歪んだ顔はとても綺麗に感じた。 「……いいよ、別に」 「ごめん、なさい……」 それでもなお、冷たい廊下に祈るように身を伏せて許しを請う哀れな少女。 それはとても可哀想で、見ていられなくて私は彼女の綺麗な薄茶の髪に手を這わす。 びくりと震えて、罪をとわれることに怯えている。 「本当に、いいよ」 「……え……?」 「あんたは、私だから」 置いていかれるのが嫌で、1人にされたくなくて、優秀な男を独り占めしたくて。 愚かで純粋で、醜悪な感情。 それは何よりも、私の中にあったもの。 弟を縛って。 逃げられないように、捕まえていた。 彼女が泣いているのは、私の罪。 彼女がしたことは、私の罪。 それでも私以上に素直に泣き、感情を発露するこの少女が、とても愛おしかった。 柔らかく滑らかな感触の髪に指を通す。 いつのまにか、少女の涙は止まっていた。 どこか呆けた無防備な顔で、私を見ている。 「あんたって、かわいいね」 この少女が嫌いだった。 嫌いだったからこそ、嫌われているように感じた。 それは鏡。 私の醜悪な心をうつす鏡。 そんな私に、こんなにも謝罪する少女。 このこは、何も、悪くないのに。 「本当に、いいよ」 「で、でも……」 「悪いのは、私」 何がなんだか分からない、というように私を見上げる。 目尻にたまっていた涙がぽろりと零れ落ちる。 その綺麗な水滴がもったいなくて、自然と指ですくいあげた。 きらきらと光る球体。 静かに吸うと、塩辛い味がした。 少女が小首を傾げてまたたきすると同時に、また零れ落ちる。 私の前で身を伏せる少女が哀れで、愛しくて。 私は少女の目尻を唇を寄せた。 少女は黙って、目を伏せた。 |