「母親から見合いもちかけられちった」 「あー、もう俺らもそんな歳か」 心地よい疲労感で、ぐったりとベッドに倒れこみながら橋本がぼそりとそんなことを言った。 隣にいた菊池も腹ばいのままタバコに火をつけ、ため息をつく。 狭いベッドの中、並んで寝ていると汗ばんだ肌が密着して少し気持ち悪い。 「どうすんの?」 一口煙を吸って、菊池は隣に問いかける。 「どーもこーもねーだろ」 ふてくされたように、橋本が菊池と逆側に体を向ける。 「しねーの?」 「していいのかよ」 「いや、許さないけど」 自分で問いかけておきながら、菊池は自分からそう締めくくる。 橋本は壁を向いたまま、呆れたようなため息をついた。 「……お前って何気に嫉妬深いよな」 「普通だろ。お前だってこの前俺の同期に勘違いしてヤキモチやいてたじゃん」 「お前女といちゃいちゃしすぎなんだよ!」 「お前に言われたくねえよ。誰にでもいい顔しやがって」 しばらくそんな言い合いを続ける。 互いにばかばかしくなってきた頃に、菊池が橋本の背中を見て再度問いかけた。 「でも、いいのか?」 「……しょうがねーだろ、どこでまかり間違ったかお前なんか選んじゃったんだから」 「それはこっちの台詞だ」 「お前こそ1人っこだろ?両親うるさくねえの?」 「うちは放任だからなあ」 煙と共に答えると、もう一回橋本がため息をつく。 「……ほんと、なんでお前なんかと……」 「だからこっちの台詞だよ」 「………でも、お前以外考えられないんだからありえねえよな」 諦めたように、ため息と共に吐き出す橋本。 不意に後ろから伸びた腕に、顎をとられる。 そのまま体は壁にむいたままの不安定な姿勢で、菊池が覆いかぶさってくる。 「ん、ん」 「うん」 最初から深い口付けと、無理な姿勢に橋本の息が上がる。 菊池は角度をかえ、何度も何度も橋本の唇を貪る。 互いに舌を絡ませあい、唾液を飲みあい、体に手を這わせる。 いつのまにか橋本の体は菊池と向かい合い、汗ばんだ肌が密着していた。 「は、あ、橋本、なんかあたってる」 「ふ、ん、なんかもっかいいけそ」 「しょーがねーなー」 2人して顔を見合わせて一つ笑うと、再度顔をよせた。 |