昼食の際に、予定がないことを聞きだし、放課後に玉野をまた連れ出した。
水垣は不思議そうにしていたが、特に文句はないようだ。

「………わ、私明日からもう、学校行けません」

玉野が横で暗い顔で地面を見ている。
つーかよく眼鏡落ちないよな。
顔にくっついてんのか、あれ。

「なんでだよ」
「み、水垣君と一緒に帰るなんて。この私が、このぼっちの私が!」

玉野が胸に手をあてて、なんかわけのわからない主張をしている。

「なんだそりゃ。こいつと帰ったら駄目なのか」
「人気のあるイケメン男子と一緒に帰るんですよ!?明日は多分上履きに画びょうで、机には生ゴミですよ!」
「そんな基本的ないじめする奴って今時いんの?」
「いじめに今も昔もありませんよ!スタンダードっていうのは受け継がれるんです!」
「ほー、伝統芸能ってやつだな」
「あああああ。もうだめだああ」

髪質はよさそうな頭を掻き毟り、なんか苦悩している。
水垣が一体どれほどのものなのだろう。
こいつとくっついてるからっていじめられるもんなのか。

「つーかお前友達いるって言ってなかった?あれやっぱ嘘?」
「やっぱってなんですか!いますよ、います!」
「じゃあぼっちじゃないじゃん」
「く、クラスにはいないんです」

やっぱりこれ嘘な気がするな。
こいつ本当に友達いるのか。

「じゃあ、いじめられても別のクラス行けばいいじゃん。いじめられたらかばってくれたりしないの?」
「このコミュ障な私に、いじめからかばってくれたりする行動力のある友達がいると思ってんですか!?」
「なんでそんな堂々と情けないこと言いきってんだよ。ていうか『こみゅしょう』ってなに?」
「コミュニケーション能力が欠如してる人のことです」
「ああ、お前のことか」
「ひ、ひど!」
「自分で言ったんだろ」
「原田君もぼっちのくせになんでそんな堂々としてんですか!?」
「ぼっち言うな」

玉野の頭を軽くはたくと、隣にいた水垣がぼそりとつっこむ。

「いや、お前ぼっちだろ」
「うるさい」

まあ、確かにほとんどクラスでは一人だな。
休み時間も寝るか、レシピ本読むか、図書館行ってレシピ本探すかとかしてるしな。
ぼっちといえばぼっちだ。
だが人から言われるとムカつく。

「あ、でも、水垣君ってお友達がいますね」
「友達じゃねえ」
「いだい!」

このムカつく野郎と友達になった記憶はない。
イラついたのでもう一回玉野の頭をはたく。

「だからお前、仮にも女の子をぽんぽん叩くな」
「いて」

すると水垣がため息交じりに俺の頭を叩く。
そしてにっこりと笑って俺の隣にいた玉野に視線を向ける。

「大丈夫、玉野さん?こっちおいで」
「ひい!」
「お前今、仮にって言わなかったか」
「そっちいると殴られちゃうでしょ」

微笑んだまま、水垣が手を玉野に差し出す。
俺のつっこみは二人とも聞いちゃいない。

「だ、大丈夫です!ここで!イケメンの隣とか無理です!」
「だから俺はなんなんだよ」
「あはは、面白いなあ。俺そんなにイケメンなの?」

なんだそのムカつく質問は。
自分の顔の良さなんて、知り尽くしてるくせに。
ああ、やっぱりこいつムカつく。

「もうめっちゃイケメンです!眩しいです!目が眩みます!私みたいな日陰のイキモノには眩しすぎて、溶けそうなんです!」
「はは、ありがとう」

水垣から隠れるように、玉野が俺にしがみつく。
そして俺越しに、そっと水垣を覗く。

「おい、だから俺はなんなんだ」
「原田君は同じ日陰のイキモノじゃないですか!」
「おいこら」
「いだい!」

本当にこいつは言わなくていいことを言うな。
度胸があるんだかないんだか。

「だから殴るなって」
「ひいいいい」

水垣が玉野の腕をつかみ、自分の隣に引き寄せる。
玉野は情けない悲鳴をあげて、顔を青くする。

「俺よりお前の方にビビってんぞ、そいつ」
「大丈夫、玉野さん?」
「も、もう勘弁してくださいいいい」

本気で泣きそうだ。
ていうか水垣分かっててやってるだろ。

「もう、な、なんで私、呼ばれたんですか」
「卵と濃口醤油のため」

なんとか水垣の隣から逃げ出し、また俺の後ろに隠れる。
殴られるよりイケメンが怖いって、ドMなのか。

「へ!?」

なんてことを話してる間に、今日の決戦会場に着いた。
このスーパーの特売を待って卵を買ってなかったせいで、もう卵がほとんどない。
卵は料理の土台も土台。
なくなったら死活問題だ。

「よし、行くぞ!」
「え?え?」
「お前、事情も説明してなかったのか」
「えっと、水垣君?」

水垣が呆れたようにため息をついてる。
そういや何をしにいくとか言ってなかったな。
まあいいか。

「今日は何食うかな。俺は何が食いたいのか」

スーパーの中に入ると、まず目の前に広がる青果コーナー。
野菜も、結構ストックがなくなっていたな。
野菜は別のスーパーの方が安いから、少しだけ買って補充するか。

「………あ、特売のためだったんですか。原田君がご飯作るんですか?」
「うん。基本的に食事作りは全部あいつ」
「す、すごい」
「まあ、確かに料理に関してはすごい」

隣で水垣が玉野に今日ここに連れてきた理由の説明をしている。
なんだ普通に話せるんじゃねーか。
水垣がカゴとカートを用意して先に進もうとする。

「待て!」
「あ?」

俺を置いてさっさと行こうとした二人を慌てて止める。
そして青果コーナー横にあった棚に走る。

「レシピカードを取ってくる!」
「な、なんか顔つきが違いますね」
「あいつ食べることにすべてを賭けてるから」

新しいレシピーカードはあるだろうか。
ここは今日の特売品のレシピカードを置いてくれるから、つい買ってしまう。
この商売上手め。
ホイル焼きに、ホタテの炊き込みご飯、か。
ホタテの出汁が沁みた、炊き込みご飯、か。
そうだな、炊き込みご飯もいいな。

「よし、行くぞ」
「分かった」
「は、はい」

そして一通り青果コーナーで必要なものを買うと、今日のメインに考えていた鮮魚コーナーにたどり着く。
そこでメインに据えられていた魚は、アジだった。

「………アジ、か」

アジが旬な季節だ。
新鮮そうなアジが大量に置かれている。
旬のものは値段も安いし、味もいい。
最近は肉続きだったから、やっぱり魚がいいだろう。

「………」

考えろ。
深く深く考えろ。

俺はアジを食べたいか。
そうだな、アジでいいかもしれない。
いや、アジでいい、じゃない。
アジが、いい、だ。
俺はアジを食べたい。
ならば調理方法はどうする。

塩焼き。
新鮮そうだからシンプルな調理方法もいいだろう。
だが、そんな簡単に決めていいのか。
もう少し考えよう。

南蛮漬け。
暑くなってきているから、酢を使うのもさっぱりしていいだろう。

アジご飯。
ああ、やばい涎出てきた。
アジの出汁がたっぷりと染みこんだご飯、最高だ。
アジご飯もいいな。

タタキ。
タタキ、か。
そういえばなめろうを作ってみたかったんだ。
前にどっか食べた時に美味しかった。
後でレシピを調べてみよう。
でもそれじゃあ、腹はあまりふくれない。
もっとボリュームのあるもの。
ハーブとパン粉をつけて焼く、とか。
それもうまそう。

いやでも、焼く、か。
違う、揚げる、だ。
そう、昼もトンカツを食べた。
ならば今日は、揚げ物で攻めようじゃないか。

「え、えっと、原田君?」
「よし」
「は、はい?」
「今日はアジフライだ!なめろうも作ってみるぞ!」

玉野がなにやらびっくりした顔で俺を見ている。
なんで驚いてるんだ。

「………こんな笑顔の原田君、初めて見ました」
「料理の話ふれば、結構見れるよ」
「へ、へえ」

なんでそんな微妙そうな顔をしてんだ。



***




「あ、あの、私、少し持ちましょうか?」
「いいよ、大丈夫。いつものことだから」

水垣が両手にスーパーの袋を持ち、玉野に笑いかけている。
というか玉野、割と普通に話せるようになってんじゃねーか。

「ありがとうな、玉野、助かった!」

まあ、何はともあれ、世話になったのは確かだ。
礼は言うべきだろう。
醤油と卵のストックも出来た。
更にスープの缶詰も限定だったが、買うことが出来てよかった。

「は、初めてお礼言われました」
「あいつ食うことのことになると、本当に素直になるんだ」
「俺はいつでも素直だ!」
「まあな。ある意味な」

ある意味ってなんだ。
俺はいつだって人にも自分にも素直に正直に生きている。

「え、えっと、じゃあ、私はもう、お役御免でしょうか」
「ああ、そうだな」

だが、さすがにこきつかって、そのまま帰らせるっていうのは悪いだろうか。
昼メシもおごってもらったしな。

「そうだ、お前も食ってく?」
「へ、は!?」

俺の言葉に、玉野が目を丸くして飛び上がる。
まあ、一人増えるぐらいそんな変わらないし、いいか。
おごるのはやだし。

「荷物持ちしてもらった礼」
「原田君にお礼とかの概念あったんですね!?」
「お前、荷物持ってなかったら殴ってたぞ」

卵が入ってる荷物を振り回すわけにはいかないので、ぐっとこらえる。
本当にこいつの口からは、余計なものがボロボロと出てくる。
縫い付けておいた方がいいんじゃねーか。

「水垣、別にいいだろ?」

一応隣の水垣に聞くと、一瞬ちょっと考える様子を見せる。
けれどすぐに頷いた。

「ああ、玉野さんならいいか。縁とも面識あるし。どうかな、玉野さん?」
「へ、へえ!?」

玉野が奇声をあげて、俺と水垣をきょろきょろと見る。
すると水垣が顔をよせて、玉野の顔を覗き込む。

「ぜひ食べて行ってよ」
「ひ!」

悲鳴をあげて後ずさりしようとする玉野に、もう一歩踏み込み近づいてにっこりと笑う。

「ね」
「は、はい!分かりました!分かりましたから、離れてください!!」
「そっか。どうもありがとう」

全部分かってやってんな、こいつ。
本当に性格悪い。
正直でも素直でもないのは、どっちだ。



***




「これで小さい骨抜け」
「は、はい」

アジを三枚におろして、玉野に渡す。
玉野はおっかなびっくりな手つきで、おそるおそる毛抜きで骨を抜く。
身までなくなりそうだが、まあ、なめろう用だからいいか。

「………あの、もしかして私、労働力として呼ばれました?」
「お前が手伝うつったんだろうか」
「だって水垣君と二人とか無理です!だったら原田君の方がマシです!」

こいつは余計なことを言わずに話すことはできないのか。

「お前、今俺が包丁握ってること忘れるなよ」
「ひ!」

包丁を向けてみせると、青くなって悲鳴をあげた。
そしてごまかすようにへらへらと笑って、話を変える。

「い、いつも、ご飯作ってるんですか?」
「たまにサボるけどな。サボるとうるせー奴がいるから割と作ってる」
「水垣君ですか?」
「あいつは別にレトルトでも文句は言わない。つーかレトルト喜ぶ。ムカつく」

冷凍食品とかファストフードとかコンビニメシとか大好きなやつだ。
まあ、俺も嫌いじゃないが、俺のメシより喜ぶときは本気でムカつく。

「えっと、じゃあ、あの、志藤さん、でしたっけ?あの人ですか?」
「あの人は人に文句つけるような人じゃない。何出しても喜んでくれるし」
「えっと?まだ人がいるんですか?」

そういや、もう一人の同居人のこと言ってなかった。

「あー、朝日が女の子連れ込んでる」

と、噂をすればなんとやら。
のんびりとした声が、ダイニングから聞こえてきた。
いつのまに帰ってきたのか、四天サンが薄ら笑いを浮かべながらキッチンに入ってくる。
来なくていい。

「ただいま、朝日」
「………お帰り、四天サン」

四天サンは楽しげに笑いながら、玉野の隣にやってくる。
そして小柄な玉野を覗き込むようにして、見つめ、優雅な仕草で頭を下げる。

「初めまして、宮守四天と申します」
「は、はい、えっと、えっと、えっと。わ、私の、名前、えっと」

玉野は毛抜きを手にしたまま、一歩ひいて逃げる場所を探す様にきょろきょろと辺りを見渡す。
名前すら忘れるってどういうことだ。

「玉野って言う。クラスメイト。メシ食ってく。いい?」
「勿論。可愛い子がいるなら華やかになるね」
「こいつが可愛いとか、眼悪くなったんじゃねーの」
「こら、女の子にそういうこと言わない」
「いで!」

頭を拳で殴られる。
つーか結構痛かったぞ。
こいつ基本的に馬鹿力だよな。

「ああ、そういえば玉野さんって、昨日朝日がドジ踏んで志藤と司狼に助け求めて迎えに行った時に一緒にいた子か」
「………それ」

わざわざムカつく言い方しやがって。
本当に性格悪いよな。

「ふーん」
「ひ!」

目を覗き込むようにして、玉野に顔を近づける。
玉野は半泣きになりながら固まっている。

「仲良くなったんだね」
「なったのか?」
「え!?」

仲良くなったと言えるのだろうか。
まあ、今日一日だが学校じゃ水垣の次に話しているな。
なんかそう考えると本当に俺、友達いねーな。
別に不自由してないからいいんだけど。

「朝日、口も悪いし目つき悪いし暴力的だけど、嘘はあんまりつかないし、基本的にそこまで悪人じゃないし、料理はうまいから仲良くしてあげてね」
「おい、最後以外一切ほめてねーな」
「大丈夫。朝日の料理はその他の欠点をすべて打ち消すから」
「そうか。そうだな!」

そうだ、俺の料理はまだまだ未熟ではあるが、熱意だけは本物だ。
きっとこれからもうまくなってみせる。

「じゃ、俺ちょっと部屋にいるから、ご飯出来たら呼んでね。玉野さん、ごゆっくり」
「はいはい」

ひらひらと手をふって、四天サンがダイニングから出て行った。
あー、疲れた。
あいつと話してると本当に疲れる。

「ひ、ひどいです」
「ん?」

隣にいた玉野が、俺を見上げて睨みつけている。
涙目になっているが、珍しく俺から視線をそらしていない。

「なんだよ」
「あんなイケメンいるって聞いてないですよ!眩しすぎますよ!超美青年じゃないですか!なんですか、ここ!キラッキラじゃないですか!」
「そうか?」
「原田君の目は節穴ですかー!!!」

まあ、四天サンは確かに作り物のように整った顔立ちをしている。
ムカつくことに。
俺より背の高いイケメンは全員嫌いだ。

「こんな魔窟こなきゃよかった………」
「おい、魔窟って。いやある意味魔窟だけど」
「生き地獄です!」

確かに住人の半分がムカつく奴っていう魔窟ではあるが、生き地獄まで言われた。
こいつのイケメンアレルギーはどうにかならないのか。
ていうか普通女って、イケメンを喜ぶもんじゃないのか。

「原田君ひどいです!」

珍しく俺をまっすぐに見つめて文句をつける。
そんなにいやか。

「んなこと言われても、住人が後一人イケメンだけどいい?とか言わねーだろ」
「知りません!」

なんだこいつもう、面倒くせーな。

「………おい、口開けろ」
「え?」

玉野はいきなり言われて、反射的に口を開ける。
話ながらも作っていたタルタルソースをスプーンで掬い、口の中に放り込む。

「ん」
「どうだ?」

玉野はもごもごと口を動かし、その後表情を緩める。
ほんのりと笑顔になって一つ頷く。

「おいしい!」
「よし。じゃあ、次はそのしょうがすりおろせ」
「はい!」

うん、玉野はアホだな。
まあ、俺の料理をうまいっていうから悪いやつではないだろう。
いや、水垣とか四天サンもうまいっていうな。
でも悪い奴らだ。

「………まあ、それだけ俺の料理がうまいってことだな」
「へ?」
「なんでもない」

よし、それでいい。



***




そしてフライが揚げあがると同時ぐらいに、志藤さんも帰ってきた。
別の部屋の椅子を引っ張り出してきて、4人用のダイニングテーブルを5人で囲む。
割とでかいつくりだからそこまで窮屈でもない。

「うん、アジフライもなめろうもうまいな」
「は、はい、本当においしいです」

衣はさっくり、アジはふんわり。
卵を荒めに潰したプチプチ歯ごたえのタルタルソースとの相性も抜群だ。
なめろうも生姜をきかせたので生臭くもなく、葱の苦みと味噌の甘みと絶妙なバランス。
メインのおかずにはならないと思っていたが、これだけでメシが何杯も行けそうだ。

「うん、なめろうっておいしいんだね。お酒飲みたくなるな」
「あなたはまだ未成年です」
「堅いなあ、志藤は」
「四天さん」
「はーい」

そういやこいつまだ未成年だった。
見た目は確かに若いんだが、あまりにも偉そうな態度から忘れそうになる。

「いいね、女の子がいるとすごく華やか」
「おっさんくせえ」
「なんか言ったかな?」

向かいにいた四天サンにほっぺたをつねられる。

「いで、何も言ってない!」
「お利口さん」

だから本当に倍ムカつく。
お利口さんはやめろ。

「えっと、あの、ここに、皆さんで住んでるんですか?」

誕生日席に座っていた玉野が恐る恐る俺に訪ねてくる。
しかしなぜか四天サンが答えた。

「うん。この四人で住んでるんだよ」
「そ、そうなんですか」

玉野はひっくり返った声で、こくこくと頷いた。
つーかビビりすぎだろう。
そしてまた俺の方を向いて、質問してくる。

「えっと、原田君は、ご両親どこ住んでるんですか?」

他の奴らに答えられないようにか、俺限定の質問だ。

「ああ、俺、家族いないから。2年前に全員死んだ」
「ひ、ご、ごめんなさいごめんなさい!」
「別に気にしてない」

本当に気にしていないのだが、玉野は涙目になりながらあたふたしてる。
そして俺の隣にいた水垣に助けを求めるように視線を向ける。

「み、水垣君は」
「俺も両親いないんだ」
「ご、ごめんなさい!!」

苦笑しながら答える水垣に、玉野は今度こそ涙目になった。
そして追い打ちをかけるように四天サンがにこにこと笑いながら聞かれてもないのに答える。

「俺は悪さしたら家追い出されちゃって、志藤に拾ってもらったの」
「あ、はは。私の方が拾ってもらった感じですが」

ていうかそういう理由だったのか。
俺も知らなかった。
まあ、四天サンは悪さしそうだし、納得の理由だな。

「超空気読めない奴でごめんなさいー!!」

恐慌状態に陥った玉野が涙目で叫ぶ。
別に誰も気にしてないのだが、何度も頭を下げる。
つーか、とどめ刺したのは四天サンだよな。

「に、日常会話も出来ないゴミでごめんなさい!」
「いや、俺たちが特殊なだけだから気にしないで」
「う、うう」

水垣が困ったように笑いながらフォローを入れるが、玉野が俯く。
確かに俺たちが特殊なのか。
というか、あんまり話さない方がいいんだな、両親が死んだとかは。

「玉野」
「は、はい!」
「口開けろ」
「へ?」

泣きながらも、やっぱり反射的に口を開く玉野。
こいつ大丈夫なんだろうか。
なんて思いながら、玉野の皿からアジフライを取り、口に放り込む。

「ん」

さっくりとしてまだ熱いアジフライを、玉野が咀嚼する。
そして、表情を緩めた。

「うまいか」
「おいしい!」
「よし」

さっきの話を忘れたらしい。
本当にあほだな、こいつ。

「朝日、本当にその子気に入ってるんだね」
「へ?」

視線を向けると、四天サンが楽しげにこっちを見ていた。

「友達が司狼以外いないから心配してたんだよね。よかった」
「そもそも水垣は友達じゃねーけどな」
「俺だってお前みたいなコミュ障が友達なのはごめんだ」
「ああ、誰がコミュ障だ!?」

こいつ、覚えたての言葉使いやがって。
俺はコミュニケーション能力は欠如してないぞ。
たぶん。

「お、お二人とも、それくらいで」
「あはは、本当に仲がよくなったね」
「お前やっぱり目が悪い」

志藤さんが困ったように俺たちを止めて、四天サンが朗らかに笑う。
いつもよりちょっと、賑やかな夕メシだった。





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