見えなかったり失われたものは、自分の中で想像するからきっと一番美しい。 - 想像の中の世界 -「本当に大きくなったね」 制服のまま訪れた俺に、耕介さんは目を細めてもう何回目になるか分からない台詞を口にした。 俺はその度に嬉しくなって、でも照れくさくて、ちょっとぶっきらぼうにそっぽを向いてしまう。 「またそれ?耕介さん、何度目だよ」 「だって、僕の大切な守君のことだ。本当に何度も言うぐらい嬉しいんだよ」 「背ばっかり伸びて、体重増えないんだけどね」 「守君は少し運動した方がいいな」 「少しランニングはしてるんだよ」 あまりにも体力がないのは問題だから、耕介さんの家に行かない暇な時は川辺を走ったりしている。 まあ、体が痛くない時、だけなんだけど。 けれど身長ばっかり伸びて、なかなか筋肉もついてくれない。 耕介さんは、そのうち体も出来てくるよと言って頭を撫でてくれる。 「最近、学校はどうだい?」 「楽しいよ。友達も出来た。部活が、何より楽しい」 和樹が私立に行ったから、学校で俺の行動を監視したり、友達を作るのを邪魔する人間がいなくなった。 美術部に入って、同じものを好きな人間と一緒にいれるのが、こんなに楽なものだとは思わなかった。 まあ、絵が好きってより、漫画とかアニメが好きって人間が多いんだけど。 でも、誰も俺を否定しない、軽蔑したりしない、皆で楽しく話すことが出来る。 画材はお金がかかるのがちょっと大変だけど、耕介さんが余ったものをくれたりする。 本当に余っているものなのかどうか、疑わしいが。 「そうか。守君の絵はどんどん素晴らしくなっていくからね。いい機会だし、今度何かの公募展に出してみるといい」 「公募展、かあ」 中学生の大会なんてものはないから、自分で何かを見つけて送らなきゃいけないだろう。 でも確かに、試しに出してみてもいいかもしれない。 賞が大切って訳じゃないけど、何かの節目になるかもしれない。 「家の方はどうだい?」 耕介さんが少しだけ心配そうに、白髪交じりの眉を顰める。 俺は安心させるように小さく笑う。 「変わらない、かな。もうすっかり俺は話さなくなった。和樹が最近荒れてるみたい。よく義父さんと喧嘩してる声とか、母さんを怒ってる声が聞こえる」 一緒に食事ととることもなくなった。 会話もない。 ただ、一緒の家に住んでいるだけだ。 でも、今となってはそれが一番楽だ。 俺が関わろうとすればするほど、あの人達は苛立ちを感じるのだから。 「義弟君は、受験のことで?」 「多分。かなりレベルの下の学校に行ってしまったこととか、野球部もうまくいってないみたい。よく知らないけど」 ずっと塾に通っていた義弟は、中学受験に失敗した。 それでも周りには私立に行くと吹聴していたので、今更同級生のいっぱいいる公立にはいけなかったのだろう。 かなりレベルを落とした私立に入った。 そして今までの野球チームで王様だった和樹は、また1から積み上げなければいけない部活に苛立ちを感じているようだった。 中学生にもなれば、上下関係が厳しい。 受験の失敗の母のせいにし、野球をやらせた義父のせいにし、俺で鬱憤を晴らしている。 「守君、夕御飯作るの手伝ってくれませんか?」 「あ、はい!」 リビングで話していると、千代さんが割烹着で手を拭き拭き現れた。 俺は慌てて台所へ向かう。 今はもうすっかり、耕介さんの家で夕食をご馳走になるのが習慣になってしまった。 耕介さんが不在の時でも、千代さんは来いと言ってくれる。 食事代代わりにもならないけど、手伝いをするようになった。 それに、やってみたら料理は結構楽しい。 「今日のメシはなんですか?」 「ご飯、ですよ」 「は、はい」 ピシャリと手を叩かれて慌てて背筋を伸ばす。 つい中学校の友達と話しているとかっこつけて乱暴な言葉を使いたくなってしまう。 けれど千代さんの叱責は何より怖い。 「今日は筑前煮とほうれん草の胡麻和え、豆腐とわかめの御味噌汁にしましょう」 「美味しそう」 千代さんの作る純和風の料理は、見た目が地味ながらもとっても美味しい。 母さんが作る料理は、和樹が好きなハンバーグとかパスタとか洋食だった。 まあ、俺が家で食べる料理は、レトルトばっかりだったんだけど。 二人で住んでた頃は、母さんが忙しかったから、お惣菜が多かったっけ。 「料理の基本は?」 「さしすせそ」 「はい、よろしい」 今日は煮物を教えてくれるらしい。 材料の切り方から一から教えてくれる。 「材料は飾り切りにすると綺麗で味のしみ込みもいいんですよ」 「難しいよね、これ」 「はいはい、料理の道も一歩からです」 「はい、師匠」 千代さんのしたり顔に、俺が神妙に頷いて、二人同時に噴き出した。 おばあちゃんがいたら、こんな感じだったんだろうか。 優しくて厳しくて温かくて、食べ物のいい匂いがする、ふくふくとした人。 二人で楽しく料理を作って、耕介さんの待つダイニングに運ぶ。 「今日の筑前煮は守君作ですよ」 切り方はとかはやっぱり千代さんに比べてだいぶ下手だが、味付けはそう悪くないとお墨付きをもらった。 まだまだ千代さんの味には、遠く及ばないが。 けれど耕介さんはにこにこと笑いながら、俺の料理を食べてくれる。 「最近は守君もすっかり料理がうまくなったね」 「千代さんの教え方がうまいんだよ」 「私がいない時は、これで守君が旦那様のご飯を作れますね。千代はそろそろ旅行に行きたいと思ってたんですよ」 「そうだな、その時は守君に頼もう」 からからと、三人で笑う。 ああ、そうなったらそんなに素敵だろう。 耕介さんと千代さんと、この家でずっと暮らせたら、どんなに幸せだろう。 食後の一時、書斎で一緒に本を読む。 耕介さんはコーヒーを飲みながら、ゆったりと本を読んでいた。 ソファに座って眼鏡をかけている耕介さんは、本当かっこよくてドキドキする。 俺も将来はこんな風になれるかな。 俺も大好きな美術書や美術館のパンフレットなんかを借りて眺める。 手にとった物の中で、目に付いたなんだか薄暗い絵。 どこか不気味で怖くて、でも惹きつけられる。 解説を読もうとしたが、英語なのでよく分からなかった。 英語、勉強しないと駄目だな。 「ねえ、ごめん、耕介さん。この絵は誰の絵?」 「え、ああ、メトロポリタン美術館のものか」 耕介さんは本から顔をあげて確かめると、作者名と絵の名前を教えてくれた。 名前が分かったので、ネットで調べてみようかと思う。 けれどその前に耕介さんがソファを立ち上がった。 「この絵はシリーズで5枚あるんだ。ちょっと待ってて」 そして本棚の中から一冊の本を取り出して広げる。 そこには今見ていた絵と同じ絵と、同じモチーフと思われる絵が並べられていた。 その絵は全く同じではなく、微妙に内容や迷彩が変えられた連作となっている。 「………暗い絵だね。名前も暗いし」 「そうだね」 「でも、なんだか、惹きつけられるね」 じっと、その絵を見ていると、中にある島の中にいけるような気がしてくる。 一度足を踏み入れたら戻れなくなりそうな、暗く不吉な島。 けれど行ってみたくなる、島。 「最後の方のが、明るいんだ。ボートは、死に近づいているのに」 そこで、ボートの上に乗っている人達がわずかに動いているのが分かった。 最後の絵では、ボートの中の人が島に向かって深くお辞儀をしている。 まるで、死に対して敬意を払っているかのように。 「ボートの中の人が、動いている」 これを描いた人は、何を想って、どんなことを考えて描いたんだろう。 後で、この人について調べてみよう。 「守君はどの絵が好きだい?」 「最後の、かな」 「そう」 限りなく死に近づいた、けれど明るいその絵が、酷く美しく感じた。 耕介さんは否定も肯定もせずに頭を撫でてくれた。 そしてひとしきり二人でその絵を眺めると、簡単な話を聞かせてくれる。 「一番有名なのは、1883年版。これだね」 「これが有名なの?」 「そう、色々の伝説みたいなものがあってね」 そして絵にまつわる話をいくつか聞かせてくれた。 芸術家を弾圧したかの有名な大罪人も愛した絵。 「じゃあ、俺の見方はおかしい?」 「おかしい訳ないだろう。人の感情は自由。芸術は自由だ。守君が好きだと思ったものが、いいものなんだ。君は、君の感情の自由に見ればいいんだよ。好きだと言えばいい」 耕介さんはにこにこと笑って、ゆったりと話す。 とても落ち着く、低く穏やかな声。 耕介さんは俺の考えを諭すことはあっても、頭から否定することなんて、一回もなかった。 「知識は知識。知識は作品により深みを持たせてくれるが、むしろ作品を見る時に知識なんていらない時だってある。知ったかぶりして、他の批評家の言葉を借りたって、滑稽なだけだね。どんな有名な巨匠の絵よりも、路上で売っている無名のイラストレーターの絵に感動する時だってある」 確かにどんな有名な絵だと言われても、琴線に響かない時がある。 どんなに駄作だと言われていても、素敵だと思える時がある。 芸術っていうのはなんて難しい。 「写楽だってゴッホだって、生前はあんなに批判されていたのに、今じゃ世界中の人から愛されている。いつ誰にどうやって評価されるかなんて、分からない。今は認められなくても、いつかは認められるときが来るかもしれない」 ゴッホは生前、一枚の絵しか売れなかった。 写楽は人気が出なくて1年足らずで創作をやめてしまった。 どちらも耕介さんから聞いた話だ。 「ルノアールだって、若い頃は批判もされたんだよ。色々思考錯誤している時に、彼の美しい少女の絵は、まるで死体のようだ、なんて言われている。まあ、彼もその後、その絵は失敗だと思っていたようけどね、と話がずれたね」 ちょっと照れたように頭を掻く。 耕介さんは話しているうちに興が乗るとどんどん話が広がっていってしまう。 自分でも知ったかのウンチク語りで恥ずかしい、なんて言ってるけど、俺は耕介さんの話が大好きだ。 「何が好きだ、なんて守君の感情の通りにすればいいんだ。学校のテストじゃないんだから、一つの答えが正解なんてことはない」 そう言って、また頭を優しくくしゃくしゃと撫でてくれる。 そろそろ耕介さんの背にも追いつきそうだと言うのに、いまだに子供扱いだ。 恥ずかしいけれど、でも嬉しい。 俺は照れくさくて慌てて、本に目を落とす。 「ねえ、この絵、どうして一枚だけ白黒なの?」 「一枚は今は見つかっていないんだ。残されているのはこの写真だけなんだよ」 「………そうなんだ。この絵の色は、分からないんだね」 「そう。どんな絵だったんだろうね」 失われたもの、分からないものっていうのは、どうしてこんなに惹きつけられるんだろう。 想像して、自分の中で、至高のものを作りあげられるからだろうか。 実物見て、がっかりなんてことになったりして。 「その絵の音楽があるんだよ。聞いてみようか」 「音楽?この画家さんが作ったの?」 「いや、この絵にインスピレーションを得た人が作ったんだ」 「へえ」 「と言っても音楽を作った人は、この絵の白黒の銅板画しか見たことなくてね、こんな明るい絵だったとは知らなかったらしい。実物を見てだいぶショックを受けたらしいよ」 考えていたことと余りにも一緒だったので、思わず吹き出してしまった。 ああ、どんな人でも、やっぱり自分の中で描いた世界からは、逃れられないんだな。 「………」 玄関を静かに開けると、中からは今日も言い争う声がする。 というか、和樹が一方的に母を罵る声だ。 俺は気付かれないようにそっと二階の自室に上る。 ただいま、と言わなくなってどれくらいたっただろう。 言っても誰も答えもしないし、俺が帰ってくることを望んでる人なんていない。 そう知った時から、もう言わなくなってしまった。 俺が自宅でご飯を食べてないことにも、気付く人はいない。 自室で宿題と予習復習を済ますことにする。 皆が寝静まった後じゃないと、お風呂に入れない。 誰かにはち合わせると気まずい思いをする。 「和君!」 「うるせーんだよ!馬鹿女!」 母の悲痛な声と、和樹の汚い言葉。 リビングのドアが開く音がして、どんどんと階段を駆け上がる音がする。 ああ、となると、ここに来るな。 「よお、オカマ」 ノックもせずにドアが開かれる。 気付かれないようにため息をついて、後ろを振り返る。 にやにやと人をいたぶることを何より楽しむ義弟の顔に毛虫が背中を這いまわるような不快感を覚える。 「お前、勉強してるの?馬鹿のくせに?やったって無駄なんだよ。ていうか居候のくせに我がもの顔で居座ってんじゃねえよ」 「………」 「親子そろって乞食かよ。俺の親父の金で食ってんだからデカイ顔してんじゃねーよ」 何を言っても罵られるし、何を言わなくても罵られる。 だったら、何も言わない方がまだ疲れない。 すっかり反応がなくなった俺に、義弟は忌々しそうに眉を吊り上げる。 「なんとか言えよ、このオカマ!暗い顔しやがって、うぜんだよ!」 「………っ」 椅子が蹴り倒され、俺は床に転がり落ちる。 衝撃になんとか受け身を取って、頭と内臓は守ろうとする。 そんなに俺の顔が嫌なら、わざわざ部屋に来なければいいのに。 なんて思っても無駄なんだろうな。 俺はこいつのサンドバッグなんだから。 「気持ち悪いんだよ、お前は!死ねよ!この馬鹿!」 床に転がった俺を、和樹は罵りながら思うがままに蹴る。 俺は大事なところだけは守るように体を丸めて、黙っている。 背中に、肩に、腕に、足に、痛みが走る。 痛みなんて、どうでもいい。 痛みなんて、感じていない。 こいつはただの災害。 黙っていれば、去っていく。 ただ終わることを祈る。 幸い顔は目立つからってことで殴られないからいい。 「ちっ」 最後に顔に唾が吐きかけられる。 ひとしきり殴って、ひとまず気がすんだのか、足音荒く部屋を出て行く。 身を起こすと、体中がギシギシと痛んだ。 でも、今日はそこまで酷くもない。 部屋には簡単な救急セットを用意しているから、手当てをしなくては。 前は内臓を殴られて、血尿が出たりした。 今は大事なところを守る方法が分かったから、それほどでもない。 血尿が出た時はさすがに焦ったが、病院や保健室には行けない。 虐待を心配されて家に連絡でもされたら、母がまた半狂乱になる。 耕介さんにも言えない。 心配はさせたくない。 早く、中学を卒業したい。 そしたらどんなことをしてでも、この家を出ていけるのに。 どんなに辛くても、この家にいるよりは、マシだろう。 「守、お前、成績がいいんだな」 「………」 「守」 俺に話しかけられているっていうのが分からなくて、一回シカトしてしまう。 もう一度呼ばれて顔を上げると、久しぶりに見た気がする義父の顔が俺に向いていた。 この人が俺を見ているのなんて、何年ぶりだろう。 「え?」 それは1学期の終わりの成績表を義務として義父と母に渡した時だった。 いつものように無感情に受け取られるだけだと思いさっさと退散しようとすると、唐突に話しかけられた。 俺は意味が分からなくて、言葉が出てこない。 「いい成績じゃないか」 中間と期末の順位表と、成績表。 俺は基本的にインドア派だし、勉強は嫌いじゃない。 だからまあ公立の学校とは言え、成績はいい方だった。 「頑張ったな」 「あ、ああ。今回は始めての期末だから、そんなに難しくなかったから」 「そうか。偉いな」 慌てて言い訳するように、応える。 義父が珍しく、俺のことを見ている。 その目が俺を見て、俺を認めて、俺を褒めている。 「お前、昔から読書家だったしな。ちゃんと勉強、してたんだな」 義父が笑っている。 俺を見て、笑っている。 「………」 今更だと思っている。 和樹があんなになったから、今更俺に目を向けているっていうのは分かっている。 俺が思ったより出来がいってことに気付いて、おもねろうとしている、なんてことは分かっている。 もうあんた達に何も期待していない。 今更だ。 本当に今更だ。 それなのに、胸が熱くなってくる。 涙が出そうになってくる。 「これからも頑張れよ」 「………あ、ありがとう、ございます」 だって、ずっとそう言ってほしかった。 認めて欲しかった。 褒めて、欲しかったんだ。 ずっとずっと、見てもらいたかったんだ。 それから、夏休みに入って、義父はごく稀に俺に話しかけてくれるようになった。 いまだに俺が家にあまりいないことには気付いてないし、和樹の暴力は続いているし、母とは話していない。 ただ、義父が少しだけ、話しかけてくれるようになってきた。 それに戸惑いながらも、やっぱり期待してしまう俺がいる。 もしかしたら、もう一度家族として、やり直せるんじゃないかって、思ってしまう。 どうしても、捨てきれない希望。 何度も何度も裏切られてきたのに、それなのにどうしても、願ってしまう。 馬鹿な俺。 「守!」 「何?」 その日、家に帰ってくるとリビングにいた父に呼び止められた。 リビングに足を向けると、そこには義父さんと母さんがソファに座っていて何かを見ていた。 義父が満面の笑みで、テーブルの上に乗っていた紙を広げる。 「お前、これどうしたんだ!」 「あ、それ」 それは、耕介さんに勧められて出品したポスターのコンクールからの手紙だった。 なんで勝手に人の手紙開けてるんだってのはあったけど、それ以上に義父の上機嫌に圧倒されてしまう。 「特別賞だそうだ!」 「………嘘」 結構応募数が多いってことだったら、佳作とかになれればいいなって思ってた。 思った以上にいい評価で、俺自身実感が沸かない。 「本当だぞ。なんだ信じられないのか」 「う、ん」 「お前昔から絵が好きだったもんな。才能あったんだな。いや、すごいな」 そして義父さんが立ち上がって、俺の頭をその大きくたくましい手でぐしゃぐしゃと撫でる。 耕介さんの手とは全く違う、男らしい武骨な手。 和樹にだけ与えられていた、大きな手。 俺には決して、与えられなかった手。 「美術館で飾られるそうだ。よし、今度皆で見に行くか」 「え、ええ、そうね」 和樹にだけ向けられていた目。 和樹にだけ与えられていた言葉。 「よくやったな、守」 ずっと欲しかった笑顔。 ずっと認めてもらいたかった人。 今更だ。 期待するな。 虫が良すぎる。 ああ、でも、駄目だ。 どうしても、嬉しくなってしまう。 泣きたくなってしまう。 もう一度だけ。 もう一度だけ、と望んでしまう。 期待しても、いいのかな。 もう一度だけ、期待しても、いいかな。 俺はこの人達と家族になれると、もう一度だけ、思ってもいいのかな。 ずっとずっと、想像して、期待して、望んでいた。 俺が一番欲しかった美しいもの。 それを望んでも、いいでしょうか。 |