09/12/13 電話 |
登山を始めた当初は大勢の人が眠る山小屋に違和感を覚えたが、今ではもう慣れたものだ。 どんなどころでも眠ることが出来る。 自分が少しだけ山男と呼ばれる人間に近づけているようで、誇らしい。 頂上から見渡した世界は絶景だった。 やはり苦労も大きいが、雪山はとても美しいと思う。 彼にもこの景色を見せたいと思った。 素直に感情を表す彼なら、この景色を見て喜んでくれるのではないだろうか。 夜に初めて彼から電話があった。 他愛のない話をした。 今度の山登りは、彼がお弁当を作るということだった。 今は料理の練習をしているらしい。 やはりなんでも生真面目に頑張る彼は、好ましいと思う。 疲れもあって、とても気分がよく就寝することが出来た。 | 09/12/14 試験 |
試験が始まった。 いつも通り特に問題なく本日分を終了することが出来た。 基礎からやり直したためか、いつもより調子よくも感じた。 やはり基礎は大事だ。 久しぶりに母に家で会った。 元気か、困ってることはないか、何でも言えと言われた。 昔心配をかけたせいか、忙しい人なのにことあるごとに気にかけてくれる。 僕の常識のなさが、両親に負担をかけていると思うと申し訳ない。 もっとしっかりしなくては駄目だ。 父にも母にも心配をかけないように、一人でなんでもできるようにならなければならない。 | 09/12/15 試験 |
クラスメイトから試験勉強に誘われた。 今日は彼と用事があるからと断った。 彼らは不満そうだったが、ノートは残してきたので問題はないだろう。 しかし普段から勉強をしていればそこまで焦ることはないと思うのだが。 睡眠時間と心の余裕を削りながらする勉強は、あまり効率がよくなさそうだ。 彼の喫茶店で、マスターの娘さんが作ったクッキーをご馳走になった。 今までに味わったことのない不思議な風味のお菓子だった。 感想を求められたので、フェルマーの定理のような味、とだけ伝えた。 350年後だったら、もしかしたら理解されることもあるかもしれない。 彼は成り行きでお菓子作りをすることになっていた。 どうも娘さんには弱いようだ。 どうしようと言われたが、僕もどうすることもできない。 お菓子作りについて、調べてみよう。 | 09/12/16 レシピ |
ネットや本で、お菓子作りについて調べてみた。 料理と違って調理器具が特殊なため、最初の設備投資が必要なようだ。 千秋に聞いてみたところ、うちにはある程度の道具はあるらしい。 お菓子作りするなら私もしたいと言われた。 経験者なら、千秋に教わるのもいいかもしれない。 彼が勉強を教わりに来た。 お菓子作りについては、クラスメイトに教わることになったと言っていた。 それならよかった。 僕もお菓子は作ったことないし、千秋の腕も分からないので、経験豊かだというそのクラスメイトに教わった方がいいだろう。 彼は随分そのクラスメイトを好意を抱いている様子だった。 かわいい女の子らしい。 彼がいい子だというなら、きっといい子なのだろう。 勉強を教えたところ、とても分かりやすいと喜ばれた。 僕も勉強した甲斐があった。 いつも迷惑かけてごめん、と謝られた。 その律義なところがとても好ましい。 僕は、彼の役に立てるのは嬉しいと思う。 | 09/12/17 テスト |
テストの最終日だった。 理解できない問題もなかったし、特に大きな問題はないだろう。 クラス内が開放感に充ち溢れていた。 打ち上げに誘われたので、行ってみた。 大勢の人間がカラオケに集まり、流れで歌を歌わされた。 クラスメイトたちはJ−POPを歌っていたので、合わせてみた。 そういう歌も知っているのかと驚かれた。 そのまま何曲か歌わされた。 彼らの中の僕は一体どんなイメージなのだろう。 森本に最近少し、付き合いやすい、表情が前より柔らかくなったと言われた。 何か僕に変化があっただろうか。 前と異なる行動をしているということはないはずだ。 最近の変化では、恋人が出来たということだろうか。 恋人が出来ると充実して、世界がバラ色になるらしい。 実感はまだ出来ないが、もしかしたら無意識にその影響が出ているのかもしれない。 プラスの方向で変われているというのなら、嬉しい。 | 09/12/18 不真面目 |
瀬古に話しかけられた。 お前は、俺のことが嫌いなのか、と聞かれたので、君には好意を持っている、と答えた。 なら仲良くしたいとは思わないのか、と聞かれた。 君に興味は持っているが、君を不快にしてまで付き合ってもらおうとは思わない。 やっぱり、つまらない奴と言われた。 何度かもっと人好きのする性格になろうかとも考えたが、おそらく無理だろうという結論に至った。 僕はこの性格は中々変えられないだろう。 彼らと同じ思考は、どう頑張ってもできないのだから。 だから、つまらない人間であることは仕方ない。 彼が初任給をもらっていた。 顔をひきしめようとしても、笑ってしまうようだった。 最近の彼は本当に表情豊かになっている。 見ているこちらも、微笑ましくなる。 全然不真面目になれないと、憮然とした顔でいう彼も、微笑ましかった。 不真面目を目指している時点で、彼は真面目なのだろう。 真面目にしかなれない不器用な彼が、僕はとても好きだと思う。 | 09/12/19 研究室 |
今日は聡さんの研究室の本の整理の手伝いをした。 聡さんは片付けが苦手ではないのだが、興味の範囲が広すぎるため物が多くなりすぎる。 数少ない欠点であるかもしれない。 合間に数学の講義などを受けながら、一日手伝いをした。 あるものがあるべき場所に収まっていくのは気持ちよく、整理整頓は好きだ。 近況を聞かれたので、彼のことを話した。 彼のことは大事か、と聞かれた。 大事で、とても好きだと思う、と答えた。 性的な興味は持つか、と聞かれた。 そう言ったものはまだ持っていない。 興味を持ったら教えてあげるから言えと言われた。 そういえば恋人というのは肉体関係にもつながる関係のことだ。 今のところ僕は彼にそう言った欲求を持つことはないが、彼はどうなのだろうか。 恋人同士には、必ずそれは必要となるのだろうか。 調べてみておくことにしよう。 |