行きたいところ。 「橋本、デートしよう」 「………出かけるって言ってくれ」 「デートだろ」 「………いや」 「デート」 「………デートでいいです」 少しも笑うことなく、真面目な顔で言いきった菊池に、橋本はもはや抵抗する気をなくした。 いつのまにかキャラの方向性が変わっている菊池の将来が心配でならない。 そしてそれに付き合わせられるだろう自分の行く末も心配でならない。 軽くため息をついて、漫画から目を離して菊池に視線を移す。 「どっか行きたいところあんの?」 「ここ」 「何?タウン誌?」 菊池が読んでいた情報誌を覗き込む。 そこには恋人で行きたいアミューズメントスポット、みたいないかにもな記事が掲載されていた。 指をさされた場所に目を通して、橋本は持っていた漫画で菊池の頭をしばき倒した。 「ラブホじゃねえか!」 「ブティックホテル」 「一緒だよ!」 なんだかまるでテーマパークのようにきらびやかなホテルの数々を見て、橋本が頭を抱える。 ブランコとか、一体どうするつもりなんだこれは。 「ここ行って何するつもりですか?」 「一晩中、ヤりたい。ローションプレイと、ロータープレイと………」 まったく迷うことなく希望を上げる菊池には、清々しさすら感じる。 橋本は深く深くため息をついた。 そしてもう何度目になるか分からない心の叫びを口にした。 「とりあえず、頼むから落ち着いてくれ。元の菊池に戻ってくれええええ!」 それもまた、毎日のじゃれあい。 |