怖い夢を見ました。 「うはあ!!!」 突っ伏していた机から顔を上げると、そこには見慣れた金髪の悪魔がいた。 ものすごい不本意だが、それで今までの光景が夢だと分かり、心底安心する。 「………夢か」 「随分と勇ましい起き方ですね。勉強を放り出しての居眠りはいかがでしたか。よく眠れましたか?」 「うるさい」 休憩の間にちょっとうとうとして眠ってしまったのだ。 昨日飲み過ぎてあんまり寝ていなかったし。 考えてみれば本当に私の生活、ザ・ニート。 「どんな夢だったんですか?」 「誰が言うか」 嫌みな悪魔はにこにこと笑いながら聞いてくる。 口出すのもおぞましい、恐ろしい夢だった。 出来ればさっさと忘れたい。 『へえ、セツコの世界で結婚も出来ずに家族とも疎遠になり五十で仕事をクビになり孤独死する夢ですか』 『いやあああああ!!!』 思い出すに恐ろしい夢。 貯金もそんなに出来ていなかった私は、毎日細々と暮らしながら残高の減っていく通帳を眺めつづけた。 そしてその内病気になり、外に出られなくなり、誰にも知られずに死んでいくのだ。 今でも嫌な汗をかいている。 「よかったですね。少なくともこの世界にいればそんなことはないですよ」 『………こっちの老後ってどうなってるの?』 そういえば、絶対に帰るけど、帰るつもりだけど、こっちの世界でもし老後を過ごすことになったらどうなのだろう。 今完全ニート生活だけど、これ、このまま続行できるのかしら。 ミカはそこまで私を養ってくれるのかしら。 『そうですねえ、セツコの世界とは違い医療も発展していませんし、病気になったら死にますね。病気しないで家族がいたら長生きする人もいますが』 『………家族がいなかったら?』 『老人を扶養する制度などはないので、働けなくなったら死ぬしかないですね』 『一緒じゃないのよ!!』 あっちの世界もこっちの世界も、どうしてこう世知辛いのよ。 皆が平和に暮らせる世界にしようと思わないの!? 政治家はなにやってるのよ、老人が暮らしやすい世界にしろってのよ! なんのために税金と年金払ってきたって思ってるのよ! ていうかこのまま帰れなかったら今まで払い続けたのは無駄ってこと!? ちくしょう! 『老人を扶養する制度作りなさいよ!』 『その前にやる事が沢山ありまして。まだまだ福祉にまでは手が廻りませんねえ』 『この役立たず!』 『ひどいなあ』 ああ、こいつらをあてになんかしてられないわ。 ちゃんと言葉覚えて職見つけないと。 蓄えをちゃんと用意しよう。 ていうかその前に。 『絶対に結婚して子供作るんだから!!』 私の握り拳での誓いに、悪魔は優しく優しく微笑んだ。 『それこそ夢ですね』 『夢じゃなくて近い将来の現実よ!』 夢なんかに、しないんだから! |