すぐさまメールを返信して、次のメールで待ち合わせ場所を指定された。 勢いでメールを返信してしまったが、もしかして、からかわれてるんじゃないか。 でも、彼はそんなことをする人ではない。 けれど信じきれず本当は嘘じゃないかとやっぱり疑いながらも、期待を半分秘めて、そこへ向かった。 彼は、所在なさげにそわそわと立っていた。 本当だ。 本当なのだ。 私をからかうために、他の男子がメールしたんじゃないかとかずっと不安だった。 私は彼とメアド交換してなかったから、件名の名乗りとメアドで判断するしかなかった。 でも、本当だったのだ。 辺りに他の男子が隠れてたりするんじゃないかとしつこく疑ったりもした。 でも、彼がそんなことするわけがない。 彼は私の顔を見ると、軽く眼を見開いた。 驚いているようだった。 「三田……、お前だけ?」 「……うん」 今ここには、二人だけ。 だから、いつも意地をはる私も、素直になる。 彼は視線を彷徨わせ、口ごもる。 「あ………その………」 「……あ、その、本当に私でいいの?」 声は、震えていた。 みっともなく、かすれていた。 いつもでかい声で笑い飛ばしている、ガサツな私が、頼りない女の子のようだ。 彼は驚いたように、口を開いて、閉じる。 そんなに、驚いたのだろうか。 私も、自分の変化に驚いていたが。 「あ、三田………」 「あ、あ、ごめんね、なんからしくなくて、私も藤原君好きだったから、驚いて、なんか、混乱してて、もしかしてからかわれてるんじゃないかとか思ったりもして、でもうれしくて、うわ、どうしよ、変なこといってる、ごめん。どうしよ、えーと」 なんて、どさくさまぎれに告白したりもした。 自分で何を言ってるか分からなくて、混乱して、胸がいっぱいで。 たぶん私は浮かれていた。 浮かれて頭が真っ白だった。 そして、同時に恐怖で震えていた。 怖くて怖くて、逃げ出したかった。 でも、それでも。 「……その、本当に私でいいの?」 そう言って、恐る恐ると上目づかいで見上げる。 でかい私でも、見上げるほど彼は大きい。 正直、本当に怖かった。 彼から言ってくれたとは言え、ものすごい、怖かった。 こんなに怖かったことってない。 今にも逃げ出したい。 本当に私でいいのだろうか。 本当に野良犬の私でいいのだろうか。 血統書付きの彼が、私みたいな雑種でいいのだろうか。 本当に、何かの間違いじゃないのだろうか。 けれど。 でも、彼は、小さくうなづいてくれた。 困ったように、でも優しい顔で、うなづいてくれたのだ。 だから、私は、その時、泣きだしてしまった。 情けなく、まるで女の子のように、泣きだしてしまった。 ぼろぼろと流れてくる涙が、止まらなかったのだ。 子供のように、声をあげて泣いてしまったのだ。 彼は困ったようにおろおろとして、肩を抱いてくれた。 その大きな手が、本当に温かくて、優しくて、そして嬉しくて。 私はますます涙が止まらなかった。 彼は、私の涙が止まるまで、肩を抱いていてくれた。 そして、私は一念発起した。 絶対、かわいくなってみせる。 彼に、好きになってもらうんだ。 |