制作を終えて丸一日眠っていた先輩が、ふらりと階下に下りてくる。
風呂に向かおうと廊下を歩く姿を見て、その後ろを追いかける。
髭が伸びきって髪はボサボサ。 よれよれの汚れたTシャツとズボンを身につけている姿は、まさしく熊だ。
何日も風呂に入ってないので汗臭さに、たまらなく興奮して俺はつい呼び止めてしまった。

「先輩」

だって、制作に打ち込んでいる先輩を見て、ずっと欲情していたのだ。
食欲と睡眠欲を満たした先輩は、風呂に入ったら性欲を満たそうとするだろう。
俺を相手に選んでくれればいいが、外に出られたら終わりだ。
禁欲明けの先輩の濃いのは、俺が飲みたい。

「なんだ?」

先輩が振り返ったので、その腕を引っ張って引き寄せその唇に噛みつく。
されるがままの先輩は、俺を見降ろし馬鹿にするように笑う。

「なんだ、誘ってんのか?」
「誘惑されてくれませんか?」
「お前の頑張り次第だな」

そう言って、先輩は突っ立ったまま。
俺の腰を引き寄せるいつもの手がないのでもどかしく、その首に絡みつき、もう一度キスをする。
厚い舌に絡みつき、歯を立て、唾液を呑み込む。
溢れそうになる唾液を啜って、吸いつき、噛みつく。
そのまま首に噛みつくと、しょっぱい味がした。
先輩からする据えた匂いに、自分がすでに反応しているのが分かった。

「食われそうだな」

先輩がくすくすと笑って、ようやく腰を引き寄せてくれる。
その気になってくれたようだ。

「いっそ食べてしまいたいです」

この人の全てを噛みちぎって咀嚼して味わって飲み込みたい。
体液の最後の一滴まで、味わって飲むだろう。
ああ、そうできたらどれだけ快感なんだろう。
この人の手も体も全てを、自分の身に取り入れる。

「ばーか、誰がお前になんか食わせるかよ。俺が食うんだよ」

言いながら先輩は、俺の首に強く噛みつく。
犬歯が食い込む感触に、脳髄が痺れるような快感に目の前で星が散る。
喉を食い破られそうなほどの強い痛みに、今にもイってしまいそうだ。

「っは、あ、いい、です。食べてください」

その牙で俺を喰らって、粉々にして飲みこんで。
血の最後の一滴まで飲み干して。

あなたの一部になれるなら、それこそ俺は本望です。





TOP