ああ、触れたいな。
指でなぞって確かめて、唇で触れて、味わいたい。

「何見てんの?」
「あんたの首筋って、綺麗だよね。触りたい、キスしたい、齧りたい」

正直に答えると返ってきたのは鉄拳制裁。
照れ隠しと分かってはいるものの、さすがにそのうち顔の形が変わりそうだ。
近いうちにどうにかした方がいいかもしれない。

「あ、あんたってどうしてそう、発言が変態なの!」
「正直に生きているから」

皆、思っていることは一緒だと思うんだよな。
男なんて欲望の塊。
女だってエロいこと考えてる。
好きな奴がいたら触れたいだろう。
抱きしめたいキスしたいやりたい。
そう考えるのは、至極普通のこと。

「………エロいことなんて考えてないって顔して、お前本当に変態!」
「いや?」
「嫌に決まってんだろ!」
「本当に?求められるのって嬉しくない?お前なんて触りたくないって言われる方がいい?」

問い詰めると、三田は顔を真っ赤にして俯いた。
相変わらずその表情はなにより正直だ。
そりゃ嬉しいよな。
女としてのコンプレックスだらけの奴が、女として認められるんだから。
隠しごとなんてできない、お馬鹿な子犬。
これに騙されるなんて、藤原もまた馬鹿犬だ。

「嬉しいだろ?自分の価値、認められた気がして」
「………嬉しく、ない!」
「本当に?」

ふいと視線を逸らして、黙りこむ。
首筋まで、真っ赤だ。
コンプレックスだらけで自己評価は低いけど、普通にかわいいと思う。
まあ、美少女でも美女でもないけど。
でも、普通にかわいい。
特にその首筋のラインは、とても綺麗で好きだ。

ああ、かわいいな。

「ひゃあ!」

思わずその首に、キスを落とす。
そっと触れるか触れないかぐらいのじれったいキス。

足りない。
飢える。
渇く。
もっともっと触りたい。
この中に、入り込みたい。

「な、な、なななな!」
「俺は求められたら嬉しい。あんたも俺を求めてよ。キスしてよ。キスしたいよ。抱きしめてよ。抱きしめたい」

そっと引きよせて耳元で囁くと、三田は腕の中で硬直した。
赤くなったまま動かない。

ああ、かわいいな。
この寸止め感がたまらない。
待たされるのもまた快感。
この意地っ張りな女が、素直になったらどんなに楽しいだろう。
そう考えるのも、恋の楽しみ。

「足りないよ、三田。もっともっともっと」

君にキスしたい。
俺にキスして。

キスが、足りない。





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