「大丈夫かルイージ」
「兄さん」
「お前は、俺の後ろにいればいい」

小さい頃から、俺の前にいた兄さん。
いつだって守ってくれて、いつだって俺を導いてくれた。

強くて、真っ直ぐで、なんでも持っている兄さん。
かっこよくて、眩しくて、あんたは俺のヒーローだった。
そんなあんたを、誰よりも愛している。

そして、誰よりも憎んでいるよ。



***




誰からも好かれる兄さん。
周りの尊敬も、愛情も、視線も、すべて兄さんに集まった。
俺はいつだって兄さんの影にいた。
いつも中心にいる兄さんが、誇らしくて、うらやましくて。

そして、妬ましくて、大嫌いだった。

兄さんがいるせいで、俺はいつだって影だった。
兄さんがいるせいで、俺の出番はいつだってなかった。
兄さんがいるせいで、初めて好きになった女性も、去っていった。

兄さんがいるせいで。
兄さんがいるせいで。
兄さんがいるせいで。

兄さんに庇われるたび、兄さんに守られるたび、兄さんの弟として見られるたび。
あんたが憎くて憎くて憎くて。

あんたが笑っているのが憎くて。
彼女の隣にいるあんたが憎くて。
眩しいあんたが、憎くて。

それでも、不思議なんだ。

俺があんたがに笑いかけてくれると、嬉しいんだ。
あんたが俺の手をとると、嬉しいんだ。
あんたが俺を守ってくれるたび、嬉しいんだ。

あんたが他の人間に笑いかけるのはいやだ。
あんたが他の人間を見るのはいやだ。
俺以外の人間を、見るのがいやだ。

あんたが愛しくて、憎くて、もう気が狂いそうだ。

あんたがいなくなればいいのに。
それでもあんたに傍にいてほしい。

どうしたらいい、兄さん。
愛してる。そして、憎んでる。
どうしたら、いいんだろう。

あんたを、殺してしまいたい。

その首を静かにしめて、あんたの苦しむ姿が見たい。
あんたの命の輝きを、この手に。

俺の腕の中で息絶える兄さん。
それは、どれだけの悦びだろう。

そうすれば俺はきっと自由になれる。

もう兄さんの影に隠れることはない。
もう、兄さんが他の人間に笑いかけることをみることもない。

兄さん、あんたのすべてを、俺のものにしてしまいたいよ。



***




「大丈夫かルイージ」
「兄さん」
「お前は、俺の後ろにいればいい」

小さい頃から、俺の前にいた兄さん。
いつだって守ってくれて、いつだって俺を導いてくれた。

強くて、真っ直ぐで、なんでも持っている兄さん。
かっこよくて、眩しくて、あんたは俺のヒーローだった。
そんなあんたを、誰よりも憎んでいるよ。

そして、誰よりも愛している