ああ、今日も君はなんて美しいんだ。 「綺麗だ………」 彼女の細く白い腕が、僕の背中に回される。 その細く華奢な体を組み敷き、ただひたすらに美しい姿に目を奪われる。 「ああ………」 「綺麗だ、綺麗だ、とても綺麗だ」 彼女の声がひそやかな喘ぎ声が部屋に響き渡る。 僕はその声を聞かないようにしながら、窓の外に目を向ける。 そこには今日は青い光を身にまとった、何より愛しい君の姿。 「綺麗だ………」 ああ、君は今日もなんて美しいんだ。 日中の赤く聳え立つ凛とした硬質な美貌も愛しているが、夜の日ごとに色を変える淫らな君にはとても欲情する。 「好きだ」 華奢な彼女の体に腰を打ちつけながら、僕はただひたすらに窓の外の君の姿を見つめ続ける。 凛々しく美しい、僕の恋人。 東京タワー、今日も変わらず君は美しい。 彼女の家からは、東京タワーがとても美しく見える。 モデルをしている彼女は、東京一等地の高層マンションに居を構えている。 初めて来た時は感動で言葉が出なかった。 彼女の部屋の寝室から見る僕の恋人は、どの姿よりも美しかったのだ。 勿論、東京タワーはどこから、どの角度から見ても美しい。 真下から見るのは少し大胆すぎて照れてしまうが、その大らかな姿は僕を受け入れてくれていると感じて落ち着く。 君の姿は見えなくなるが、中に入った時は君と一体化していると感じて充足感を感じる。 ヘリに乗って君を見下ろした時は、普段強気な君がとても弱々しくそして小さく、とても頼りなく、とてもかわいらしく感じたものだ。 その全ての、どの姿も、僕にとっては愛おしい。 けれど彼女の部屋から見た東京タワーの姿は、そのどの姿よりもかわいらしく、儚く、それでいて凛々しく、強く、たおやかだった。 僕はその日のうちに彼女に告白した。 ベッドを窓際に配置して、彼女を抱きながら東京タワーの姿を見ていると、愛しい東京タワーを抱いている気分になる。 ああ、君はきっともっと堅く冷たい体をしているのだろうけれど、もっと大きく僕を包み込んでくれるのだろうね。 前に君と一つになろうとしたが、無粋な警察に追われて出来なかった。 誰もが君と僕との仲に嫉妬して、引き裂こうとする。 僕と君はまるでロミオとジュリエットだ。 愛しているよ、東京タワー。 僕の永遠の恋人。 スカイツリーなんてあんなブス、何が日本一だ。 デカイだけで全く美しさも何もない。 美しいのは、ただ一人、君だけだ東京タワー。 僕はただひたすら、君だけを愛しているよ。 いつか君をきっと、僕のものにしてみせる。 愛している、東京タワー。 永遠の、美しい君。 |