「きみ、だあれ?」

舌足らずな甘えた声とともに向けられたその温かいもの。

今までノイズとしか感じなかったものが、私の耳に声として入ってきた。
灰色だった景色が、色づいて意味のあるものへと変わっていく。
触れる風に温度を感じ、指先まで血が行き渡る。

その笑顔が、私に初めて生きていることを感じさせた。
自分が息をしていたことを、物を考えることができたことを、体温があったことを。
思い出させてくれた。


だからそれが、私の守りたかった、すべて。





TOP   NEXT