09/12/20 お買いもの

今日は深山と電車で3駅先の店まで買いもの。
深山行きつけの登山の専門店があるらしい。
他の道具は深山がくれると言ったが、靴だけはそうもいかない。
バイト代で財布の中は温かい。

と、思っていたが店の中に入って逃げ出したくなった。
俺、一万ぐらいで買えるものだと思っていた。
諭吉さんが三枚とか四枚とかって、なにこれ、金で出来てるのかこの靴。

どうしよう、逃げるって言っていいかな。
ていうか深山はこれを何足も持ってるのか。
バイトなんてしてないみたいなのに。
このセレブが。
久々にムカついた。
深山悪くないけど。

俺が黙り込んだのが分からないのか、奥に引っ張っていかれた。
どうしよう、逃げるか。
貯金をおろしてくるか。
こんなん買ったら今月暮らしていけない。

ビクビクしていたら、深山が店員さんと話して何足か持ってきた。
どうしよう、いちゃもんつけて買わないっていえばいいか。
そうすると店員の茶髪の若い兄ちゃんがそっと、これは一万から二万までの奴だけど平気?って聞いてくれた。
予算オーバーだが、それならいける。
俺は全力で頷いた。
助かった。
テフロンのフライパンは来月だ。

初心者だし、最初は初中級者用の山に連れてくみたいだから、これくらいで平気かな。
トレッキングシューズだったらもっと安くなるけど、やっぱり登山靴の方がいいから。
これは手頃だけどハイカットでソールもしっかりしてる。

何言ってんだかよく分からないけど、何足か試し履きさせてもらった。
18000円くらいのがすごく履き心地よかった。
しばらくそれでうろうろさせてもらったが、問題なさそうだった。
予算オーバーだったが、それにした。

深山に平気か?別に普通の靴でもかまわないと言われた。
でもそれだと、ハイキング系の山しか登れない。
平気、と言った。

今日買おうと思っていたお弁当箱とフライパンは諦めた。
来月買おう。
お弁当箱も結構高い。

と思っていたが、ロフトでお弁当箱見ていたら深山が買ってくれた。
そんなことしてもらう理由はないと怒った。
こういうのをおごられるのは、なんか違う。
なら、これで僕にお弁当を作ってくれと言われた。
しばらく言い争いしたが、周りが見てたから、結局買ってもらった。

どうも、深山は金銭感覚がない。
でも、お弁当箱は嬉しいことは嬉しい。
深山用のと俺ので、二つ買った。

ちょっと険悪な雰囲気のまま、深山の家にいった。
謝られた。
少し考えなしだったかもしれない、君の気持ちを傷つけたならすまない。
だから俺も謝った。
メシとか奢られるのは嬉しいけど、高価なものはひく。でも、気持ちはすごい嬉しい。頑張って弁当作る、と言っておいた。
仲直りした。

一緒に昨日作ったクッキーを食べた。
おいしいと言ってくれた。
満足。
いくみさんに食わせる分も含めて、今日夜作ろう。

深山が登山靴の様子を見るついでに、足のマッサージをしてくれた。
綺麗な筋肉がついている、と言われた。
深山のマッサージはうまかった。

そんで、勃ってしまった。
テンパって逃げ出した。


09/12/21 動悸息切れ

なんで俺、深山なんかに勃っちゃったのか。
若いからだ。
きっとそう。
生理現象。

眠れなくなってしまったので、勉強した。
何もかも忘れるため集中した。
はかどった。

眠かったけど、試験が結構よくできた。
よかった。

バイトに早く着いてしまった。
昼番の人がまだいた。
名前なんだっけ。
やっぱりかわいい。
早いんだね、て言われたから、試験中なので、と答えた。
店長さんに怒られた。

試験中なら勉強しなさい!バイトは休んでいいから!と言われた。
そういうものなのか。
せっかく来たのに。
学生の本分は勉強!て怒られた。

深山が来る予定だったからそれまで手伝うことにした。
深山が来て、なんか顔見れなくて、顔が熱くなった。
変だ。
皿を三枚割った。

きっと寝不足だから早く帰れと言われた。
仕方ないから帰った。
帰り道に深山に平気か?て言われた。
肩に手を置かれてビビった。

ダッシュで逃げ出した。
俺、変。
何やってるんだろう。


09/12/22 動悸息切れが続く

また眠れなくて、勉強してしまった。
深山からはどうしたのかとメールが来た。
トイレに行きたかったんだと返した。

眠れなかったり、変なこと考えてしまうのは多分欲求不満だからだ。
ついでに解消してみた。
余計に混乱した。

今日で試験は終わり。
いつも三日間なのに授業数が足りないとかで詰め込まれた。

バイトで忘れていたクッキーを出した。
試験中に何してるんだって怒られた。
理不尽だ。
でも店長さんもテンホウさんも他の常連さんもおいしい、て誉めてくれた。
嬉しい。
お菓子作りも悪くない。
いくみさんは不機嫌だった。

深山が遅れて来た。
皿割った。
みんなに心配された。

本当におかしい。
なんとかいつものように過ごした。

多分過ごせてたはず。


09/12/23 動機息切れがまだまだ続く

テスト明けの休み。
暇だ。
いつもだったら深山を誘うが、今日は会いたくない。

いや、会いたくない訳じゃない。
顔が見たい気がする。
顔を思い出したら動機息切れが激しくなった。
やっぱ会いたくない。
ますます挙動不審になってしまう。
でも、深山と話したいかも。
いや、何も話せない。
でも、声聞きたい。
いや、思い出しただけで逃げ出したくなる。

どうしんだ、俺、病気か。
病院に行った方がいいかもしれない。

とりあえず走った。
いつもの倍走った。
頭空っぽにできた。
すっきりした。

帰ってシャワー浴びたら、ケータイに着信があった。
深山だった。
動機息切れがぶり返した。

かけ直そうとして、声を思い出して、無理だと思った。
メールにした。

ごめん、風呂入ってた。どうかした?
大した用事じゃない。君と話したかっただけだ。

ケータイ落とした。
とりあえずベッドで動機息切れを抑えた。
なんとか冷静になってから、返信した。

じゃあ、電話しよっか?
すまない、これから出かける。
そっか残念。
また電話する。

息が苦しい。
心臓が痛い。

やっぱり俺は病気かもしれない。


09/12/24 クリスマス

調子が悪い。
朝走って、いつものように弁当を作ったが、調子が悪い。
寝不足で頭が回らない。
だるい。
学校サボりたい。
そんな訳にもいかないから学校行った。

テストがちらほら帰ってきた。
いつもよりめちゃめちゃよかった。
母さんに見せたら喜ばれるだろう。

柴村に元気がないと言われた。
心配しているのか。
こいつは本当にいい奴なのかもしれない。

病気かもしれない、心臓の病気はどの病院だろうと聞いた。
大丈夫か!?心臓外科?内科?と言われた。
焦っていた。
とりあえず様子を見る、と言っておいた。
本当に病院に行った方がいいだろうか。

家に帰ってだらだらとしていて気付いた。
今日、クリスマスイブなのか。
うちは子供が兄貴と俺だけなので、子供の頃以来特にクリスマスの行事とかしていない。
兄貴は今家にいないし。

もしかして、恋人同士としては、なんかするべきだったのだろうか。
なんの約束もしてなかった。
しまった。
まあ、いいか。
深山も何も言ってなかったし。

一応クッキーでも作っておこうかな。
この前と同じ奴だけど。
簡単だから1時間ちょっとぐらいで出来た。
どんどん手際がよくなっている気がする。
いい感じだ。

ラッピングをするかしまいか迷っていると、ケータイにメールが入った。
深山からだった。

すまないが、ちょっと外に出てきてくれ。

まさかと思って窓から外を見ると、深山がいた。
寒そうで、鼻が赤い。
急いで外に出た。
深山がにっこりと笑った。
動悸息切れがした。

どうしたんだ?って聞いたら、クリスマスプレゼントを渡したくて、と言われた。
白い袋に赤いリボンの大きな袋を渡された。
心臓がばっくんばっくんいった。
開けてみた。

テフロン加工のフライパンだった。

泣いてしまった。
恥ずかしい。
深山が困っていた。

気に入らなかったか?
嬉しくて、泣けてきた。

ずびずび鼻水すすって泣いている俺を、恐る恐る抱きしめてくれた。
心臓がものすごい連打されてたけど、なんか嬉しかった。

俺、何も用意してない。
何もいらない。
でも、何かあげたい。金ないけど。
僕は今まで人が何を考えてようとあまり気にならなかった。けれど、君が喜ぶこと、君が笑ってくれることを考えて何かをするのが、とても楽しい。君が嬉しいというなら、それが何よりのプレゼントだ。

こいつ、アホだ。
本当にアホだ。
そのまま情けなくしばらく泣いた。

コートも着てなかったから体が冷えた。
早く家に入れと言われた。
無理矢理深山も部屋に連れ込んだ。
クッキー食わせた。
おいしいって言ってくれた。

嬉しかった。
すごくすごく嬉しかった。

明日は深山に弁当を作る約束をした。


09/12/25 眠い

朝五時に起きてお弁当を作った。
昨日の夜に二十四時間スーパーで食材を買ってきた。
横井さんに借りた本を見ながら全力で料理を作った。
野菜の飾り切りもした。
フライパンはもったいなくて使えなかった。
おかず作りすぎて入りきらなかった。
しまった。

横井さんほど綺麗には出来なかったが、まあまあ綺麗に出来た。
深山のやつは。

ギリギリだった。
走る時間なかった。
母さんが起きてきて呆れた目で見ていた。
何が悪い。

深山に駅前で渡した。
感想が楽しみだ。
やっぱり動悸息切れが激しかったが、今日はなんとなく平気だった。

学校で横井さんに楽しそうだね、て言われた。
俺はそんなに分かりやすいのか。
フライパンが手に入ったこと言った。
テフロンは軽いし焦げないし初心者に向いてるけどすぐ剥げちゃうから気をつけてね、て言われた。
さすが師匠だ。
気をつけよう。

今日は深山はバイト先に来なかった。
店長さんに楽しそうね、て言われた。
やっぱり分かりやすいのか。
街中はクリスマスだけど、喫茶店はいつも通り常連さんばかりだった。

深山に早く感想聞きたい。


09/12/26 お菓子作り二回目

今日も横井さんの家でお菓子作りになった。
師匠のエプロン姿はやっぱりかわいすぎる。
八代さんはいいとして、なぜかやっぱり柴村もいた。
だからなぜ。
まあ、いいけど。
八代さんと柴村は相変わらず楽しそうにわいわいしていた。

今日はオーブンを使ったクッキーを作った。
やっぱりフライパンよりさっくりしておいしい気がした。
混ぜるのとか上手になったね!って褒められた。
師匠のおかげです。
ナッツがいっぱい入った田舎風のクッキー。
横井さんが焼いておいくれたチーズケーキと一緒に食べた。
おいしかった。
師匠最高。

お菓子作りも結構楽しい。
オーブンは一応家にある。
使ってる奴いないけど。
家でも作ってみよう。
型とか電動泡だて器とか振いとか欲しい。
金がいくらあっても足りない。

そういえば嬉しくてつっこみ忘れたけど、テフロンいくらしたんだろう。
一度びしっと言わなければ。
あいつ、金銭感覚なさすぎる。

帰り道、柴村と一緒だったので質問してみた。

ある人物を見ていると動悸息切れが激しくなる。
ある人物と話しているのが楽しい。
楽しいのになぜか逃げ出したくなる。
触られて勃ってしまう。
顔が見れなくなってしまう。
体温が上昇する。

この症状に心当たりはあるか、と聞いたら大笑いされた。
それは分かりやすく恋だ、と言われた。

やっぱりそうだったのか。
うっすらそんな気はしていた。
納得した。

横井さんか?って聞かれた。
なぜ師匠。
違うって言った。
なぜかがっかりした顔をされた。
なぜ。
誰か教えろと言われたから、先方の意思を確認してから教えると言った。

どうやら、俺は深山に恋をしているらしい。





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