09/11/16 恋

聡さんに、美晴は恋をしたことがあるかと聞かれる。
恋は素晴らしいからしてごらんと言われる。
聡さんの言うことに間違いはない。
試しにしてみよう。

09/11/17 相手

恋をするには相手が必要だということが分かった。
相手を検討してみることにした。
学校の級友などがいいだろうか。
聡さんに相談したところ、一目惚れをしてみるのもいいと言われた。
駅前で相手を探してみよう。

09/11/18 一目惚れ

一目惚れとは一目見ただけで好きになること。
一目見て好きになることにした。
好きな数字は1と0。
10番目に駅から出てきた人間にすることにした。
活発そうな男子学生だった。
彼を好きになることにした。
告白してみた。
ふざけるなと言われた。
気分を害したようだ。
唐突過ぎたかもしれない。
明日もう一度話してみよう。

09/11/19 告白

同じ時間に駅で待っていたら彼が現れた。
もう一度話してみた。
突然で申し訳なかったということ、ふざけている訳ではないこと、彼のことが好きだと言うこと。
交際を始めることに承諾してもらった。
こういう感じでいいのだろうか。
恋とはどういうものなのだろう。

09/11/20 交際

交際を始めたはいいが、何をするのかよく分からない。
彼に聞いてみたが、彼もよく分からないということだった。
とりあえず映画か遊園地ではないかと言われた。
確かに物語の中ではそういった行動をとっている。
調べてみることにしよう。

彼は活発そうな見かけとは裏腹に少し無気力な印象を受ける。
背は僕よりも少し低いぐらいだろうか。
運動をしているのではないかと思われる。
彼はどういう人間なのだろう。

09/11/21 休日

聡さんがいつものように遊びに来た。
彼は暇を見ては会いに来てくれる。
心配しているのだろう。
僕がまだ常識を分からなかったのは小学生の頃なのに、まだ心配をかけているようだ。
もっとしっかりしなくては駄目だ。

恋をしたことを伝えた。
驚いていたようだが、今度会わせてくれと言われた。
彼ともっと親しくなってから、聡さんに会ってもらおう。

09/11/22 偶然

デートの予習をしに雑誌を買いに来た本屋で彼に会った。
声をかけられ驚いた。
考えてみれば駅が一緒ということは家が近いということだ。
偶然会うことも確率としてはそう低いものではない。

映画と遊園地を周るルートを提案したところ、ハードすぎると指摘された。
確かにそうかもしれない。
遊園地というものは行ったことがないが、雑誌のプランを見ると1日かかるようだ。
相談の結果、映画だけにした。
彼は中々しっかりしている。
やはり無気力そうに見え少々荒い言葉を使うが、どこか無理しているように見える。
端々に見える仕草は生真面目な面が見え隠れしている。
興味深い。

09/11/23 映画

彼氏というものは待ち合わせの時間より早く来ているものらしい。
30分前に来てみた。
彼も10分前には来た。
時間にしっかりしているようだ。
そういうところは好ましいと思う。
この場合は彼も彼氏になるから早く来るのは当然なのか。
交際と言うのは興味深い。

デートでは恋愛映画が定番らしいので従ってみた。
最近の映画はSFXが素晴らしい。
細部までこだわった映像効果は職人の技を感じさせる。
使用している小物などもどれも一流のものばかりだった。
隣を見たら彼は気持ちよさそうに寝ていた。
寝ると険しい顔が年相応に幼い感じで微笑ましかった。

彼氏だから映画の代金を支払ってみたが、そのお返しにと食事をご馳走になった。
聡さんに一度だけ連れてこられたファーストフード店。
中々に面白かった。

数学の話をしたら、そんなものが面白いのかと驚いていた。
彼の趣味は探し中らしい。
いいものが見つかるといいと思う。

今日は充実していた。

09/11/24 テスト

実力テストの結果が返ってきた。
問題のないレベルだった。
テストは今までの成果を表すものであって、点数を競うものではないがやはりよい結果が出るのは自信になる。

級友の森本にテストの結果を聞かれた。
答えたら渋い顔をされた。
点数を競うものではないと言っても、納得はしないだろう。
僕の言うことは人に理解されることは少ない。
少々寂しいが仕方ない。
人と付き合うのは難しいものだ。
勉強の点数なんて指標の一つだ。
そこまで気にするものではないと思うが、進学校と言われるこの学校で競う風潮が生まれるのは当然のことであるとも思う。
それに競争心と言うのは悪いものではないだろう。

恋人は待ち合わせして帰るものらしいので、駅前で彼を待っていた。
驚いていた。
携帯番号とメールアドレスの交換を行った。
一緒に帰れる時は連絡すると言われた。
なるほど、合理的だ。
彼はやはりしっかりしている。

09/11/25 研究室

級友から遊びに誘われた。
恋人と帰るかもしれないので断った。
彼らは僕を利用するつもりなんだからあまり付き合うなと聡さんに言われている。
利用されるとは、食事の代金を大目に払ったりノートを貸したりするなどのことらしい。
特に問題はない気がする。
彼らと話すのは中々興味深く楽しい。
勉強についても、お互いに教え合うのは有意義だ。
聡さんが言うほど、彼らは悪い人間とは思えない。
彼らが僕のいないところで、僕がつまらない奴と言っていることも知っている。
だが、彼らは全ての人間対してそうだし、調子のいいところはあるが、彼らの付き合い方はそういうものだと認識している。

聡さんは僕のそういう思考に問題があると考えているようだ。
あまり心配をかけたくないのだが、難しいものだ。

今日は一緒に帰れないとメールが入った。
残念だが、仕方ない。
聡さんの研究室に行った。
新しく解明の進んだ数式についての講義を受けた。
楽しかった。

両親は元気かと聞かれた。
最近見ていないが、問題がある場合は連絡があるだろうから元気だと推測される。

聡さんに夕食をご馳走になった。
タイ料理の香草は苦手だが、中々美味しい。

09/11/26 喫茶店

朝食時に千秋に今度一緒に遊びに行こうと言われた。
承諾した。
お母さんが元気かと聞いていたと伝えられたので、変わりないと伝えておいてくれと言った。
聡さんのところだけではなく、父と母のところにも顔を出せと言われた。
そういえば1カ月ぐらい顔を見ていないかもしれない。
彼らの仕事の邪魔になるのはあまり好ましくないので、メールを送っておくことにしよう。

バイトをしたいと言っていた彼の仕事が決まったらしい。
一緒に来るかとメールが来たので行ってみることにした。
駅近くの、オールディーズの音楽と、珈琲の匂いの染みついた趣のある喫茶店だった。
彼は初日から早速働いていた。
勤労の意欲があることは素晴らしいことだ。
僕もバイトをしてみるのもいいかもしれないが、両親も聡さんも反対するだろう。
珈琲をご馳走になり、彼の働く姿を眺めた。
珈琲もおいしく、落ち着く店だった。
彼は待っていたお礼と言って、帰りにコンビニエンスストアの肉まんをご馳走してくれた。

09/11/27 結果

実力テストの結果が張り出された。
お前は頭がよくていいよな、両親共に大学の先生とかサラブレットだよな、と嫌みを言われた。
人を羨んでいてもどうしようもないものだが、言わなくてはいられないのだろう。
こういう時に何かをいうのは逆効果だと分かっているので黙って観察していた。
人の感情というのは、中々興味深く面白い。
しかしそれをコントールするのは難しい。
そのために観察して勉強するのだが、その様子を冷静、冷たい、人間味がない、偉そうといった形容詞で評される。
僕はいまだに人付き合いが得意ではない。

今日も喫茶店についていってみた。
勉強したところによると、恋人とは始終側にいるものらしい。
この喫茶店は好きだし、彼のことも好きなので、苦痛ではない。
むしろ、楽しい時間だと思う。
緩やかに流れるオールディーズの音楽に身を委ねながら本を読むのは落ち着いた。
時折彼が本の感想などを聞いてくるのも好ましい。

帰りにまた肉まんをご馳走になった。
ご馳走になってばかりでは申し訳ないのでココアをご馳走した。
二人で食べながら帰った。

09/11/28 登山

休日だったため、聡さんの誘いで山に登った。
明日は聡さんの用事もあるので、日帰りとなった。
そろそろザックを新調したほうがいいかもしれない。
これから冬山の季節だし、装備の手入れも行おう。

やはり登山は気持ちがいい。
風を感じ、季節の移り変わりを感じ、疲れながらもただひたすら進んでいく内に無心になれる。
頂上についた時の達成感は、言葉にするのが難しい。
登山を教えてくれた聡さんには感謝している。

頂上で僕の作ったお弁当を食べた。
料理も聡さんに教わった。
科学実験のようで中々楽しいが、これもまた上達が難しい。

聡さんに、恋人はどうだと聞かれた。
少し無気力で若者らしい乱暴なところがあるが、根は真面目らしく中々しっかりとしたいい子で、付き合うのは楽しいと伝えた。
乱暴な女の子なのかと問われたので、男だと教えた。
とても驚いていた。
そういえば、男性同士で付き合うのは一般的ではなかったのを思い出した。
絶対に今度会わせろと言われた。
僕も聡さんと彼が友好的な関係を作ってくれたら嬉しい。

帰ったら彼からメールがあった。
明日一緒に遊ぼうという内容だったので承諾した。
そういえばこれが彼の初めての誘いだ。
恋人らしくなっているようだ。
これからも精進しよう。




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