いつもしけこむのに使っている空き室。 掃除をする代わりに自由に使うことを黙認されている。 一時使っては、適当にその辺の奴らに掃除させていた。 空いた一方のベッドに、好みの奴を組み敷いていたのはそう遠い日でもない。 けれど今、うつぶせにされ、後ろ手に縛られ、服を剥かれているのは、俺だ。 「本当は縛ったりするの、好きじゃねえんだけどな。俺ノーマルだし」 「なら、縛るな!」 「お前が暴れないんだったらな」 身じろぎをして手を解こうとしていた俺を、その細腕でなんなく押さえつけ、桜川は器用に服を脱がしていく。 シャツと靴下だけを身につけているマニアックな格好のまま、俺は膝を立てケツを突き出すような格好をさせられた。 手は背中に回っているため、肩で体を支える不安定な姿勢。 獣のにように伏せられ、好きにされるのは男のプライドが踏みにじられる。 「これでよしっと。あんまり抵抗すると、折るぜ」 「このマニアっ……」 「やっぱ全裸より半裸の方が燃えるよな」 俺の負け惜しみにような毒づきを気にもせず、鼻歌でも歌いそうな上機嫌で、桜川は俺の後ろから体に手を這わしきた。 いきなり遠慮なく無造作に、俺のそれを握る。 少々乱暴だが、男同士だからこそツボは心得ていて、的確にポイントを絞ってくる。 鈴口をなぞり、裏筋をひっかきながら、もう一方の手は後の袋を弄ぶ。 俺の手よりも細い指に乱暴にいじられ、電流に似た刺激が背筋をかけのぼる。 感じたくなんてないのに、やりたい盛りの体は快感を受け取り、すぐに萎えていたものが、質量を増していく。 「んっ、は、あ」 「いいぜ、もっと声上げろよ」 揶揄する言葉に、ものすごい屈辱と怒りで頭の中が真っ赤になる。 しかし息は上がり、怒りとは別のもので体は熱くなっていく。 断続的に与えられる快感に、抵抗する気力を奪われ体の力が抜けていく。 元々、快感には弱い。 「はっ!!」 「いいのか?腰が、揺れてるぜ?この前も思ったけど、お前感じやすいな」 「だ、れが!!」 否定はするものの、すでに俺のものが勃ちあがっているのは、自分で分かる。 そのことが悔しくて腹が立って、けれどその屈辱に被虐心が幽かに煽られまた体が熱くなる。 桜川も興奮しているのか、息が僅かに上がっていた。 俺みたいな男臭いデカくてムサい男を弄って何が楽しいのか分からないが、そのことに少しだけ溜飲が下がる。 俺だけが翻弄されている訳ではない。 けれど、そんなささやかな優越感も、少女のような高く澄んだ声に粉々にされていく。 「かわいいな、秋庭ちゃん」 「く、そ………っ」 「散々、男も女も泣かせてきたんだろ、コレで。いい色してんな」 「いつか、ぜってええ、お前もヤッてやる……っ」 カウパー液でぬめりを帯びてきたのか、いつからか室内にはくちゅくちゅと音が鳴り響く。 耳元にそれが響いて、耳が熱くなる。 自分があんなかわいい男に好きにされて感じているなんて、考えたくない。 自分の男としての矜持が根こそぎ奪われていく。 だから、最後のプライドを振り絞って、毒づいてみせる。 息が上がり、変な声が上がりそうになるのを必死でこらえながらの震えた声に、桜川は鼻で笑う。 馬鹿にしたように。 けれど、楽しげに。 「お前、面白いな。いいぜ、いつでも来いよ。相手してやるぜ」 「今に見てろよ!お前につっこんでひーひー言わせてやるからな!俺の精液だらけにしてやる!」 「楽しみにしてるぜ。俺に勝てたら、俺に突っ込ませてやるよ」 くるりと体を横倒しにされる。 後ろ手に縛れているため横を向いたまま、桜川は顔を覗き込んでくる。 その柔らかな微笑みは、やっぱり一瞬見とれてしまうぐらい綺麗で。 俺は一瞬言葉を失う。 「どうした?」 その俺の態度に、桜川は興味深そうにのぞき込んで胸を弄ってくる。 いつのまにか興奮を示していた突起をはじかれ、俺は声をあげた。 「……あっ」 俺はここが感じるのは知っていたから、たまに男にも女にも舐めさせたりもしていた。 でも、舐めさせるのと、舐められるのは、大きく違う。 自分が手綱を握っていた快感を、一方的にコントロールされる。 恥ずかしくて悔しくてむかついて、興奮が煽られる。 そのことと、さっき一瞬見とれてしまった決まりの悪さで、俺はもう一度桜川を睨みつけた。 「……っ絶対、絶対に、お前に勝つからな」 「ガキかよ。かわいいな、お前」 「………あっ」 横倒しになったままの不自然な態勢の俺に顔を伸ばし、ちろちろと桜川の小さなピンクの舌が俺の乳首をなぞる。 清純そうな白い顔が、俺の黒い体を弄ぶ。 どこか倒錯的な光景。 緩やかな快感が伝わって、下もますます先走りを零したのが分かった。 震える俺のものを、桜川が空いた左手でぬめりを塗りつけるように動かす。 その思ったより硬い手の感触に、更に俺のは大きくなる。 「こっちの反応も、素直でかわいい」 「んっっっ、く、は、あ」 「ほら、いい音してきたな」 音はますます大きくなり、ぴちゃぴちゃと音を響かせる。 桜川の言葉と、その音が俺を煽って、体を大きく振るわせる。 その瞬間、不意に桜川が力を籠めて一回しごく。 乳首に歯を立てる。 鈴口に爪を立てられた。 痛みを感じるほどの強い刺激を一気に与えられ、俺は背筋をのけぞらせる。 腰のあたりが熱くなり、我慢する暇もなく吐き出していた。 「んんっ!」 「早いな」 「く、はあ、は、はあ、は」 心臓が早く波打つ。 いきなりイかせられた体は快感についていけずに、ぴくぴくと震える。 頭が真っ白になり、全力疾走した後のように息があがり、体が重くなる。 桜川は手についた俺の体液を舐めとった。 清潔な少年のその仕草はひどく淫猥で、ぞくりと背筋に電流が走る。 桜川は俺の腹にも散った精液をそのまま塗りつける。 「ま、最後の望みは今でも叶えてやれるぜ。お前の精液で、俺もすげえべたべたになりそうだ」 「……く、そ……くそ!」 「さ、降りろよ」 そして、ベッドから下ろされると、ベッドに腰かけた桜川の前に座らされる。 興奮に頬をピンクにする桜川は、してることとは裏腹に、とてもかわいかった。 どうしてもやっぱり、それに見とれてしまう自分が、何よりムカつく。 桜川は、楽しげに笑うと、ジッパーを下ろしすでに勃ちあがっている自分のものをとりだし俺につきつけた。 白い肌をピンクに染める桜川と、それはとても不釣り合いだった。 赤黒く、血管を浮き上がらせ男臭い匂いさせるそれは、もしかしたら俺のものより立派かもしれない。 改めてマジマジとみていると、頭を掴まれた。 「さてと、咥えろよ。噛むなよ。噛んだらその歯全部折ってやるからな。それからお前のも不能にしてやる」 まるで別のメーカーのオプションでつけられたかのような不似合いなそれを、無理やり口につけられる。 口を閉じて反抗すると、足で俺のものを踏みつけられた。 そのまま力を入れられ、脳天に突き抜けるような痛みが走った。 「つっ」 「早くしろよ、踏みつぶすぞ」 「く、そ………」 痛みと、急所を攻撃される恐怖に俺はしぶしぶそれに口をつけた。 半ば以上は立ち上がっているが、手を後ろ手に縛られているので、なかなか咥えるのが難しい。 鼻でこすり、舌で舐めあげると桜川は鼻に抜けるような吐息を漏らした。 「かわいいな、秋庭。いい子だ」 「んっ」 うまくいったことを褒めるように、頭を優しく撫でられる。 ひどいことをされている。 無理矢理口を犯されている。 いつでも人を組み敷いていた俺が、押さえつけられている。 雄としてのプライドが粉砕された。 それなのに、その仕草は優しくて、俺は混乱してくる。 好き放題されることへの、恥辱と紙一重の被虐的な快感。 綺麗な天使のような少年に褒めらる、不思議に許されてる感覚。 「ほら、咥えてみろ。いい子だな」 「ぅんっ、うむ、ぐ」 そのまま口の中に、そのグロテスクなものを突っ込まれる。 フェラチオぐらいは何回もしたことがある。 以前、俺が他の奴らを抱いた時にしてやった。 けれど、これは全然違う。 あの時とは、何もかも違う。 無理矢理つっこまれ、腰をゆすられ、苦しさに生理的な涙が浮かぶ。 けれど俺は必死に舌を使った。 培った技術なんてそっちのけで、ただひたすら舐めて、喉を使ってしごいた。 苦しい、でかくて痛い。 息ができない。 苦い液体が舌を伝う。 けれど、エラで上あごをすられ、唇を幹でしごかれる。 酸素が足りなくて頭がくらくらしてくると、なぜか口の中の感覚が鋭敏になる。 刺激に、一度放った自分のそれが反応してくる。 自分の反応が意味が分からず、混乱する。 上を向いて桜川の様子を窺うと、桜川はうっとりと快感に酔っていた。 白い肌はピンクから赤く染まり、舌がちらりとのぞく。 無垢な処女がはじめての快感に身を任せているようで、犯されているのは自分なのに犯しているかのような背徳感を覚える。 俺と視線があうと、俺の口の中のものが、さらに質量を増した。 俺を見て、興奮をしている。 「よし、いい子だ。かわいいな。かわいいよ、秋庭。かわいい」 「ん、んん」 頭を優しく撫でられる。 ご褒美のように。 ひどいことをされているのに。 犯されているのに。 撫でられるのが気持ち良くて、もっとしてほしくて、さらに舌を動かす。 桜川は小さく声を漏らして、快感を示した。 この暴君を好きにしていることに、自分もますます煽られる。 「お前、名前なんだっけ」 「……………」 頭を撫でられながら、そんなことを聞かれた。 別に答えなかったのは、反抗している訳じゃない。 ただ、夢中になっていただだけだ。 桜川に愛撫を施すのに。 しかしそれを抵抗と受け取ったのか、桜川は再度俺のものに足を伸ばした。 また痛みを与えられるのかと身構えると、しかしそれは動きをかえた。 「あ、あっ、ん」 「ほら、お前の名前は?」 「あ、あ、いた!」 たまに痛みを与えるほどの強さで、反勃ちになって濡れたそれを桜川は足で愛撫を施す。 器用な男は足の指の愛撫とは思えない、繊細な力加減で俺を翻弄する。 「いい子だな。名前は?」 「や、やめ」 答えたくとも、快感に答えられない。 それでも何度も促される。 混乱する思考はようやく、相手の質問を理解する。 条件反射のように、問いに答えた。 「名前は?」 「零、れいっ」 「へえ、かわいい名前だな、かわいいな零」 「うっ、ああ」 「ほら、ご褒美だ、もう一回いけよ」 名前を呼ばれて、一番大きな波が訪れた。 それと同時に、両足を使ってしごかれる。 そして俺はあっけなく再度達した。 「ああっ!!!」 そして快感の余韻に浸っている暇もなく、もう一度猛ったそれを銜えさせられる。 もともと大きなそれは、もはや暴力的なほどに大きくなっていた。 体中が信じられないほど敏感になっていて、少し触れられただけでも体が跳ねる。 息があがっていて苦しい。 口を開けて受け入れるのがやっとで、愛撫を施す余裕もない。 桜川は腰をふって好き勝手に俺の口内を犯し快感を得ている。 「おれも、いく、ぜ。全部飲めよ。こぼしたらおしおきだからな」 「ん、んんっ、んー」 ますます腰の動きは早くなる。 苦しくて痛くて、喉を突かれて吐き気がこみ上げる。 えづきそうになるのを必死にこらえて、俺はただひたすら桜川を受け入れた。 そして一番強く突き入れられたその時、喉の奥に勢いよく熱いものが吐き出された。 飲めと言われた命令を覚えていた訳じゃない。 だが、それを飲まなきゃいけないという義務感に襲われて、吐き気を押さえつけてその生臭い液体をなんとか飲み込む。 苦しい。 「は、ああ、ん」 「ぐ、はっ、ん、んぐっ」 「は、ああ。よしよし、いい子だ零。よく飲めたな。零はいい子だ」 「は、あ、はあはあはあ」 最後に残った残りまで吸いだして、俺はゆっくり口を開放される。 やり遂げた俺に、桜川はペットを褒めるように優しく髪を撫で口の周りについた唾液を拭う。 それが心地よくて、ぼうっとただ身を任せていた。 しかし、しばらくして、くすりと桜川が笑ったことに気づく。 そのことで、ようやく現実感が戻ってきた。 自分が何をさせられたか、何をしたか、何を思ったか、瞬時に理解する。 顔が、一気に赤くなった。 まだ苦味の残る舌を唾液でごまかし、俺を見下ろしてニコニコと笑う桜川を睨みつけた。 「く、そ、くそくそっ!今に見てろよ」 「く、くくく、いいな、お前本当に。退屈だと思ってたけど、結構楽しめそうだな、この学校も」 全く動じない桜川はもう一度の俺の髪をかきあげ、額を撫でる。 そして笑いながら残酷にそれを告げた。 「さてと、ケツだせよ、秋庭。本番はこれからだぜ?」 |