ばしゃりと大きな音が響いて、その場で飛び上がる。 「わ」 咄嗟に窓の方を向くと、水面が大きく波打っていた。 窓が開け放たれているが、風は入ってきていない。 つまり、風で揺れた訳ではなさそうだ。 「ああ、失礼なことを言ったせいで、怒ってしまったようだ」 露子さんがくすくすと楽しそうに笑う。 水面は徐々に波紋を小さくして、静かになっていく。 「いるん、ですか、龍神」 「おりますね」 俺の質問に、露子さんはあっさりと頷いた。 まあ、いてもおかしいことはないだろう。 神という存在は、確かにそこにいるのだから。 「この部屋は、龍神とその花嫁の部屋なんです。つまり、立見家当主の部屋。しかし、主は龍神となります」 つまり開け放たれた窓は、龍神と対峙するためのもの。 俺たちが湖に向かいあうのも、露子さん達が俺たちの斜め前に座るのも、上座に龍神を据えているからなのだろう。 「そこから龍神の祠に行けます。どうぞ、おいでください」 露子さんが部屋の隅を指さしてゆっくりと立ち上がる。 今まで気づかなかったが、そこには勝手口のような扉があった。 促されて俺たちも立ち上がる。 出た途端冷たい風が吹き付けられて、ぶるりと震える。 あの広間も吹きっ晒しだから寒かったが、やっぱり水辺で完全に外だと違う。 扉の外は、小さな半島のように湖にせり出していた。 他からは陸続きになっていないようで、あの部屋からしか行けないのだろう。 島の先には、神社よりは小さく、祠よりは大きい、そんな社があった。 「あ、上から見えました、この社。………綺麗ですね、湖」 「上の展望台ですね。つまらないところですが、この龍湖だけは美しい」 間近で見るとますます目を奪われる青に、つい漏らしてしまう。 露子さんも嬉しそうに目を細めた。 「はい、とても、綺麗なところです」 「ありがとう」 冷たい風によく似合う、凛として鋭い印象の湖。 今はわずかに邪気を感じてどろどろしたものがあるようだが、それでも圧倒させる神々しさ。 これが、神の住まう湖、か。 「この社で婚礼の儀式をします。姉はつい先日代替わりをして、婚礼を行ったばかりだった」 露子さんが社を見て、一つ肩を竦める。 「新婚一か月で嫁に逃げられるとは、可哀そうな夫です」 「露子」 水魚子さんの控え目な叱責と同時に、ばしゃりと大きく水面が揺れた。 先ほどよりも大きく感じて、またびくりと飛び上がってしまう。 圧倒的な強い力を、ビリビリと感じる。 しかし露子さんは全く気にせず、からからと笑っている。 「怒ってる怒ってる」 「あ、あの」 「はは、本当に機嫌が悪いんです。次の嫁をさっさと認めてくれればいいんですが、駄々こねてるんですよ」 次の嫁と言うと、立見家の当主。 となると、自動的に次の嫁は決まっている。 「やっぱり、次の花嫁は」 「私ですね」 あっさりと露子さんは言った。 嫌がる様子とかは、全然見受けられない。 むしろ、どこか嬉しそうだ。 「とりあえず場を清めなければ旦那様がお怒りを鎮めてくれなさそうなので、まずは道切りのための境の張り直し、その後集落全体の清め、湖の清め、そして婚礼」 露子さんがこちらに向き直って、真剣な目で見てくる。 「宮守の皆様にお手伝いいただきたいのは、これらのことになります。通常の邪気祓いよりは大分骨が折れてしまうのですが、お手伝いいただけるだろうか」 宮城さんに事前に聞いていた通り、結構なハードスケジュールぽい。 俺が返事をする訳にもいかなくて、ちらりと天を見る。 天は俺の視線は気にせず、優雅に笑った。 「喜んでお引き受けいたします。ご当主が無事龍神に嫁すまで、微力ながら尽力させていただきます」 「宮守の方々にお力添えいただければ何も怖いことはない。お手数をおかけいたしますがどうぞよろしくお願いいたします」 「なんなりとお申しつけください」 天ならなんとかなるんだけど、俺も頑張ろう。 少しでも天の力になれると、いいのだが。 「では、式次第について説明します。寒いし、中に入りましょうか」 露子さんが促し、みんなが連れだって中に入ろうとする。 俺も続こうとして、つい足を止めてしまった。 手すりも何もないので、湖の水はすぐそこだ。 真っ青な透き通った水に、深くまで誘いこまれているようだ。 光を浴びてキラキラと輝き、眩しい。 「綺麗な、水ですね」 「摩周湖ほどという訳にはいきませんが、透明度は中々のものですよ。透明度の割には生物も多い。水深が深く、夏でも冷たいため泳いだりするには向いてませんけどね。すぐそこから深くなってるのでお気を付け下さい」 「………はい」 屈みこんでいたので腰を上げようとする。 その時、魚か何かが跳ねたのか水がぱしゃりと揺れて、顔に水をかけられて咄嗟に目を瞑る。 ぐらりと体が傾いでしまう。 「わ!」 「三薙さん!」 志藤さんの焦ったような声が聞こえたと思ったら、がしっと腕を掴まれた。 バクバクと波打っている心臓を抑えながら後ろをむく。 「言われた傍から何してるの?」 天が呆れたような顔で、俺の腕を掴んでいた。 湖に顔からつっこみかけたところを引っ張って止めてくれたらしい。 この寒さの中、湖に落ちたら大変だ。 「ご、ごめん」 天の隣には手を伸ばした形の志藤さんもいた。 二人して助けてくれようとしていたのだろう。 「あ、志藤さんもすいませんでした」 「………いえ」 志藤さんが少しだけ厳しい顔で首を横にふった。 俺の軽率な行動に、呆れてしまったのだろう。 「志藤さん、あの、すいません」 「いえ、ご無事でよかったです」 もう一度謝ると、志藤さんはようやく笑ってくれた。 志藤さんに呆れられないように、気をつけなきゃいけない。 当主の部屋は寒いということで、場所を移した。 移ってくれてよかった。 手足がかじかんでそろそろ限界だった。 「帰っていたのか、湊。話していた宮守家の方々だ」 広間の隣の応接間の前には、学ラン姿の俺と同じぐらいの少年が立っていた。 お姉さんによく似た、落ち着いた清潔な印象の人だ。 地味だけど整った顔は、結構モテそうだ。 「露子姉さん。はい、ご挨拶に伺いました」 「皆さま、こちらは弟の湊です」 声も清潔な、細いが凛とした声。 露子さんの言葉に顔をあげて、こちらに向き直す。 そしてどこかぎこちなく頭を下げた。 「初めまして、ご挨拶が遅れ失礼いたしました。立見湊と申します。この度は当家のため、遠いところお越し下さり、ありがとうございます」 「こちらこそ、短い間となりますがお世話になります。私は宮守家の四天。どうぞよろしくお願いいたします」 「同じく三薙です。よろしくお願いいたします」 俺より随分しっかりした人のようだ。 いくつぐらいなんだろう。 その疑問に気付いた訳ではないだろうが、露子さんがすぐに教えてくれた。 「湊はちょうど三薙さんと四天さんの間の年となります。高校一年だ。よろしければ親しくしていただけるとありがたい」 「あ、はい」 高校一年生、一つ下か。 そういえば世代の近い男って、仕事であまり会ったことないかもしれない。 親しくなれるだろうか。 いや、仕事だ、落ち着け。 「では湊、これから式次第について説明するが、お前も同席するか?」 「………はい」 露子さんのは弟の返事に鷹揚に頷くと、応接間に入って行く。 ほどよく温まったそこでようやく全員コートを脱ぐことができた。 露子さんと水魚子さんは、よくあんな薄着でいれたな。 この部屋ではお互い向き合うような形で座った。 「では、まず注連縄を張る作業なのですが、作業自体は皆様が来る前にほぼ完了しています。最後の結びで皆様の力で結界を張っていただきたい。立見の家もそれなりの力があるのだが、それなりです。いつもは龍神の力を借りて行う作業なのですが、龍神をへそを曲げてしまっている」 そうか、それで俺たちが呼ばれたのか。 いつもの道切りの時はどうしているのかと思っていた。 「これは急で申し訳ないのだが、今日これから取りかかっていただいていいだろうか」 「承知いたしました」 四天の返事に露子さんは満足気に頷く。 「ありがとうございます。そして明日は村と湖の祓い。明後日に婚礼の儀に立ち会いをお願いしたい」 「はい」 「結婚準備には随分慌ただしく情緒の欠片もないが、皆さまに立ち会っていただけるのならいい婚礼になるだろう。婚礼の完了まで、どうぞよろしくお願いいたします」 そして深々と頭を下げた。 合わせて水魚子さんと湊さんも頭を下げる。 こちらも四天が応えるのに合わせて、俺と志藤さんも頭を下げた。 細々とした打ち合わせを終えて、部屋に通された。 十二畳ぐらいはある広い和室に天と二人。 一時間後に昼を取って、その後準備を終えてから始まるらしい。 それまではゆっくりとしていてくれと言われた。 「天、ちょっと外見てきていいか?」 荷物をとりあえず適当に解くと、うずうずとしてくる。 露子さんは自由にしていてくれてかまわないと言ってくれた。 障子に手をかけて天に聞くと、弟はあからさまに嫌な顔をした。 「………」 「………駄目なら、しない」 俺だって、今はそれくらいの分別はある。 天の指示には従うつもりだ。 天は眉間に皺を寄せて、深々とため息をついた。 「30分で戻ってきて。遠くにはいかないでね。変なものには近づかない」 「分かった!ありがと!」 それでも許可をくれたので、俺はダウンジャケットを持って外に出る。 でもあまり遠くに行ったらまずいだろうから、とりあえず家の周りを見てみようかな。 湖をもっと近くで見られるだろうか。 志藤さんがいればよかったのだが、志藤さんは家への報告なんかをしているらしい。 「あ、湊さん」 広い屋敷に迷いつつ玄関まで辿りついて外に出ると、袴姿の湊さんが家の前を掃除をしていた。 湊さんは俺の姿を見て、少しだけ困惑した顔を見せる。 「あ、えっと」 「三薙です」 名前が覚え切れなかったのだと思って名乗ると、どうやら当たりだったようだ。 恥ずかしげに顔を赤らめて、慌てて頭を下げる。 「失礼いたしました」 「あ、全然。一度しか名乗ってませんし」 「それでも、失礼なことをいたしました。どうぞ無礼をお許しください」 一つしか違わない人にこんな風にされると、戸惑ってしまう。 管理者の家のやりとりとしては当然のことなのかもしれないが、俺は慣れていない。 「もっと、なんか、よければ、仕事以外ではお姉さんぐらいにくだけてくれるといいんだけど。あ、弟は別だけど。俺に対しては」 そうお願いするが、湊さんはますます困惑した様子になるだけだ。 ゆるりと首を振る。 「そういう訳にも、いきません。姉は変わっていますから」 「あはは、確かに、随分フランクなお姉さんだね」 「露子姉さんは、不思議な人ですから」 ようやく少し表情を緩める。 よし、今がチャンスだろうか。 仲良くなれるといいのだが。 「湊さんは、高校生ですっけ」 「はい」 「学校は、どんなところなの?」 「田舎の学校です。生徒数も少なくて、ボロくさくて」 「えっと、楽しい?」 「ええ、学校は好きです」 「そっか。俺も好きなんです」 会話が弾んでいるのかいないのか。 いないのだろうか。 表情は柔らかくなっているから失敗してはいないと思うのだが。 なにせ今まで友達がいなかったからうまく話せているのか分からない。 「あの」 「あ、なんですか!」 なんて考えていると、湊さんが躊躇いがちに話しかけてきた。 なんだって話してくれるなら大歓迎だ。 湊さんはあのと言ったまま、迷うように視線を彷徨わせる。 「どうしたんですか?」 問い詰めたりしないように、ゆっくりと促す。 すると湊さんはきゅっと唇を噛んでから続けてくれた。 「あの、管理者の家の人というのは、貴方たちのような人なんですか」 「俺たち?」 「僕は、ここから出たことがないので他の管理者の家の人間にあったことがありません。伯母さんみたいな人達だと思っていました」 伯母さんと言うと水魚子さんか。 物静かな人であまり話さなかったけれど、落ち着きといい風格といい、確かに管理者の家の人って感じかもしれない。 「水魚子さんは、そうかも。確かに。あ、俺は普通の管理者の家の人間というには、ちょっと違う。そうだな、四天っていただろ。俺の弟。ああいうのが、管理者の家の人達なんじゃないかな。でもやっぱり、それぞれ、違うけど」 宮守の家の付き合いで幾度かあった人達。 それと、東条家、石塚家、度会家。 みんなそれぞれ違うから、一概にはこうとは言えない。 「使命感ってありますか?」 「使命感?」 「はい、家を守るのは、当然だと言う、そんな感情」 なんでそんなことを聞かれるのだろう。 答える前に戸惑って、首を傾げる。 「どうかしたの?」 「………いえ、家のために生きるというのは、どういうことなのだろう、と思って」 家のために生きる。 それでもまだよく分からなくて答えられないでいると、湊さんが先を続ける。 「霧子姉さんは、家を嫌っていました」 「あ、一番上の、お姉さんか」 「はい」 痴情のもつれの果てに場を汚して、出奔してしまった当主。 けれどその責任の重さを嫌う気持ちは、想像がつかないこともない。 「奔放で我儘で、あまり当主には向かない人だった。昔から、皆、露子姉さんが当主に相応しいって言ってました」 「そうだね。露子さんはなんか、楽しそうだった。当主として、誇らしげだった」 「はい」 終始楽しげに、龍神について語っていた。 家を継ぐことを厭うことも重く感じていることもなさそうだった。 「でもやっぱり、霧子さんが、長女だから当主だったの?」 「………いえ、龍神が選ぶんです、自分の花嫁を。選ばれたのは、霧子姉さんだった」 そこには人間たちの意志は関係ないのか。 ちょっと理不尽な話だが、神なんて存在は理不尽で溢れかえっている。 「露子姉さんは、どっちでもよさそうだった。霧子姉さんは、自由になりたがっていた。だから家に反抗するようなことばかりしていた。でも、本当は小心者で弱いから、結局逃げないだろうって思ってたんですけど」 逃げ出してしまった。 それにしても湊さんは、実の姉に対して随分冷たい言い方だ。 まあ、勝手をして逃げてしまったから、無理もないのかもしれないけれど。 「露子姉さんは反対に、頭が良くて、自由で、新しいことでも進んでどんどんやってしまう人です」 大人しげで清楚な様子とは裏腹に、確かに芯の強そうな人だった。 ぶっきらぼうな話し方も、綺麗な立ち姿も、意志の強さを感じる。 湊さんが苦しげに眉間に皺を寄せる。 「そんな人が、喜んで龍神の花嫁になるのが、不思議だったんです。こんな古めかしい因習に囚われるのが。家を守る使命感が、そうさせるのかな、って」 「………露子さんには、聞いてみたの?」 「はい。笑って僕にもそのうち分かると言われました」 そこで湊さんが深々とため息をつく。 「僕もいずれ、この家を継ぐことになります」 「え」 「当主は姉ですが、子を残し、家を運営するのは、それ以外の子供の役目なんです。結果的に、霧子姉さんがいなくなったことで、子供は僕しか作れなくなった」 この年で、子供を作るとか生々しくて違和感を感じる。 でも確かに当主が未婚となると、後継者を作るのはそれ以外の人間になるのだろう。 「僕は、正直嫌なんです。この年から、家を継ぐ、とか、子を残す、とか」 「………それは、確かに」 俺だってそんなこと言われたら嫌に決まっている。 ああ、でも、一兄や天は、いつもこういうプレッシャーと戦っているのだろうか。 今まで家を継ぐことの意味を、あまり深く考えていなかった。 「露子姉さんは、もう結婚も出来ないし、子供も残せない。たつみの人間からは龍神の花嫁として腫れものを触るような扱いだ。でも、あんなに前向きで、楽しそうだ」 「………うん」 「だから、管理者の家の人間は、自然とそんな気持ちを持てるのか、と、思っていたんです。僕はまだ、持つことが出来ない」 予想以上に重すぎる相談に、どうしようか困ってしまう。 俺はそんなこと今まで考えたことなかった。 次期当主も子供を作ることも俺には望まれてないし、望むことすらできない。 俺にはどちらも遠い話だ。 でも湊さんは真剣に話してくれてるのだから、答えた方がいいだろう。 しかし、これは、俺よりも天の方が相談相手としては相応しそうだ。 「………俺は、なんていうか、落ちこぼれで、そういう問題からは遠いんだ」 「遠い?」 「次期当主とかは絶対ないし、子供を残すこととかも求められていない。そもそも、そういうことが許される立場じゃないし」 子供を作る、なんて自分一人支えられない俺が許されることではないと思う。 湊さんのような悩みを持つことがなかったのは、いいことなのか悪いことなのか。 「でもそうだな、一番上の兄は、家のための使命感は、すごい。家のことを常に優先して、自分の全てをかけてでも守る。それを負担と感じさせたことはないな。それは生まれた頃からやっぱり教育されてるから持っているのかもしれない」 幼い頃から俺や双兄よりもずっと厳しい教育を受けてきた一兄。 確かに使命感といったものを持っている気がする。 大変だな、とか逃げ出したくないのかな、とかちらりと思ったことはあるが、一兄がそれを感じさせたことはなかった。 「あと、四天も多分、次期当主見込みだけど、あいつは、どうなんだろう。家のために尽くしていて、同じように負担と感じさせたことはないけど」 家のことが嫌いだと言っていた。 天は家のことを継ぐことを嫌がっているのだろうか。 天からも、それを負担と思わせることを感じたことはない。 家のことが嫌いだと知ったのも、つい最近だし。 「あの人は、後継者候補なんですか」 湊さんが驚いたように目を丸くする。 「あ、うん。多分一番上の兄なんだけど、その次ぐらいの候補は四天だと思う」 「僕より、年下なんですよね」 「え、と、はい。一つ下。強い奴だから」 天は強く聡明で冷静で、次期当主としては、まだ若いにしても素質は十分だろう。 一兄が一番相応しいとは思っているが、天が相応しくないとは思わない。 でも、二人の気持ちはどうなんだろう。 今まで会ってきた家の人達は、どうだったのだろう。 「今まで会ってきた、管理者の人達も、家のために全てを捧げている人達が多かった。そうだね、管理者の家の人達は、使命感を持っていたと思う」 「そう、ですか」 湊さんは沈んだ顔で俯く。 自分が家にそこまで熱意を持つことが出来ないのを、苦しんでいるのだろうか。 責任を持つことが当然とされているのだ。 「………うん、でも、使命感を持てないのは、悪いことなのかな」 「え」 「だって、皆………」 東条家、石塚家、度会家。 俺が会った管理者の家の人達は、そこまで多くない。 「………家に囚われて、苦しんでいた」 家に対する責任。 そこから逃げ出したいと言う気持ち。 それは、持つことは許されないのだろうか。 |