「う、ああああ!うわあああ!」

絶望に満ちた叫び声で、覚醒を促される。
ああ、またか。
また、彼が苦しんでいる。

傍らで何かから逃れるようにもがいている兄を、抱きしめる。
その白く美しい髪に指を通し、恐怖が静まるよう、ただ時間がすぎるのを祈る。

「大丈夫よ、大丈夫よ響。大丈夫、もう怖いことはないわ」
「や、やめて、母さん、いやだ、やめ、ごめんなさい、許して!」
「あなたは何も悪くない。響は決して悪くない。謝ることなんてない。苦しむことなんてない」
「許して、許して許して許して」

大きな二重の目と比例するように大きな涙の粒が次から次へとこぼれていくる。
力強い手が、まるですがるように私の背を抱きしめる。
起きて、もう目を開いているのに、その目はどこも見ていない。

ああ、その絶望に満ちた目は、何よりを私を苦しめる。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
謝らなくてはならないのは、私。

知らなかったの。
愚かな私は知らなかったの。

人に執着すると、欲が出るということを。
独占したくしてしかたなくなるということを。
そして、その人を不幸にしてしまうかもしれないということを。

私は、知らなかった。
だから、私はあなたを壊した。

だから私は、一生に許されない。





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