日曜日の朝、体調はだいぶよくなった。
この調子なら、明日には完全に回復することが出来るだろう。
少し体を動かそうかと考えていると、ドアがノックされた。

「三薙、いるか?」

それは聞き慣れた長兄の声。
思わずびくりと跳ねあがってしまう。
まだ、顔を合わせるのは、恥ずかしい。

「い、一兄?いるよ」

声が、どうしても震えてしまう。
一昨日の夜の事が、脳裏に蘇ってくる。

あんな一兄、初めて見た。
時間が経つにつれて、余計に生々しくなる。
汗ばんだ肌、頼もしい肩、掠れた声、荒げた吐息。
俺を抱きしめる大きな手、堅い腕。
うわ、駄目だ。
考えるな。

「入るぞ」

ドアを開けて現れた一兄は、今日は仕事がないようで普段着だった。
俺のように動揺する様子はなく、普段通り鷹揚と微笑んでいる。

「三千里叔父さんと四志子叔母さんが来ている。挨拶に来い」
「叔父さんと叔母さんが?うん、分かった」

叔父と叔母にあたる、父さんの弟と妹の名前を出されて、意表をつかれる。
二人に会うのは、いつぶりだろうか。
二人一緒に会うのは、正月の謳宮祭以来かもしれない。

「今いけるか?」
「うん」

こんな事務的な会話で、正直助かった。
一兄とは、今何を話せばいいのか分からない。
何を話していても、あの時のことを思いだしてしまいそうだ。
一兄の熱を、声を、腕を。
だから考えるな。
アホか。

「三薙?」
「な、なんでもない!」

精神統一をしながら、一兄の後ろを黙ってついていき、広間に訪れる。
広間ということは、仕事の話をしていたのだろうか。
一兄に促され中に入ると、父さんと三千里叔父さんと四志子叔母さん、そして四天が座っていた。

「ああ、三薙、久しいな」
「久しぶり。三薙」

三千里叔父さんと四志子叔母さんが、俺を見て相好を崩す。
大らかで、少しおじさん臭い最近太り気味の叔父さんと、術の修行で昔よくお世話になった優しくて綺麗な叔母さん。
こうして並んでみると、一番年嵩な父さんが一番若く見えるのが不思議だ。

「ご無沙汰してます。いらっしゃいませ」

二人は普段着で、特に正装をしていたりしない。
だが広間にいて、しかも二人揃っているということは、何かあるのだろうか。
行事は近いうちにはなかったはずだが。

「どうしたんですか?何かあったっけ?」
「ああ、兄さんに少し相談があってな。四志子もあったそうだから、ついでに日程を合わせたんだ」
「そうなんですか。あ、道五叔父さんはいないんですね」

そういえば、父さんの末の弟の姿が見えない。
少し怖い印象を持つ、叔父叔母の中では一番近寄りがたい人だ。
俺が首を傾げると、四志子叔母さんがくすくすと笑う。

「道五は本家が苦手だから。あまり近づきたくないのよ」
「そうなんだ?」

そういえば、道五叔父さんは、あまり家で姿を見ないかもしれない。
道五叔父さんにとっても実家だけど、やっぱり代替わりしてるし、居づらいのだろうか。

「そうそう。兄さんが怖いのよ。こんな怖い顔をされちゃね」
「四志子」
「あら、ごめんなさい」

父さんに静かにたしなめられて、四志子さんが悪戯っぽく口を抑える。
妹という立場だからか、どこか無邪気で、憎めない雰囲気の人だ。
父さんも叱りながらも、本当に怒ってはいないようだ。

「体調は大丈夫かしら、三薙」
「あ、はい。大分いいです」
「そう。それはよかった」

俺の体のことを知っている四志子叔母さんは、首を傾げる。
儀式のことは、知らないんだよな。
内心ちょっとひやりとする。

「あまり無理をするなよ。ちゃんと供給はしておけ」
「はい、ありがとうございます」

三千里叔父さんからも気遣うような言葉をもらって、二人が儀式については知らないのだと分かりほっとする。
やっぱり、知られるのは最小限の人に、留めたい。
あんなことを兄弟と、ましてや二人としたなんて、知られたくない。

「三薙、ほら」
「え?」

三千里叔父さんが、ジャケットの内ポケットから封筒を取り出して差し出す。

「小遣いだ」
「えっと」

受け取る前に、ちらりと父さんを見てしまう。
とっても嬉しいけれど、受け取ってもいいのだろうか。
父さんは思った通り苦虫を噛み潰したような顔をする。

「三千里、そういうことはするなと言っているだろう」
「少しくらいいだろう。兄さんは厳しすぎる」
「………」

三千里叔父さんの言葉に、父さんはむっつりと黙りこむ。
すると隣の四志子叔母さんも、バッグから綺麗な和紙の包み紙を取り出す。

「うふふ、じゃあ、私もあげちゃおう。はい、三薙」
「え、え、と」

これまた嬉しいけれど、どうしたらいいのだろう。
父さんに代わって、今度は一兄が困ったように眉根を寄せた。

「三千里叔父さん、四志子叔母さん、甘やかすのは控えてください」
「勿論一矢と双馬と四天にも用意してるわよ。はい、どうぞ。四天は入学でしょう?色をつけておいたわ」

四志子叔母さんは、更に3つの包み紙を取り出すと、まとめて一兄に差し出す。
一兄は困ったようにため息をつく。

「………四志子叔母さん」
「いい、貰っておけ」

父さんもため息をついて、ついに承諾した。
さすがの父さんも、弟妹には弱いらしい。

「では、俺が受け取っておきます。ありがとうございます。三薙、四天」

促され、慌てて頭を下げる。
四天も同じく、落ち着いて頭を下げる。

「ありがとうございます、叔父さん、叔母さん」
「ありがとうございます」
「はい、いい子達ね」
「ああ」

二人は満足げに笑って頷いた。
それから四志子叔母さんは小さく首を傾げる。

「双馬は、いないの?」
「申し訳ありません。また外でふらついているようで」
「そう。まあ、仕方ないわね。残念だけど」

一兄の答えに四志子さんは残念そうに口を尖らせる。
けれどすぐに、何かを思いついたように小さく笑った。

「そういえば、双馬と道五は似てるわね」

道五叔父さんと、双兄。
似ていただろうか。
長身なところは、似ていたかもしれない。
でも、道五叔父さんの方がずっと真面目そうで、怖いイメージだ。

「一矢は一途兄さんそっくり」

それはよく分かる。
一兄と父さんは、外見も性格もよく似ていると思う。
立派な、当主とその跡継ぎだ。

「ふふ、そうね、三薙は二葉姉さんに、よく似てる」

それから俺に視線を向けて、目を細めた。
懐かしげに、優しく微笑む。
俺は見たこともない人なので、なんとも言えない。

「………最近それ、言われた」
「あら、そうなの?だって、似てるわ。その真っ直ぐで健気なところ」

二葉叔母さんって、どんな人だったんだろう。
そういえば話を父さんに聞こうと思って忘れていた。
写真とか、見てみたいな。
今度聞いてみよう。

「四天はそうね、誰かしら」

今度は、四天に視線を向けて首を傾げる。
天は穏やかに笑ったまま応える。

「さあ、まだ未熟者ですし、偉大なる叔父様叔母様方と並び立つとも思えませんが」
「まあ、手厳しい」

天の嫌みっぽい言葉に叔母さんは怒ったりせずにころころと笑った。
さすがに、人間が出来てるな。

「今日は三千里と四志子と夕食を共に取る。出かけるなよ、二人とも」

父さんが俺たちの雑談を打ち切るように告げた。
まあ、今日は用事もないし、まったく問題ない。
食事は大勢の方が楽しいし。

「はい」
「承知いたしました」



***




一兄と天と広間を出て居間の方に向かうと、ぱたぱたと足音が聞こえた。

「一矢さん!」

鈴を転がすような綺麗な声にそちらに視線を向けると、そこには従姉の女性。
一兄をまっすぐに見つめて早足でこちらに来る。

「五十鈴」
「五十鈴姉さん」
「あ、こんにちは、三薙ちゃん、四天ちゃん」

そこで五十鈴姉さんは、ようやく気付いたように俺と天にも笑いかける。
相変わらず現金な人だ。
けれど憎めなくてつい笑ってしまう。

「久しぶり、五十鈴姉さん」
「久しぶり。体調はもう大丈夫?」
「うん、すっかり平気」

正月からもう随分経っているのに、五十鈴姉さんはいまだにそのことを心配する。
けれどそれは純粋な気遣いだと分かるので、しつこく言うのも気が引ける。
本当憎めないけれど、困った人だ。
ちゃんづけも、治らないし。

「そう、よかった」

でもこんな風ににっこりと笑われると、何も言えない。
本当に無邪気に、優しく笑うんだから。

「四天ちゃんもすごく久しぶりね。元気だった?大きくなったわね」
「ええ、ありがとうございます。五十鈴さんもお元気そうでよかった」
「ええ、元気よ。ありがとう」

天の無愛想ともとれる態度にもにこにこと応える。
この人の前で怒っているのも難しいだろう。

「今日はどうしたの?」
「お父さんに着いてきちゃった。お仕事あるからもう帰らなきゃいけないんだけど」

それは勿論、一兄に会いたかったからだろう。
一兄をちらりと見上げると、一兄は優しく笑って五十鈴姉さんの頭をぽんと撫でる。

「そうか。仕事は順調か」
「は、はい」

目に見えて、五十鈴姉さんが真っ赤になる。
可愛らしいが見ているこっちが、なんだか恥ずかしくなってきた。

「頑張れよ。お前のピアノは、俺も好きだ」
「あ、ありがとうございます!」

一兄のタラシっぷりを見ていて、なんだか、複雑な気持ちになってきた。
前までは純粋に、五十鈴姉さんのことを応援してたのに、今はとても後ろめたい。
俺は、五十鈴姉さんにとっても、酷いことをしているんだ。
罪悪感と、いたたまれなさ、後ろめたさ、そして、ちくちくと胸が痛む。

「すまないが、今日はちょっと用事があるから送れないんだ。悪いな」
「あ、いいえ、全然。運転手さんもいるし、平気です」
「そうか。今度ゆっくりと来るといい」
「は、はい!」
「それじゃあ、悪いな。気をつけて帰れ」
「はい」

複雑な感情にぐるぐるとしていると、目の前で会話は進んでいた。
なんだか一兄がいつもよりそっけない気がするのは気のせいだろうか。
俺の罪悪感が、フィルターをかけているのかもしれない。

「四天、少し話がある」

一兄は、隣の天にそう声をかける。
用事って、天と話すことなのだろうか。

「奇遇だね、俺もあるんだ」

天は一兄を見上げて、小さく笑う。

「そうか、じゃあ俺の部屋でいいか」
「はい、承知いたしました」

天が慇懃無礼に頷くと、二人は一兄の自室に向かおうとする。
置いて行かれそうになって、つい声をかけてしまう。

「………二人とも、話って」

二人は同時に俺を振り返る。
一兄が、優しく笑って俺の頭を撫でる。

「仕事の話だ、気にするな」

天が、くすくすと楽しそうに笑う。

「そう、仕事の話」
「………そっか」

そしてもう一度二人は五十鈴姉さんに挨拶をすると、去って行ってしまう。
なんとかく、その背中をじっと、見ていてしまう。
なんだか、不安になってくる。
二人は何を話すのだろう。

「どうしたの、三薙ちゃん?」

立ちつくしていた俺に、五十鈴姉さんが不思議そうに問いかける。
我に帰って慌てて首を横に振った。

「あ、ううん。俺はやっぱりこう言う時、仲間はずれなんだなあって寂しくなっただけ」
「あら」

出てきた言い訳に子供っぽいと思ったのか、五十鈴姉さんが噴き出す。
そして頭を子供のように撫でてくれた。

「気にしない気にしない。私だって、父さんと十志(じゅうし)の話にいれてもらないこと多いもの」

十志さんは五十鈴姉さんの弟だ。
跡取り息子として、厳しく教育されている。
確かに俺と五十鈴姉さんは似たようなものなのかもしれない。

「すぐに三薙ちゃんも入れてもらえるようになるわよ」
「………うん、そうだね」
「じゃあ、私帰るわね」
「あ、うん」

気にしても仕方ない。
二人がなんでもないっていうなら、なんでもないんだ。
二人とも俺よりずっと賢く強くて冷静だ。

「一兄とあまりいれなくて、残念だったね」
「何言ってるのよ、もう!」

気分を切り替えるために、五十鈴姉さんをからかう。
すると報復にバシバシと叩かれた。

「そ、そんなこと、考えてないんだから!」
「痛い、痛いってば」

何度も叩かれるがやっぱり、可愛らしくて笑ってしまう。
俺が笑っているのに拗ねて、五十鈴姉さんは頬を膨らませてそっぽを向く。

「もう、帰る!」
「はは、気をつけてね」

足早に逃げるように去っていく五十鈴姉さんを見送っていると、なんだか緊張がほぐれた。
一緒にいると、心が和む人だ。

「うん、気にしない気にしない」

考えこみ過ぎてもいいことはない。
明るくなんでも考えよう。

自室に向かっていると、今度は熊沢さんが現れた。
俺の姿を認めると、朗らかに声をかけてくる。

「おや、三薙さん、ご親戚の皆さまは?」
「あ、父さんと話し中です」

熊沢さんは沈痛な面持ちでふうっとため息をつく。

「そうですか。双馬さんをなんとか呼び戻そうとしたんですが、力及ばず」
「………いや、熊沢さんのせいじゃないですし」
「はー、いや、でも、宮城さんや先宮に叱られるの俺なんですよねえ」

心底困ったように肩を落とす。
いつでも飄々としている人だが、やっぱり父さんや宮城さんに怒られるのは嫌らしい。
双兄の世話って、大変なんだな。
なんだか実兄が迷惑をかけているとなると、申し訳なくなる。

「………、えっと、すいません」
「いえいえ、三薙さんに謝っていただく必要はありません。すいません、愚痴を言いました」
「いえ、お疲れ様です」

熊沢さんは気を取り直したように、ぱたぱたと手を振る。
双兄と志藤さんのお兄さん代わりも、楽じゃないな。
そこで、ふと思い出した。
ポケットに入っているお守り袋。

「あ、そうだ」
「はい?」
「えっと、志藤さんに、石貰ったんです」
「石?」
「はい、お守りの、石」
「お守りの石?」

熊沢さんは心底不思議そうに、何を言っているんだろうというように首を傾げる。
埒が明かないので、お守り袋を取り出して差し出す。

「はい、えっと、これ、熊沢さんが、志藤さんにあげたっていう」
「ああ!」

ようやく思いだしたのか、手を叩く。
そして朗らかに笑った。

「あーあー、ありましたね、そんなもの」
「そんなものって………」

志藤さんにとってはとても大切な思い出のようだったのに、熊沢さんにとってはそんなもの扱い。
なんだか、切ない。
でも、二人の力関係をよく表わしていてなんだか納得してしまう。

「いえいえ、すいません、すっかり忘れてました。志藤君に自己暗示のために持たせてたんですが、あの馬鹿が暴走しちゃうきっかけになっちゃったんですよねえ。困ったもんです」
「えっと」
「ああ、失礼しました」

やっぱり熊沢さんは、志藤さんにはちょっと冷たい。
これもお兄ちゃん代わりだからだろうか。

「それで石を貰ったって?」
「えっと、これ、俺にくれるって言ってくれて。あ、志藤さんから報告があるかもしれないんですが、でも、いいんですかね」

俺から言うのもおこがましいかと思ったのだが、本当にいいのか気になっていた。
志藤さんが熊沢さんがくれたものを考えなしに人にあげるとは思えないし、大丈夫だと思うのだが。
帰ってきたのは、予想通りあっけらかんとした言葉。

「ああ、別にいいですよ、全然。彼にあげたものですし。捨てろって言ってたし」

それはそれでなんだか、拍子抜けというか寂しいというか。
志藤さんはこの石をとてもとても大事にしてたのに。
この温度差は、切なくなってくる。

「そういえば、休学の理由聞きました?」
「はい、学校でトラブルがあって、友達を傷つけてしまった、ってことを」
「傷つけたねえ」

熊沢さんはどこか皮肉げに笑って、肩を竦めた。

「志藤さん、大丈夫なんでしょうか?学校で、処分とかなかったんですか?」
「まあ、あれはあっちに非があるってことで丸く収まったんで問題ないです」

それならよかった。
大学に帰る志藤さんの周りが、あまり冷たくないといいんだけど。
あの人を守りたいと思うけれど、さすがに大学までは追いかけられない。

「でも、そうですか。三薙さんに差し上げたんですか」
「え、はい」

熊沢さんはそこで悪戯っぽく笑った。
つんと、俺の手の中にあるお守り袋をつつく。

「アイオライトの石の意味知ってますか?」
「はい、聞きました。心の安定、癒しとか、そういった意味ですよね?」
「そうですね。そういう意味もあります」
「他にもあるんですか?」

熊沢さんが楽しげに、くっくっと喉の奥で笑う。

「まあ、後は依存心からの脱却とか自立心とかそういった感じです。彼にぴったりでしょう」
「………俺にもぴったりかもしれません」

自立心、依存心からの脱却。
本当に俺にぴったりだ。
もしかしてだから志藤さんはくれたのだろうか。
いや、志藤さんに限ってそんなことはないと思うけれど。
いや、でも。

「あはは。他にもあるんですが、まあ、暇な時にでも調べてみると楽しいですよ。石にも色々意味があって」
「へえ、そうなんですか」
「ええ。もう一人の双馬さんが好きなんです。そういったの」
「双姉が?」
「はい」

双姉、石とか好きだったのか。
そういえばピアス、喜んでくれてたっけ。
今度、行く時話してみよう。
アイオライトの意味も、教えてくれるかもしれない。

「双姉に会いたいです。最近会ってない」
「きっと、双馬さんも会いたがっているはずです」

熊沢さんが優しげに目を細める。
優しい声音。
双兄と双姉を一番大切に思ってる人は、この人なのかもしれない。
双姉も、熊沢さんをとても慕っていた。

「そういえば、熊沢さんは、双姉のことも双馬さんって呼んでるんですか?混乱しません?」

あっちの双馬さんとか、もう一人の双馬さんとか呼んでいるが、分かりづらくないだろうか。
聞くと、熊沢さんは指を一本立てて悪戯っぽく笑った。

「実は小さい頃から呼んでる名前があるんですが、双馬さんが照れるから内緒にしておきます」
「へえ」

そんなものがあるのか。
二人の内緒の名前。
いや、双兄も知ってるだろうから、三人の秘密の名前、かな。
なんだか、それはとても素敵だ。
知りたいけど、そのまま秘密にしておいた方がいい気もする。
でも、知りたいかも。
双姉に聞いたら教えてくれるだろうか。

「では、すいません、お時間を取ってしまった。俺は、あの飲んだくれについて、先宮に申し開きしてきます」
「あ、はい。すいません、お願いいたします」
「いえいえ、あっちの双馬さんに三薙さんが会いたがっていたとお伝えしておきますね」
「はい、お願いします」

熊沢さんはにっこりと笑うと一つ会釈をして広間の方へ去って行った。





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