玄関を開けてすぐ、宮城さんが音もなくすっと近づいてきた。 相変わらずのこの絶妙なタイミングは、どこで見張られているのかと少しだけ不気味にも思う。 「お帰りなさいませ、三薙様」 「宮城さん、どうされたんですか」 「先宮が広間でお待ちです。すぐに向かわれますように」 野袴をつけた初老の男性が、笑ったり怒ったりしたところを見たことはない。 その特徴のないのっぺりとした顔は、昔はそれなりにかっこよかったんだろうなとは思う。 幼い頃からお世話になっているけれど、正直、少しだけ、苦手な人だ。 「あ、はい。承知いたしました」 「お荷物は私が部屋までお持ちいたしましょう」 「はい」 俺の荷物を穏やかな強引さで受け取って、また音もなくすっと去っていく。 宮城さんを前にしていた時の緊張感が解けて、ふっと息を吐く。 とりあえず、さっさと父さんの所に向かわなければ。 宮守の家のほぼ真ん中に位置する広間は、仕事の話や家の行事の際に使われる。 ということは、仕事の話だろうか。 この前来たのは、あの儀式の話の時だ。 思い返して、気が少しだけ重くなる。 あの時の衝撃は、忘れられない。 嫌な汗がじわりと、背筋を伝う。 広いとは言っても家の中だ。 しばらく歩けば、ついてしまう。 部屋を仕切っている障子からは、何もないはずなのに威圧感を感じる。 以前は兄弟達が広間に呼ばれているのを見て、羨ましかった。 しかし今は、あまりここに近づきたくない。 でも、そんなこと言ってられないので、息を吸って、吐く。 「………先宮、三薙が参りました」 「入れ」 いつもと同じく深みのある低いしゃがれた声。 一兄が年を取ったらこんな感じの声になるのだろうか。 緊張を和らげるために、そんなことを考える。 「そこに座れ」 「………はい」 許可を得て部屋の中に入り込む。 部屋には、誰もいなかった。 一人で呼び出されるというのは、どういうことなのだろう。 俺の体のこと、だろうか。 嫌だ。 これ以上怖いことは、聞きたくない。 「しばらく待つように。四天がまもなく来るはずだ」 「四天、が?」 「ああ」 とりあえず後から天が来ると聞いて少しだけざわついていた心が落ち着く。 それでもまだ、俺にとってよくない情報であるという可能性は否定できないけど。 「………」 しばらくそのまま父と対峙したまま、待つ。 沈黙は、苦しい。 ここにいる時の父は、父ではなく先宮。 宮守一統を統べ導く、一族の長だ。 軽々しく口を聞いていいものではない。 けれど、ずっと黙ったまま沈黙しているのは、辛い。 仕事に関わる話とかなら、していいのだろうか。 「………あ、の」 「なんだ?」 話しかけたはいいけど、何を話したらいいのだろう。 一兄と天、どちらを選んだほうがいい、とか聞いてもいいのだろうか。 でも、それって、どっちと儀式をやるか聞くってことか。 それは嫌だ。 「あ………」 なんでもない、と言おうとした時に、障子の向こうから声が響いた。 「先宮、四天が参りました」 「入れ」 よかった。 とりあえずこの場はうやむやになりそうだ。 入ってきた天は部屋の中で座っている俺の姿を認めたが、特に表情は動かさなかった。 何か事前に聞いていたのだろうか。 天が俺の隣に座ったのを見届けてから、父さんがゆったりと話し始める。 「突然呼び出したのは他でもない、お前達に仕事を頼みたい」 「………は、い」 この前のような話ではなくて、安堵する。 仕事は仕事で、緊張はするのだけれど。 「本来なら共番の儀式まで三薙には無理をさせることはしたくなかったが、古くからの付き合いのある家で、一矢も双馬も別件がある」 ということは、また管理者の家絡みの仕事か。 今まで訪れた管理者の家を思い出して、つい顔を顰めてしまう。 「そこで四天と三薙、お前達に頼みたい」 俺の表情に気付いているのかいないのか、父さんは淡々と告げる。 ちらりと横を見るが、天はぴんと背筋を伸ばしたままやはり特に感情の変化は見えない。 「仕事の内容は道切り行事における邪気祓いだ。今週末に行ってもらうことになる」 道切り、か。 年始にやることが多かった気がするけど、旧正月も節分も終わってしまったこの時期にやるのか。 同じことを思ったのか天が質問をする。 「この時期にですか?」 「ああ、臨時の行事となる」 「分かりました。一矢兄さんと双馬兄さんの予定が空くまでの時間を取れないということは、緊急の要請なのですか?」 「ああ、捨邪地の気配の乱れが強くなっているとのことだ。それと、先方にはそれに合わせて別の行事がある。それも含めて助力を頼みたいそうだ」 「なるほど。かしこまりました」 邪気が強くなったから、臨時で邪気を祓おうとしているのか。 しかも緊急って、結構まずい事態なのかな。 それと、別の行事って、なんなんだろう。 難しかったり、怖かったりしないといいんだけど。 じわじわと不安になっていると、天が質問を重ねる。 「俺は兄さんへ対する供給を禁じられていますが、そちらについてはいかがいたしますか?供給を行わなければならない事態も予想されますが」 それは、そうだ。 誰か他の人を連れて行って、供給をするとかなのかな。 それは気を使うから嫌だな。 「禁を解く。仕事中において、供給はお前の役目だ」 「………承知いたしました」 天は特に感情のこもらない声で答えた。 この前緊急時だったから供給はしてもらったが、改めてしてもらえるとなると、それはそれで抵抗がある。 自分の意志に外れたところで、好き勝手にされるというのは、受け入れられるものではない。 でももう、理由もわかったし、天もあんなことはしないだろうか。 「引き受けてくれるだろうか」 父の問いに、天が笑いを含んだ声で問い返す。 「拒否権はあるのですか?」 聞いているこっちがひやりとする答えに、しかし父は動じはしない。 「今回に限っては拒否を許可する。別件が入ってはいるが、一矢の予定をずらすことも可能だ。お前に選択を委ねる」 一兄と仕事出来る、ということか。 それならそれでいいかもしれない。 でも、一兄はただでさえ忙しいし、あまり無理はさせたくない。 「………勿論お引き受けいたします。先宮の御命、慎んで承りました」 俺がぐるぐるしているうちに、天は静かに頭を下げた。 父さんが鷹揚に頷くと、今度は俺に視線を移す。 「三薙、お前はそれで構わないか?」 「え、っと、俺はいいのですが、でも、足手まといでは………」 「お前の修行も兼ねている。だが、四天一人でも構わない。お前も拒否をするならばそれはそれでいい」 俺が行くことで天の助けになることなんて、ほとんどないだろう。 むしろ邪魔することはあるかもしれない。 それは心苦しい。 けれど、場数を踏まなければ強くなることも出来ない。 逃げていては、強くなれない。 それなら、天には悪いが連れて行ってもらわないといけないだろう。 「………いえ、先宮と四天のご許可が頂けるのでしたら、微力ながら四天の補助をさせていただこうと思います」 「そうか。四天、いいな」 「はい、問題ありません」 天の躊躇いのない答えに、少しだけ驚く。 皮肉の一つでも言うかと思った。 でもまあ、先宮の前でふざけた態度とかはあまりとらないか。 たまに取るけど。 「一時期よりお前達もわだかまりがなくなったようだ。この調子で力を合わせて乗り越えて欲しい」 「………はい」 父さんの声音が少しだけ柔らかくなったように感じる。 わだかまり、なくなったのだろうか。 前よりも色々天のことを知ることが出来て、近づいた気はするけど、まだまだ分からないことばかりだ。 そもそも、天は俺のことをどう思っているのだろう。 「詳細な内容は、後ほど宮城から聞くといい。頼んだぞ。では下がれ」 「はい」 「失礼いたします」 短い話を終え、俺たちは部屋を辞した。 廊下を二人で歩いていて、また沈黙が気になってくる。 二人きりでいて無言って、なんとなく耐えられない。 「そういえば、お前、受験の結果は」 「仕事から帰ってきたら出てるかな」 「………」 「ま、落ちたら落ちたでどっかしら金の力でいれてもらえるでしょ」 天は特に投げやりでもなく気負うことなくそんなことを言う。 確かに私立とかだったらお金次第で入れるところはあるのかもしれない。 でも、ちゃんと家にいてもしもの時の二次募集の準備とかさせてあげればいいのに。 天のことだから落ちないとは思うが、何もこんな時期に仕事をさせなくてもいいのに。 さすがにちょっと可哀そうだ。 天も、今回は拒否権があったんだし、もっと抗議してもいいのに。 今まで羨んでばかりいた俺が、言うことではないけれど。 思わずじっと弟の横顔を見てしまうと、ちらりとこっちに視線をよこす。 「どうしたの?」 「………いや、色々思うところはあるけど、俺が言うことじゃないし、天は全て分かって行ってるんだろうし。でも、無理はするなよ」 俺が思うことなんて、天はすべて理解した上で飲み込んでいるのだろう。 天は家のことを最優先に置いている。 いつだってふらふらしている俺と違って、覚悟が決まっているのだ。 天はふっと馬鹿にしたように笑う。 「随分俺の意志を尊重してくれるようになったもんだね。前は俺の都合なんて気にしようともしてなかったのに」 「………お前はなんでそういう物言いしか出来ないんだよ」 「性格かな。ごめんね」 「………」 確かに今まで俺は、天の意志なんて、気にしてもなかった。 強くて頭がよくて冷静で、何もかもを知っているかのような達観した弟を、人間として見てなかった。 自分の弟だと分かっているのに、揺れる感情なんてないんじゃないかとどこかで思っていた。 でも今は、悩みだってあるし、傷もつく、人間だと知っている。 今までの俺の態度に、天が苛立つのは分かる。 けれど今は違うのに、言葉を否定されるのは自業自得ながらムカっとしてしまう。 「兄さん、今暇?」 「え」 今までの自分の行いも含めてつい唇を噛むと、天がそれまでの会話なんてなかったかのように問いかける。 意味が分からず首を傾げると、天は小さく笑った。 「剣の稽古付き合わない?最近勉強で自主トレサボってたからなまってて」 師範が来る日の稽古については変わらず参加していたが、確かに毎朝のように行っていた自主鍛錬は回数が減っていたような気がする。 受験で夜遅くなることが多かったし、さすがに毎朝は無理だったのだろう。 「………うん、いいけど」 「ありがとう」 天の誘いなんて珍しくて、驚きのままに返事をしてしまう。 弟は皮肉げに笑いながら、道場へと足を向けた。 「はっ」 上段から振りかぶったところで、天が体を僅かに引き剣先を胸に突きつけてくる。 それを継ぎ足で後退してかわし、横面を狙って払うと、天が剣先で俺の剣を受ける。 そのまま剣を払いのけ、右斜めから俺を袈裟切りするように振りかぶる。 天が仕太刀をやりたいというので、通常は上位者がやるべき打太刀を俺がやることになった。 型の決まった組太刀で、刃を潰した模擬刀とはいえ、受け損なえばただでは済まない。 緊張と運動量に、じわりと汗を掻いて、柄が滑りそうだ。 天の剣は、重い。 体には当てないと分かっていても、恐怖感に身が竦みそうだ。 でも、意識が研ぎ澄まされていくこの瞬間は、嫌いではない。 組太刀は、まるで舞っている時のように高揚感がある。 数回太刀を交わし、定まった組合を終えた後、天が身を引き距離を置く。 俺も一歩後ろに下がり、呼吸を整える。 「それじゃ、行くよ」 「来い!」 天が打ちこんでくる。 俺の胸を狙った突きを、右足を引いて僅かに交し自分の剣で払う。 踏み込みが早い。 剣が重い。 相変わらず、強い。 天のペースにはまらないように今度は俺から打ちこむ。 「はっ!」 「っ」 払った剣を返す刀で、天の右肩をめがけて振りかぶる。 天はすでに引いていた剣で、俺の剣を払う。 「くっ」 天が顔を歪めて声をもらしながら、更に踏み込んでくる。 俺は距離を取るために、一旦剣と共に足を引く。 天は更に踏み込み、今度は下段から俺の脇腹を狙ってくる。 天の剣は剛の剣。 見かけによらず、力技だ。 勿論技についても、師範に認められているぐらい優れている。 だが、どちらかというと技術を駆使して翻弄するよりも、ぐいぐいと前に出て相手を追い詰める。 気がつけば力で押されて、何度か後ずさってしまっている。 力に自信がないから、僅かな隙を見つけて反撃をしているのだが、天は中々打ちこみを許してくれず、俺を追い詰める。 「く!」 更に踏み込んだ天が、剣を上段に振りかぶった俺の喉元に、その剣を突きつける。 触れない程度の距離でぴたりと止められた剣に、身動きが出来ない。 「一本、だね」 天は肩で息をしながらも、満足げに笑う。 いつもの皮肉気な笑い方よりはよっぽど無邪気な子供のような笑顔。 汗に濡れた髪と、上気している頬は、生き生きとして見える。 「………」 その晴れやかな顔もなんだか憎らしくて、つい睨んでしまう。 天は剣を引きながら、くすりと笑った。 「悔しそうだね」 「………悔しいよ」 負けたら、悔しいに決まってる。 しかも二歳年下の弟だ。 真面目に仕合ったら、3回か4回に1回は勝てる時があるが、完全に実力では負けている。 双兄も天には負け越しているので、仕方ないと言えば仕方ないのだが。 「そりゃそうだね。でも大丈夫。俺が強いだけで、兄さんが弱い訳じゃないよ」 「………うわ、お前、その発言はどうなんだ」 自信に満ちた言葉は、冗談には聞こえない。 まあ、そもそも本当のことだし。 天の実力は師範も先宮も認めるところだ。 まだまだ未熟だとしても、今後免許皆伝まで行くとは言われている。 俺だって、門下生の中で仕合をすれば、それなりにいいところにはいくのだ。 こいつがおかしいだけで。 「だって本当のことだし」 天が軽く肩を竦めて、頬を伝う汗を拭う。 イラっとするが、確かに本当のことだから仕方ない。 でもこいつのこの言動は、学校では大丈夫なのだろうか。 「………まあ、お前は本当に、強いな」 「努力してるからね。強くなりたくて」 「この前も言ってたっけ。お前でも強くなりたいって思うんだな」 「そりゃ思うよ。男だしね。強くありたいのは当然でしょ」 天は剣の柄を握り締めて、じっと潰された刃を見つめる。 「足りないよ。もっと力が欲しい。もっともっともっと」 何気なく漏れたその言葉は、どこか切実に聞こえた。 力が足りない、なんてこいつでも思うのか。 この前も言っていたが、こんなに力に溢れていても、足りないのか。 欲張りなのか、それとも俺のように自分の無力さを思い知っているのか。 でも、その言葉にはどこか弱さが見え隠れする。 そんな弱さを俺に見せることが、意外だ。 「………」 「どうしたの変な顔して」 「なんか、お前がそんなこと、言うとは思わなくて」 天がもう一度肩をすくめて、意味ありげに笑う。 「俺のこと、知りたいんでしょ?」 「………うん」 「だから本音を話してあげただけ」 「そう、か」 これは、天の本音なのか。 それなら、聞けたのは嬉しい。 強くなりたい。 その気持ちは、よく分かる。 無力さに嘆くのは、きっと俺の方が多いだろう。 努力もしているし、願ってもいるつもりだ。 でもそれでも、俺は弱いまま。 「俺も、強くなりたいんだけどな。もっと、力が欲しい」 「兄さんの体質に対しては仕方ない。それはもって生まれたものだから」 じくりと胸が痛む。 分かり切っていることだ。 この体は、どうにもならない。 「でももっと要領よく生きることは出来る。強くなることだって出来る」 要領よく。 確かに俺は要領がよくない。 何もかもうまく出来なくて、失敗ばかりだ。 一兄や天のように合理的にものを考えることが出来れば、もっと強くなれるのだろうか。 「とりあえず剣に関しては、兄さんは人を傷つけるのに向いてないよね」 「人を、傷つける?」 剣は苦手だが、出来れば強くなりたい。 何に役立つかは分からないけど、力を持つことは悪いことではないはずだ。 「そう。たとえばこれが真剣だとして」 天は持っていた剣を俺の方に向け、鼻先に突きつける。 気圧されて一歩後ずさる。 「人に向けることを躊躇うでしょう?」 「そりゃ、当たり前だろ」 「俺は、あまり気にならない。それが必要なことならね」 そう言ってやっと剣を引いたので、詰めていた呼吸を吐きだした。 冗談にしても、タチが悪い。 天はだらりと剣を下げながら、皮肉げに笑う。 「だから、兄さんはこういうことには、向いてない」 傷つけるのは、苦手だ。 模擬刀ですら、俺は人に打ちつけるのに躊躇することがある。 それは、確かだ。 「結局兄さんは、人を傷つけることなんて、出来ないんだから」 「………」 俺は天の言うとおり、剣が苦手だ。 組太刀は好きだが地稽古が嫌いなのは、そういう理由もあるのだろう。 でもどこか馬鹿にしたように言われるのにむっとする。 「それは、いけない、ことか?お前の言い方だと、悪いことのように感じる」 「………悪いことではないだろうね」 天は僅かに目を伏せて、ふっと息を吐く。 そして顔をあげて、やっぱり皮肉げに笑う。 「だから剣が向いてないって言ってるだけ。人としてはいいんじゃない?」 「ならなんで、そんな言い方をするんだ」 「どんな言い方?」 「馬鹿にしたような言い方」 天は表情を消して、じっと俺の顔を見る。 でもそれから、ふっと表情を緩める。 「馬鹿には、してないよ。俺も、兄さんには強くなってほしいかな」 それは皮肉げな言い方ではなかったので、多分本当に言っているのだろう。 その言葉は嬉しいもののはずだ。 何もしなくてもいいと言われるよりは努力してついてこいと言われる方が嬉しい。 でも、なんだか不思議な感覚だ。 「………前と言ってること、違くないか?」 そうだ。 天は俺に、仕事なんてしなくていい、強くなんてならなくていいって言ってなかったっけ。 それがどうして、俺に強くなってほしいなんて言っているのだろう。 「そうだっけ?」 「そうだ」 「でも、今はもっと強くなって欲しいんだよ。それは本当。仕事に来るなら弱いままでいられても困るしね」 弟はそう言って肩を竦める。 それから剣を掲げなおす。 「だから、もう一回手合わせしてくれる?」 やっぱり、胸の中がしっくりいかなくてもやもやする。 あんなに俺が仕事をするのに嫌がっていたのに。 でも、確かに仕事に付き合っていく以上、強くならなければ天の負担が増える。 それを懸念しているのだろうか。 「兄さん、駄目?」 黙って考え込んでいると、天が重ねて聞いてくる。 どうせ、天はこれ以上話してくれないだろう。 「う、ん。いい。付き合う」 「ありがとう」 天がにっこりと無邪気に笑う。 いつか俺は、天の心が分かる時がくるのだろうか。 |